ギャラリーブルーホール(小玉醸造株式会社)を訪れ、「絵本画家 藤嶋えみこ展 いるよ、あるよ、たぶんすぐそこ」を鑑賞する。作品を前に、我が家には何冊の絵本があるのだろうかと思いを巡らした。今、自室の本棚にあるのは「世界はまるい」(ガートルード・スタイン 文、クレメント・ハード 絵、マーガレット・ワイズ・ブラウン 編集、みつじまちこ 訳)という絵本だけ。他の部屋を探してみると、子供たちが幼いころに読んだものが思いの外たくさん出てきた。そういえば当時、福音館書店から月に何冊か絵本が送られてくる定期購読をしていた。子供に読み聞かせをする親の立場の私も、新しい絵本のページをめくるときは不思議とワクワクしたものである。
図録のテキストに、「私たちの目には見えない彼ら」という言葉が出てくる。藤嶋さんの世界にはたくさんの不思議な生き物たちが暮らしていて、豊かな自然と共にある「彼ら」との、かけがえのない交流が作品から伝わってくる思いがした。私は、そんな「彼ら」に、幼いころの子供たちを投影せずにはいられなかった。どんぐりを手のひらいっぱいにのせて満面の笑みを浮かべたり、豪快に草むらに転んでは泣きべそをかいたりした当時の情景が、「彼ら」をとおしてよみがえる思いがしたからだ。描かれた生き物たちの眼差しのように、子供たちは世界を見ていたのかも知れないとも思った。知らず知らずに自身の親心が育まれていたことも実感。今夜は、「おばけのてんぷら」を手に絵本の世界に浸ってみようか。