君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

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『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二章三話

2015-04-10 01:29:22 | 『君がいる幸せ』 limitato etemita編二章
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 人類の首都星
惑星メサイア ミュウの星 ノアに近い位置にある
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる
<人物>
ジョミー ノア前副首相 ジュピターという宇宙の軍を動かせる権限を持っていた
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任していたが…
セルジュ 軍事惑星ペセトラの評議会議長代理(現在、軍部で最高位)

   『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二章三話

 身体のだるさと軽い眩暈、そして眠気。
「…さっきのあれは」
 ベリアルに肩を掴まれた時に感じた微かな痛み。
「…アンフェタミン…麻酔薬か」
 ベリアルの部下が手錠をジョミーの後ろ手にはめると部屋から出て行った。
 戦時中に開発された対ミュウ用の手錠は能力を使おうとする脳波を察知して電流が流れる仕様で、その電圧によっては死亡させる事が出来る物だった。
 ジョミーは朦朧とする意識に顔をゆがませながら半身を起こした。
「ベリアル…セドルに…危害を加えてはいないだろうな」
「彼はこの会合が終わるのをただ待っているだけです」
「良かった…」
 そう言うと、ほっとしたような顔をしたジョミーを見てベリアルは表情一つ変えずに聞いた。
「同じ穴のムジナか?」
「そうだ…と言えるのかもしれませんね…」
「セドルを利用している点は同じ。私は利益なら、あなたは何だと言うのかな?」
「友情…」
「友情?違うでしょ?」
「…そう…違う」
「どう思っている?」
「セドルはキースに成りそこねた…」
「キース・アニアンに?」
「はい」
 それは…あなたも…。とジョミーは聞こえないように続けた。
「クローンの中に生まれた亜種が人間らしい人間だと判断したマザー。あれは間違いだ」
「ベリアル…?」
「そう、間違いだ」
「…人間が変わる時が来ていたと言う事でしょう?」
「ふん。失脚した政治家などどうでもいい。それより質問に答えろ」
「僕をこうまで怖がって聞きたい事…とは…」
「何があったのか、事実が知りたい」
「僕が…それを知っていると?」
「あの場に居たのを見た」
「僕が素直に教えると思っているのか?」
「ああ。思っている」
 ベリアルは自分の右手の指輪の先の針を見せた。
「…麻酔じゃなく…自白剤?…」
「お前が殺したのか?」
「その将校は…あなたの何なのですか?」
「父親だ」
「…それがおかしいと疑問を感じた事はないのか?」
「疑問?」
 ベリアルは自分が見下ろしているジョミーに会話の主導権を取られている事に気が付いた。
「質問する側になっていない?」
「あなたは慣れていないのですよ…」
「ジョミー?」
「拘束し、投薬し、質問をし続けなければ暗示は解かれてしまう…。そこに自分の感情を入れてはならないのです」
「なら、今すぐに答えろ!」
 自分が感情的になったのは、キースの名が出た時。キースに対する嫉妬心を見透かされカッとなったベリアルはジョミーの胸ぐらを掴みあげる。もう一度針を使おうとベリアルはジョミーの首に針を近づけた。
「…でもそれは、人間同士での事。ミュウには深層での心理攻撃でないとソルジャークラスは自白をしません。僕らは心に自然にロックがかかるようになっています…ただ、身体は恐ろしく眠い…」
「そうか、ならば!」
 針を使う事を諦めたベリアルは、ジョミーを床に引き倒し殴りかかろうとした。
「ベリアルやめろ!」
 部屋のドアが乱暴に開き、入ってきたのはセドルだった。
「セドル。何故ここに」
 ベリアルのその問いには答えず、セドルはジョミーからベリアルを引き離した。
「どう…したんだ?」
 ジョミーが言う。
「どうしたんじゃない。あのヴィーってのがおまえを助けろって俺の所に来たんだ。ここに来るのだってあいつがいなきゃ来れなかったのに、助けるのだって自分でやればいいのに」
 言いながらセドルはベリアルに手錠の解除をさせた。そしてそのままジョミーに肩を貸していた。
「ヴィーには動かないように言ってあった。彼が来たって事は…」
「…ああ、何かがあるって言っていた」
「ジョミー。あいつがここを見つけました」
 ヴィーが何人かの部隊の仲間を引き連れて入った来た。もちろん彼らは今は軍人では無いのでジョミーが着ていたようなグレーの服だった。
「空港を攻撃してはこないだろうが…ここから離れよう」
「わかりました」
「ベリアル卿。こちらへ。僕につかまって下さい」
 自由の利かないジョミーをセドルと支えながら、ヴィーは自分の部下に命じた。
「転移同調」
「クリア」
「跳びます」
 ヴィーの声を合図にして、空港の「セイクリッド」へと跳び、再びそこから何処かへ跳んだ。

「うわぁー」
「今は動かない方がいいですよ」
 ヴィーの声にどこかへ行こうとしていた自分にセドルは気が付いた。ヴィーが体を支えてくれていた。
「わかりますか?」
「ああ、わかる。わかるが…気分が悪い」
 そう言いながら、ヴィーの助けを断った。
「大丈夫ですか?」
 ヴィーの問に、首を縦に振って答えた。
 ミュウの使うテレポートとは違う跳び方をしたのはわかったが、こんな無理矢理なのは初めてだった。
「意外と強いですね」
「ここは?」
「船の中です」
「ベリアルは?」
「気絶をしてしまったので医務室です」
「ジョミーは?」
「ここに」
 と、後からジョミーの声がした。
 振り返ると、毛布に包まったジョミーが座っていた。
「では、艦橋に行きます」
「ああ、頼む」
 廊下を歩いてゆくヴィーを見送り、ジョミーは立ち上がった。
「セドル。僕の部屋に行こう」
 二人はジョミーの部屋へと向かった。 
「…あふっ…」
 と、眠そうにジョミーがあくびをした。
「薬の所為か?」
「うん。そう…アンフェタミンを自白剤として使ったみたい…」
「お前、薬に弱いのに」
「大丈夫。もう大部分は抜けてるようだ。三回も跳んだから…酔ってる感じの方が強くてね…」
「三回?」
「ああ、一回はヴィーたちのテレポートで跳び、その後は、船ごと空間の物質転移で一度宇宙へ、そしてここへ跳んだんだ」
「物資…転移?人間も移動出来るのか?」
「ミュウなら耐えられると言われている。今回でミュウと一緒なら耐えられると実証出来たね」
「そんなもん。実証出来ない方がいい」
「そうだね」
「しかし、こんな事をしてまでここへ来たのはどうしてだ?ここは何処なんだ」
「答えるよ」
 とジョミーは大きなドアの前で立ち止まった。
「ようこそ。ここが僕の部屋だ」





  つづく







※遅くなった上に短くてすみません><;




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