「チェリノブイリ」
場面は中学時代の昌也と徹に遡る。
思春期の二人にとって家族はうっとうしい存在である。
会話のない家にうんざりしながらも、地域がら原発問題は中学生の二人をも巻き込んでいく。
市会議員で原発推進派の昌也の父は、反対派懐柔工作資金を原電側から受け取っている。
果敢な少年・昌也は親への反感から原発反対集会に参加する。
徹もまた、ある成り行きから、会場に行った。
が、特に原発に興味があったわけではない。
チェリノブイリの原発事故が起こるがそれさえも日にちがたってしまえば、
興味が薄れてしまい、話題に上ることもなくなり、ファミコンゲーム明け暮れてしまう。
「ふっかつのじゅもん」
高校生になった徹。17歳、相変わらず先の見えない無気力が続き、ファミコンに明け暮れるる
ふとしたことから、「原発ジプシー」といわれる大越と知り合うが、
大越は胃潰瘍をこじらせ、恋人にも見放され、入院費用にも事欠き、自殺してしまう。
三十路になるキャパクラの愛子と徹の関係もまた光の見えない、
獣のように互いを求めあうメスとオスの関係であった。
大越さんはゲームの「じゅもん」を間違えたから「ふっかつ」出来ずに死んでしまったのだと、
泣きながら愛子とのセックスを繰り返す徹。
暗く、光の見えない生活がどこまで続いていくのか……
連作短編次は「花かえ」で、20代の徹を紹介する。