読書案内 そして、星の輝く夜がくる (3)
子どもたちの純真な目が、福島第一原発事故を真摯にとらえた「ゲンパツが来た!」は小説で描かれた子供の視点だが、実際の子どもたちの作文には、以下のようなことも書かれている。
僕は人間の汚い心を見てしまうことがあります。
避難所に来た物資を被害を受けていない大人たちが持ち去ってしまったり。
みなさんは、この愚民たちの愚かな行動をどう思いますか。数少ない物資を分けあうどころか余分にとり、本当に必要な人にわたらない。
自分さえ良ければ…あの時の大人は酷く醜い物だった。不適切だという意見が寄せられましたが解ってください。
東松島市 中学二年 O君の作文(つなみ・被災地の子供たちの作文集より引用)
「第三話・さくら」: 前任の小学校で被災し、目の前で教え子が津波にさらわれてしまった悲しい経験を持つ若い教師の 苦悩を描く。
語られなかった真実。
なぜ彼女は多くを語らないのか。
記者会見や亡くなった児童の父親たちからその責任を追及される。
彼女に対する誹謗中傷の渦巻く中、少しずつ真実が明らかになって来る。
真実に蓋をして、事実の隠ぺいを計る教育委員会にも大きな問題がある。
先入観と飛躍した考え方が、真実を歪め当事者を傷つけていくが…。
やっぱり最後に優しい結末が待っている。
「第四話・小さな親切、大きな……」
小野寺のかつての教え子で、ストイックなまでに規律を守ろうとするボランティアリーダーとの再会。
ボランティアの在り方を読者に問いかけ、心に傷を持った若い女の切なさがジンとしみて来る。
小野寺もまた深い傷を持ったまま、阪神大震災で妻と子供を失った哀しみに耐え、星空を見上げ、気持ちを奮い立たせて生きている。
緊急期を過ぎた被災地に、鬱屈(うっくつ)や不満が噴出し始めた。
小さな善意や親切がときとして、相手に大きな負担になり、
傷つけてしまうことを、小野寺は彼女から聞き唖然とする。
最後の一行。
何も言えないまま彼女の背中を見送った後、小野寺の見上げた空には星が瞬き始めていた。 (つづく)
真山 仁著