NPO法人 三千里鐵道 

NPO法人 三千里鐵道のブログです。記事下のコメントをクリックしていただくとコメント記入欄が出ます。

李石基議員に懲役12年の一審判決

2014年02月20日 | 南域内情勢

不当判決を糾弾する光州市民(2014.2.18)


2月17日、李石基議員らに対する内乱陰謀事件の第1審判決公判が開かれた。水原地裁刑事第12部は、内乱陰謀と内乱扇動容疑を認定し、李石基議員に懲役12年、他の6人の統合進歩党関係者には懲役4年~7年の重刑を宣告した。

裁判部はこの日、第1審の宣告公判で「内乱陰謀事件に関する情報提供者の陳述には信憑性が認められ、指揮体系を備えた組織が存在した事実も認められる」として、内乱陰謀容疑に対して有罪判決を下した。裁判部は 「RO(革命組織の略)は内乱陰謀のために作られた組織で、李石基議員が総責だ」と判断した。

裁判部はまた「李石基議員が革命同志歌と赤旗歌を歌い、利敵表現物を所持していた事実が認められる」として、国家保安法違反の疑いもあると判断した。検察の起訴内容をほぼ全面的に受容した判決である。当然ながら与党は歓迎の意を表している。統合進歩党は不当判決だと糾弾して、控訴審で徹底した真実究明を行なうと表明した。

微妙なのは第一野党の民主党だ。判決直後、党のスポークスマンが「民主党は憲法の価値と民主主義秩序を損なう、いかなる行動にも妥協したり容認しないという原則を堅持してきた。今後もこの原則がブレることはない」との声明を発表し、自己保身に汲々とする醜態を見せている。

朴槿恵政権は自らの意向を反映した重刑判決が出たのを機に、統合進歩党に対する強制解散を目論んでいる。翌18日、憲法裁判所では法務部が提訴した「違憲政党の強制解散請求」の公判が開かれ、法務部側の証人は内乱陰謀罪の有罪判決が強制解散の十分な根拠になると主張した。さらに国家情報院は、李石基議員の講演会に参席した統合進歩党幹部らの容疑を固め、数日中に検察に送致する計画だという。

1980年、金大中氏が内乱陰謀罪で起訴され、軍事法廷で死刑判決を受けた。それ以降、内乱陰謀罪で起訴された事件はなかった。後に金大中氏は再審を請求し無罪を勝ち取るが、24年後のことだった。しかし彼を起訴した検事も、彼に死刑を宣告した判事も、誰一人として責任を問われなかった。

真実と法理よりも独裁政権の意図に忠実だった検察や司法部が裁かれてこそ、政治事件の冤罪再発を防止できるだろう。今回の内乱陰謀事件も、数十年後の再審でようやく無罪が宣告されるような事態になってはなるまい。控訴審で真実が究明されることを強く願う次第である。以下に、2月18日付『ハンギョレ新聞』の社説を要訳して紹介する。(JHK)


[社説] 法の論理を逸脱した「李石基事件」の判決

裁判所が李石基議員らに対する内乱陰謀事件を有罪とみなし、懲役12年~4年の重刑を宣告した。「ROが内乱陰謀の主体」という公訴事実をほとんど認めたわけだ。「ROは存在せず、国家情報院と情報提供者の推測で作った小説だ」と主張してきた李議員と弁護団の主張は、全く受け入れられなかった。

裁判所の有罪判決が法理的側面や事件の展開過程に照らして、どれくらい説得力があるのか疑問だ。この事件は、国家情報院が敢行した大統領選挙介入事件の渦中に発表された。そうした経緯を知っている国民なら、公安当局と政権が難局を回避するために準備したスケープゴート(犠牲の羊)騒動に、裁判所も引き立て役を担ったのではないかと疑問を持ちそうだ。

内乱陰謀および扇動罪に対する有罪判断だが、まず法理的に無理な側面がある。裁判所は「ROが主体思想を戴く秘密地下革命組織であり、自由民主主義体制を転覆しようとする国憲紊乱の目的の下、内乱水準の謀議をした」という検察の主張を受け入れた。言論に公開されたように、彼らの集いを盗聴した録音記録に「石油貯蔵タンクの爆破や鉄塔の破壊、後方かく乱」など、荒唐な表現が多数登場するのは事実だ。また、情報提供者の李某氏を含む3人の対話を録音した記録には、思想学習の場で北朝鮮の三代世襲を容認するような発言も登場する。

しかし、かと言って彼らに内乱陰謀や扇動罪を適用できるかどうかは別途の問題だ。刑法第87条は内乱罪について、「国土の僭竊または国憲紊乱を目的として暴動する罪」と規定している。ある地方の平穏を害するほどの「暴動」であるだけでなく、一般的で抽象的な合意を越える「具体的な謀議」でなくてはならないのだ。

判決文が「陰謀は計画の細部にまでは至らなかった」と解明したように、彼らが果たしてどの程度の具体的な内乱計画を立てたのか、実際にそれだけの実行能力があったのか、甚だ疑問である。判決は「おもちゃの銃」が話題になり幼子の泣き声まで聞こえる集いが、“内乱陰謀のための組織的な会合”だというのだが、合理的な判断だとは同意し難い。

2010年に情報提供を受け、昨年7月までは「国家保安法違反事件」と規定して盗聴令状を受け取っていた国家情報院が、突然、8月になって「内乱陰謀事件」に変更したことは、この事件の政治的性格を示唆するものだろう。大統領選挙に介入した犯罪行為を糾弾する時局宣言とローソクデモが相次ぎ、国家情報院が危機に陥ったことから事件を誇大包装して発表したのではないか、という疑惑だ。

録音記録を起訴以前の段階からメディアに流して世論裁判を試みたことも、このような政治的意図を感知させる。この事件に先立ち、南北首脳会談の対話録を強引に公開したのも同じ脈絡だった。政府が法務部を通じて統合進歩党に対する政党解散審判を憲法裁判所に請求するなど、事件を前後して政権次元での「従北騒動」が猛威を振るったことは、この事件の政治性を端的に反映していると言えよう。

このような政治的事件において、結局は、裁判所が法の原則を厳格に守るのではなく、公安当局の世論攻勢に振り回されたのではないか。遺憾なことだ。