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いわき市考古資料館講演会「いわきの古墳を考える」

2017-10-15 20:19:41 | 遺跡・史跡
 2017年10月14日、いわき市文化センターで「いわき市考古資料館講演会『いわきの古墳を考える』」が開催された。

 いわき市考古資料館では、11月20日まで「平成28年度発掘速報展」が開催されているが、その一環として開かれた講演会である。

 まず、昨年度から話題に上がっている小名浜林城の「塚前古墳」と平神谷作の「神谷作古墳群101号墳」についての発表があった。



 「塚前古墳」は、古墳時代後期(6世紀)の前方後円墳で、福島大学の菊池教授が3月に測量調査を実施し、古墳時代後期では東北一の前方後円墳だったという結論に達したが、塚は後円部の一部を残すのみである。昨年度、いわき市教育委員会ではその一部を発掘調査した。盛土の工法は「土嚢・土塊積み工法」といわれっるもので、西日本でよく見られる工法であることが明らかになった。また、出土した埴輪は「蓋(きぬがさ)形埴輪といわれるものである。
 「神谷作101号墳」は、昭和23年に最初に発掘調査が行われ、その時に発見された「埴輪男子胡坐像」と「女子像」は国の重要文化財となっている。今回も、多くの埴輪が発掘されており、特に珍しいのは四つんばいになった人物埴輪や馬形藩岩、矢を入れるケース・靫型(ゆぎがた)埴輪などとなっている。

 次に、福島大学の菊池教授による「塚前古墳の測量調査とその意義」と題して発表があった。



 今年3月に行われた調査は、電子平板を用いて100分の1測量図を作成したもの。その結果は、塚前古墳の規模は、全長:95~120m、後円部直径:53m、前方部長:54~70m、前方部幅:45~65m。そ塚前古墳の規模は、古墳時代後期では東北最大の前方後円墳であること、墳丘の作り方は西日本で見られる「土嚢・土塊積み工法」であること、埴輪の特徴がいわきちいきの同時期のものと大きく異なること、蓋埴輪の類例が埼玉から群馬県に分布していること、などとなっている。このことから、いわき地域における後期古墳の認識を改め、いわき地域を幅広な視野で6~7せいきの動向を究明していく必要があること、埴輪の特徴から関東内陸部とのつながりが古墳成立背景の一つである可能性があり、太平洋沿岸域のみならず多方面との関連を考察しなければならないこと、などが塚前古墳の意義としてとらえられる。


 次は、福島県考古学会顧問・渡邉先生による「昭和23年神谷作101号墳の発掘」についての発表。



 別件があったために途中で中座しなければならなかったが、先生は、昭和23年発掘の当事者であり、裏話まで含めた当時の思い出や、明治大学・後藤先生と思い出話など、発掘に至るお話を聞くことができた。神谷作101号墳の発掘は、磐城高校史学クラブに持ち込まれた「埴輪馬頭部」、これをきっかけに、本格的発掘に至った。発掘は昭和23年12月に始まり、第6次発掘まで行われた。「埴輪列」が発掘された。埴輪列の意味づけは、葬列若しくは主権継承の儀式ではないか、とされている。また、家形埴輪も発掘され、これは後円部に置かれることから、神谷作101号墳は前方後円墳である、と推測された。平成27年再発掘では、昭和23年発掘地より多くの人物埴輪が発掘されている。101号墳での儀式を、改めて総合的に考察する必要があると、先生は述べられた。

 実に興味深い講演であった。
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