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雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

やさしい人 (ことの葉散歩道№29)

2016-07-02 17:00:00 | ことの葉散歩道

やさしい人
          (ことの葉散歩道№29)

いつもそうだ、はじめはいつもやさしい。やさしいのははじめだけで、いつから、叩いてくるようになるかわからない。

 どうしてこの人はこんなにやさしいんだろう。やさしい人はすぐにうらぎる。

       ※ 世界地図の下書き 朝井リョウ著

 交通事故で両親に死なれ、
伯父夫婦に引き取られたがなじめず、
児童養護施設で生活する小学生の少年の胸のうちだ。

「やさしいのも最初のうち」。

 やさしさに下心があり、
不純な動機があれば、
たちまち化けの皮が剥がれてくる。

  やさしさの効果が思うように得られなければ、
人は豹変し、
たちまちにしてその正体をあらわにする。

  昨日までの笑顔が消え、
出てくる言葉も棘を含んでくる。

 少年は自分の周りにいる大人たちの「うわべだけのやさしさ」を敏感に見抜く。
「憐憫」や「同情」に包まれた「やさしさ」がそれだ。

  「 情けを掛ければ、人は心を開き、互いに理解し合うことができる」という錯覚。

 人の感情や心はそんな単純ではない。
こちらが意図したように心を開かない。
反抗的である。
やさしさで他者に接するが、結果が出ない。
逆に相手が優しさに甘えて、どんどん依存してくる。
そのことがやがて重荷になってその人を避けるようになる。
メールの返信もしない、
手紙の返事も書かない、
電話にも出ない。

 「やさしさの豹変」だ。
なぜ急にあの人は私を避けるようになってしまったのか。
中途半端なやさしさが、
人間関係を壊してしまう。
こんなことなら、
最初から関わりを持たなければいい。

 だが人間関係は予測不可能なことが多い。
その時々で対応を考えるしかない。


 「やさしい人はすぐにうらぎる」と小学生の少年は思う。
そういう人間のいやらしい面を見てしまった少年は、ある意味で不幸である。

 相手に対していつも「誠実さ」を失わずに接することが肝要だと思われる。
「誠実さ」は人を傷つけないし、うらぎらない。 
                 (2016.7.1記)


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