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雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

読書案内「魂でもいいから、そばにいて」 3.11後の霊体験を聞く(3)

2017-10-06 22:30:51 | 読書案内

読書案内「魂でもいいから、そばにいて」
     3.11後の霊体験を聞く(3)
               奥野修司著 ノンフィクション 新潮社 2017.2刊
                     
                    
  かけがえのない人を喪う。
 とても辛く、悲しい。
 茫然自失。
 せめて「魂でもいいから、そばにいて」
 切ない願いが、本のページから溢れてくる。

 にわかには信じがたい霊的体験をした人達の話です。

 『心配ねえ、津波はここまで来ねえ』。
 逃げなかった父の最後の言葉だ。その後頻繁に夢の中に現れる父。
 バス停とか船着き場とか電車のホームで、いつも乗り物を待っている夢なんです。
 父が待っているので私も一緒に待っていると、「まだ来ねえからいいんだ。俺はここで待っている。
 おめえは先に行ってろ」「おれとは行き先が違っから、おめえはそっちに乗っていけ」
 
 娘の正恵さんは、「何かのメッセージかも」と問いかける著者に、
「行き先が違うと言いたかったの
ではないか」とつぶやく。
たびたび現れる父親の登場する夢を単なる夢に終わらせるのではなく、
親からのメッセージと受け止める正恵さんの「父親に抱く愛情」なのでしょう。
津波で肉親を亡くした人に圧倒的に多いのが、
亡くなったかけがいのない人が夢に現れることで、リアルでカラーが多い
という。

  兄を亡くした常子さんの話も摩訶不思議だ。
  兄の死亡届を書いている時、メールが届いた。
死んだはずの兄からのメールで一言、「ありがとう」と書かれていた。
発信の日付けを見ると震災の10前の日付になっている。
なぜ4カ月もたってから届いたのか。
通信会社やメーカーに調べてもらってもわからなかったという。

 三歳の子どもを亡くした由理さんの話。
震災から2年経ったある日祭壇に飾ってあった電動式のおもちゃが突然動き出した。
数日後「もう一度、オモチャを動かして見せて」と心で念じると、
またオモチャが動き出したという。
「あの子がそばにいる」と由理さんは感じたそうです。

 この本には津波で喪った人を悼む人たちの霊的体験の話が16編載っている。
どの話も胸を痛められる話です。
嘘とか作話、或いは思い込みとして捉える人もいるのでしょう。
そんな人のために由理さんの次の言葉を紹介して終わりにします。
 「霊体験なんてこれまで信じたことがなかったのに、自分がその体験者になって、頭がおかしくなったんじゃないかと思っている人もいます。同じような体験をした人が他にもたくさんいるとわかったら、自分はヘンだと思わないですよね。そういうことが普通にしゃべれる社会になって欲しいんです」
          (2017.10.5記)           (読書案内№112)