『十字架』 重松清

2013年01月07日 20時22分34秒 | 重松清
あけましておめでとうございます。新年早々、重たい内容になりました。



「いじめを苦に自殺したあいつの遺書には、僕の名前が書かれていた。あいつは僕のことを「親友」と呼んでくれた。でも僕は、クラスのいじめをただ黙って見ていただけだったのだ。あいつはどんな思いで命を絶ったのだろう。そして、のこされた家族は、僕のことをゆるしてくれるだろうか。吉川英治文学賞受賞作。」(BOOKデータベースより)

どう紹介していいのか、まだ迷いながらですが、思いつくままに紹介します。いつにもまして駄文になること必須ですが、ご容赦ください。

主人公は、ごく平凡な中学2年生の真田裕。
裕のクラスではいじめが発生していた。いじめられていたのは藤井俊介。
裕と俊介は幼なじみではあったけど、中学生になってからは特に交流もなかった。
いじめのメインだったのが三島と根本。二人は前々から悪ガキでお互い仲も悪かったのだが、担任に抑え込まれた二人はいじめをすることでストレスを発散していたのだった。
これに堺を加えた3人が主にいじめをしていた。
そして、そのほかのクラスメイトは、自分に火の粉がかかるのを恐れ、また興味がなかったのか、見て見ぬふりをしていたのだった。

ある日、俊介は自宅で首をつって死んだ。中2の9月4日だった。
そして遺書にはこう書いてあった。

 真田裕様。親友になってくれてありがとう。ユウちゃんの幸せな人生を祈っています。
 三島武大。根本晋哉。永遠にゆるさない。呪ってやる。地獄に堕ちろ。

そして、

 中川小百合さん。迷惑をおかけして、ごめんなさい。誕生日おめでとうございます。幸せになってください。

中川さんは、おそらく俊介が片思いしていたのだろう。

なぜ、俊介は中川さんに謝るのか。
俊介は死ぬ直前に中川さんに電話し、プレゼントを渡したいと申し出たのだった。
しかし、特に仲も良くない中川さんはそれを固辞し電話を切ったのだった。
その後、俊介は首をつった。中川さんの誕生日に。

俊介のお母さんは、泣き、衰え、病に倒れてしまう。
お父さんはいじめをしていた人も、それを見て見ぬふりをしていた同級生たちも決して許すことはできない。
弟の健介はなにもしなかった同級生たちに強く当たるようになってしまう。

そして重要な人物があと2人。
地元のブロック紙の記者である本多薫さん。
本多さんは時に中川さんの心の支えになり、時に遺族と裕と中川さんの橋渡しをすることになる。
そしてフリーライタ―の田原昭之さん。
田原さんはみて見ぬふりをする人を決して許すことができず、それを批判する記事を多く書いている記者であった。

知らぬ間に遺書に名前を書かれてしまった裕と中川さんは十字架を背負い続けることができるのか。
いじめで同級生を殺してしまった三島と根本はどうなるのか。
両親と弟は立ち直り、同級生たちを許すことができるのか。
本多さんと田原さんの願いは。
みて見ぬふりをした同級生に罪はないのか。

そして、俊介は何を思い、死を選んだのか。

重くて辛い内容ですが、この本を通じ何を思い何を感じ、そしてどう行動するのか。
年の初めに考えてみるのもいいかもしれませんね。

★★★★☆

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