落合順平 作品集

現代小説の部屋。

北へふたり旅(18) 第二話 チタン合金 ⑧

2019-04-07 17:43:27 | 現代小説
北へふたり旅(18) 



 
 時間は、午前9時。
わたしはいまゴルフ場が紹介してくれた、F整形外科の待合室に居る。
妻はレントゲン室で手首の撮影中。

 撮影から10分後。妻の名が呼ばれた。
「旦那さまもどうぞ。一緒におはいりください」看護師が手招きしている。
呼ばれるまま診察室へはいる。
40前後と思われる担当医がニコニコ、わたしたちを待っていた。

 「ゴルフ中の怪我ですか?。たいへんでしたねぇ」

 妻もわたしも、ゴルフウエアのままだ。
誰が見てもゴルフ中の怪我と、一目でわかる。

 「じつにきれいに折れています」

 レントゲンの映像を指さし、担当医が笑う。

 「ギブスで固定する方法もあります。
 しかしわたしとしては、手術のほうをおすすめします」

 メガネの奥の目が笑っている。

 「それほど重症という意味でしょうか?」

 「そういう意味ではありません。
 ギブスの固定期間は、4週から8週間。
 その間、手は使まったく使えません。
 手首や指の関節が硬くなってしまうという危険性があります」

 「手術の場合は?」

 「プレートとスクリューをつかい、折れた部分を固定します。
 次の日から手を動かすことができます」

 「手を動かすことができる?。ホントですか先生!」

 「はい。そのため、手術の次の日からリハビリをはじめることができます」

 「治りが早いということですか?」

 「早く治るかどうかは、本人の努力次第です。
 しかし。失礼ですが、年齢が年齢ですので、若い人たちのような
 回復の早さは、のぞめないと思います」

 「ゴルフをすることが、できますか?」

 「奥さん。
 ゴルフで怪我したんでしょう?。
 あはは。まったく懲りていないようですね。
 大丈夫です。
 チタン合金で接続しますから、前よりはるかに丈夫になります」

 「チタン合金?。ドライバーの素材と一緒ですねぇ。
 びっくりです。
 完治したら、取り出す必要がありますか?」
 
 「素材は、半永久的に大丈夫です。
 違和感を感じるようでしたら、のちに取り出すことも可能です」

 「痛い思いを、2度もしたくはありません。わたし」

 「ではそのままにしておいてください。
 わたし、手術は上手です。
 自分で言うのもなんですが、これまで1万回の手術をこなしています。
 傷跡も綺麗です。
 あんしんして、どうぞ、わたしに任せてください。
 けして後悔させません」

 

 (19)へつづく

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2 コメント

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健康法 (屋根裏人のワイコマです)
2019-04-10 14:28:19
やはり 誰でもいろんな健康法があります
私も ニンニクは健康法のためによく食べます
残念ながら 黒にんにくは食べられません
以前人づてに黒にんにくの苗を頂きましたが
見事失敗で信州の我が家では作れません
国産ニンニクが中国産の5倍くらい
そして黒にんにくは数が少ないのと
価格は国産ニンニクの更に3倍くらい
落合さんに是非作っていただきたい位
生姜とニンニクは上手く使い分けると
臭いも軽減できますよ (^o^ゞ
整形外科もだいぶ変わりましたね
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こんばんはワイコマさん (落合順平)
2019-04-13 17:59:23
群馬の桜が散り始めました。
県都の前橋や、標高が100m前後の場所で
若い葉が目立ってきました。
これから見ごろを迎えるのは、標高が500m前後の
赤城山の中腹や、群馬県北部の桜の名所です。
桜が終ると、ツツジの季節。
いままで目立たなかった木々の新芽も
日一日、目立ってきました。
季節がダイナミックにかわります。
暖かい日がつづくと、ナス採りも忙しくなります。
これからが本番です。群馬の野菜農家は。

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