goo blog サービス終了のお知らせ 

落合順平 作品集

現代小説の部屋。

北へふたり旅(7) 第一話 ベトナムがやってくる ⑦

2018-12-11 17:35:18 | 現代小説
北へふたり旅(7)


 

 その日の昼。騒ぎがさらにおおきくなる。
アパートの掃除に駆けつけた奥さんと妻が、家主に追い返された。

 「なんじゃと!。
 外人が住むとは聞いておらん。
 そういうことなら話は別じゃ。ぜったいにアパートは貸さん!」

 奥さんと妻が青くなる。
2日後にはベトナムがやってくる。
住むアパートがなくなれば、2人は路頭に迷うことになる。

 「困るのはそちらの勝手じゃ。わしには関係ない。
 Sに言ってくれ。契約は破棄だ。
 わしは外人が大嫌いじゃ」

 実習生制度は国の規定により、雇用主が住居を用意する決まりになっている。
1室につき2名以内。一人当たりの寝室床は、3帖以上を確保すること。

 しかし。今どき社員寮をもっている雇用者は少ない。
99%の雇用者がアパートを借りあげる。
ここへ実習生を住まわせる。
しかし多くの家主が外人と聞いた瞬間、拒否反応を起こす。

 電話を受けたSさんが、あわてて現場へやってきた。

 「おい、どうした。
 いまごろになって契約破棄なんて、いったいどういうことだ?」

 「数年前のことだ。
 中国から来た実習生たちにアパートを貸して、酷い目にあった。
 やつら。日本のルールをまったく守らない」

 「中国からやってきた例の実習生たちか。
 たしかにあいつらは酷かった。
 雇い入れた農家も嘆いていたからなぁ・・・
 しかし。空き部屋が増えて困っていると言ったのは、おまえのほうだ。
 いまごろになって、外人は駄目というのは無責任だ」

 「老朽化が進んだ。そのせいで、空き部屋が増えた。
 収入が減り苦労しているのは確かだ。
 でもよ、俺は無責任な人間じゃねぇ。無責任はおまえのほうだ。
 外人が入るというのは、初めて聞いた」
 
 「こんど入るのは中国人じゃねぇ、ベトナムだ。
 中国人ほどひどくねぇ。たぶん・・・」

 「分かるもんか。
 中国から生まれたんだぞベトナムは。根っこはひとつだ」

 「なに?。そうなのか!。知らんぞ俺は・・・」

 「べト(Viet=越)人は、3000年ほど前、揚子江の南から
 さらに南へ移った。
 南へ移住したべト人だから、ベトナム(VietNam=越南)と呼ばれた」

 3000年前。彼らはレッド・リバーデルタ(ハノイ周辺)へ定着する。
地理的に近いことから、ベトナムは常に中国からの支配を受ける。
しかし10世紀、中国の政治が弱体化した隙に独立を果たす。

 その後9世紀にわたりベトナムは、独立を保つ。
中部ベトナムのチャム族を支配下に入れる。
さらにメコンデルタをカンボジアから奪い、ラオスの大部分も傘下におさめる。
19世紀。フランスが進出してくるまでベトナムは独立を維持する。

 ベトナムは誕生以来、中国と15回の戦いを交えている。
その度、中国の追い返しに成功している。


(8)へつづく

最新の画像もっと見る

2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

コメント日が  古い順  |   新しい順
こちらも雨です (屋根裏人のワイコマです)
2018-12-11 20:03:39
今頃になって、困った雨です。
いっそ雪のほうが、スキー場はじめ
信州の景気改善になるのでは??
と思っているんですが・・
上州は雨のほうが・・でも北の方には
スキー場がたくさんありますよね
そっちだけ雪にしてもらって・・
キュウリは終わって、ホウレンソウに
入りましたか??
こちら信州ではこの寒い中長芋は
まだ収穫中です。それ以外の農業は
皆ハウスの中で、よく判りません
返信する
こんばんはワイコマさん (落合順平)
2018-12-17 19:04:14
あたたかい1日になりました。
風もなく、午後は17℃をこえました。
おかげで予定以上にホウレンソウが育っています。
大きさがLサイズを超えると出荷できません。
あたたかいのはありがたいのですが、
ホウレンソウにはピンチです。
明日も忙しくなりそうです。
返信する

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。