君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

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『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二章四話

2015-04-19 03:03:05 | 『君がいる幸せ』 limitato etemita編二章
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 人類の首都星
惑星メサイア ミュウの星 ノアに近い位置にある
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる
<人物>
ジョミー ノア前副首相 ジュピターという宇宙の軍を動かせる権限を持っていた
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任していたが…
セルジュ 軍事惑星ペセトラの評議会議長代理(現在、軍部で最高位)

   『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二章四話

「これがお前の部屋って言えるのか?何も無いじゃないか」
 そこはただ広いだけの空間だった。
「止まって」
 ジョミーはパネルを出し入力してゆく。
 部屋が一本の通路を残し開く、下は空洞になっていた。やがて部屋が色を変え、球体が浮かび上がり天球図の真ん中に自分たちが立って居た。
「ここはこの船の中心にあたる。ここから艦橋へ指示が出せるんだ。艦橋。ヴィーはいるかい?」
「はい。ジョミー。天球の間ですか?」
 と、画像が浮かび、ヴィーが返事をした。
「ああ」
「この砂嵐は後4時間ほどでおさまります。基地の船の手配も済みました」
「ありがとう。しばらくこのままにしておくから、後の調整を頼みます」
「わかりました」
 ヴィーが画面から消える。
「これは人類の宇宙全体図なのか?凄いな」
 自分達の目の前に浮かぶのが惑星ノア。
 手に映り透けるノア。一般の航路とは違った。軍事関係の星は公開されていない。だから、普段使う航海図より精密で正確だった。
「こんなに知らない星があるなんて…」
「セルジュが、情報を教えてくれた。それと、ここはミュウも人類も関係なく扱える。ノアを拡大してここを出してみて」
「え、ああ、こうか?」
 セドルは手を広げノアを大きくした。そこに色々な表示が出ている。小さく点滅しているのが今の位置だろう。
「触れてみて」とジョミーが合図をする。
 指先で触れると衛星からの画像が浮かび上がった。
 大きな砂嵐の中。遺跡のような建物がかすかに見える。
「ここか?」
「そう。ここが船がいる場所」
「え、一体どうやってここに?ああ、だから、物質転移か…」
「あの時、サーチされ攻撃目標にされていた。だからヴィーが来てくれた。追跡されないようミュウの力を使わず、船ごと居場所を隠すにはあれしかなかった」
「じゃあ。お前たちを狙っているのはミュウ…。例のあの、タイプブルーのクローン…ソルジャーズのブルーだな」
「うん。残念ながら、身内の争いに巻き込んでしまったという事なんだ」
「俺たちが、人類とクローンの争いにお前たちの力を借りたのが先だからな…」
「後4時間で軍から迎えが来るから、二人は首都に戻ってもらう」
「さっき、ヴィーから聞いたが、ジョミー。ベリアルはお前にどうして薬なんか…俺はそんな事になると知らなくて…。まったく、あいつはどうして、一体何をしたんだ?」
「セドル…君が僕の口を割らせる人質だったのはヴィーから聞いたよね。だから、君は部屋に飛び込んで来た訳だ。薬は多分、最初から君を人質にしても僕が口を割らないとふんだのだろう」
「あいつは、お前から何を聞き出そうとしたんだ?」
「それは、言えない。彼が知りたい答えは僕じゃなくて、セルジュが知っている筈だから…」
「そうか…」
「何か、つまらなそうだね?」
「あいつの弱点なら知っておきたいと思っただけさ。お前、あんな目にあったのに秘密を守ってやるのか?」
「君たち二人が建物ごと吹き飛ばされてたかもしれないって方が酷いでしょ?」
「ん…まぁ、確かに転移は酷く気分が悪かったが…」
 つまらなそうに目の前の天球図を見上げていたセドルが惑星ニュクスを見つけ、懐かしそうな顔になった。
 ジョミーはそんなセドルをじっと見つめた。
「セドル。君も成人検査をパスして星を出た?」
「ああ」
「子供の頃の記憶は?」
「無いな」
「無いのに懐かしいのか?」
「今と違って記憶の無いのが普通だったし、お前が俺を他と違うと言うが、気持ちが他の人間とどこまで違うかはわからない。でも、ニュクスは忘れていない。ただ、あの星を知られてはいけないという気持ちもあったが、俺はそこまで深刻には思っていなかった」
「君はクローンでもミュウに近いようだね」
「俺が?ミュウに?」
「うん」
「それならなおさら、つれなくするなよ。俺たちは大切な物を分け合い共有した仲だろ?」
「ああ、まぁそうだけどね。あふっ…」
 と、またジョミーが欠伸をした。
「んー、まだ眠いや。薬が残っているのかなぁ…」
「あいつがお前に使ったのは、アンフェタミンと…ラボナール…?」
「多分ね。あんな少量で効くとは…何かまた違う物かもしれない」
「……」
「何か聞きたい事がありそうだね。今の僕なら…答えるよ。きっと何でも」
「ジョミー。質問と言うか、気付いたんだが、お前、今、力が使えないのか?」
「へぇ、よく分かったね」
「ま、ニュクスであれだけバンバン使って、俺ごと軽々と何度も跳んでたのに、お前なら何でも出来ると思ってたからな。それが、薬を盛られたからといって、ベリアルに床に倒されてて、最初に跳ぶのもヴィーたちだった。お前の力ってどうなっているんだ?」
「…んー」
「何でも答えるんじゃなかった?」
「酷いなぁ。それは僕個人で最もデリケートな問題なんだけどな…シドも聞いてこなかったのに。まさかそんな事を最初に聞いてくると思わなかったな。全く無神経だな」
「俺はミュウじゃないからな。お前たちの事情なんて知らない。いいから、答えろよ。気になっている事はまだ他にあるんだ」
「4時間ずっと。質問攻めにするつもり?」
「さあな。お前次第だ」
「タフだねぇ…」
「俺は、ニュクスでの強行軍を耐えたんだぞ」
「そうだったね」 
 と、ジョミーは笑った。
「じゃあ、奥に行こう。お茶いれるよ」
 二人は通路を歩き、球体の奥へと進んだ。
 エレベーターで上へと向かった先にもう一つ部屋があった。

 白い布が天井から降りている。入ると同時に布が左右に開き中が見えた。
「今は何もないけど、宇宙(そら)が見えるんだ」
 上を指差しジョミーが言う。
 二つ目の布が開く。その先に白い天蓋付きのベッドがあった。
 ジョミーはその脇にあるカウンターへと招いた。
「いい部屋だが、白いカーテンだけって…」
「あの天球の間に時間がかかって、真上のここまで手が周らなかったんだ。観葉植物とか並べたかったけどね、ああ、壁にスクリーンは入れてるよ。だけど、これだけじゃ寂しいよね」
 ジョミーは壁をノアの夜景に変えた。どうやらライブ映像のようだった。
「セドル。嫌いな物ある?」
 ジョミーがカウンターの裏へまわり聞いた。
「ん、別に無いな」
 ジョミーは紅茶とガレットを出した。
「紅茶だけど、将来、葉っぱもここで採れるようにする予定なんだ」
「この船で?宇宙食や保管食ではなく、作るのか?」
「シャングリラを小さくしただけだからね。色々出来るんだ。ガレット、食べてみて」
「これはクッキーじゃないのか?」
「クッキーの方がいい?」
「あ、いや、これでいい。どうせ俺にはどっちかなんてわからない」
 と、セドルが一つつまんで口に放りこんだ。
「お?サクサクしてて美味しいな」
 その言葉に嬉しそうにジョミーが笑った。
「良かった」
「まさか、お前が作ったのか?」
「うん。そのまさかだよ。だけど、こねて形を作ってオーブンで焼いただけだよ」
「いまどき、作れるやつがいたとはな。ミュウはそんな生活しているのか?」
「自給自足の生活もしていたからね。でもそのガレットはずっと前に人間のある人から教えてもらったんた」
「もしかして、それ、女だろ?」
「え?」
「お前から女の話が出るとはなぁ」
「そう女性」
「好きな人とかか?やっぱりメサイアにいるのか?」
「好きだった。今はどこにいるのかはわからない」
「そうか、もしかして大戦中の事なのか?…人間だもんな。すまない」
「いいよ。彼女にはとても感謝している。下手だったガレットもクッキーもキッシュもなんとか上手く焼けるようになって、出来れば彼女にも食べてもらいたいなと思っているよ」
 そう言ってジョミーもガレットを一つ口に放りこんだ。
 大戦中の人間の女とミュウの長のジョミー。その二人がどんな出会いをしたのだろう。ベリアルの父親の事もあるし、過去は終わった事にならない。過去と今を切り離すことは出来ないとセドルは思った。
「…じゃあさ、さっきの話をしようか…」
「…ああ」
「僕はミュウだ。だけど今、僕はタイプブルーの力は使えない」
「それは、ミュウじゃなくなったのと違うのか?」
「ううん。全く何も出来なった訳じゃないんだ。見てて」
 そう言ってジョミーは目の前に広がる白いカーテンをまるで風が通ったように揺らせた。






  つづく







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