君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
二次小説とオリジナル小説の置き場となっています。
同人に傾いているので入室注意★

『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二章二話

2015-03-30 03:01:55 | 『君がいる幸せ』 limitato etemita編二章
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 人類の首都星
惑星メサイア ミュウの星 ノアに近い位置にある
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる
<人物>
ジョミー ノア前副首相 ジュピターという宇宙の軍を動かせる権限を持っていた
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任していたが…
セルジュ 軍事惑星ペセトラの評議会議長代理(現在、軍部で最高位)
※ここまでのあらすじはカテゴリー「はじめに」で確認してください。

   『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二章二話

  惑星ノア・首都ノアの空港 惑星ニュクスの事件から三か月

「セドル」
「ジョミー?」
 まるで、空港の整備員のようなグレーの服のジョミーにセドルは声をかけられるまで気が付かなかった。
「ミュウの服じゃないんだな」
「あれじゃ、目立つし…。さっきまでセイクリッドの調整と搬入をしていて…。君は?約束の時間にはまだあるよね?」
「話があって…捜していたんだ…」
 強引に話を進めるタイプのセドルが口ごもるのは珍しかった。
「どうした?」
「…何か事情を作って、今日の会見を断ってほしいんだが…」
「セドル。僕の方から君に頼んで会う事にしたのに、それは出来ないよ」
「確かに、俺は人類にスポンサーが居て、ここまでやってこれた。彼は恩人だ。ジョミーも星を守ってくれた恩がある。だから…」
「この会合が上手くいくとは思えないとか?」
「…出来れば、会わないでほしい」
「それは無理だ。もう進みだしてしまったから…。必要な事なんだ…」
「いいのか?」
「何が?」
 ジョミーは人懐っこい笑顔を見せた。
「本当にいいのか?彼はお前の敵だぞ…」
「承知済みだよ」
「…スーツに着替えてくれるか?」
「了解。セドル」
 ジョミーはジュピター時代に着ていたのとよく似た黒のスーツに着替えた。 
 その姿を見て服だけじゃなくて、何か雰囲気が変わったか?とセドルは思った。
「知っていると思うが、あいつはニュクスには行かなかった。だが、マザー信奉者だ。お前を殺しはしないだろうが…」
「大丈夫」
「いいや。会うのを止めてもらう」
「セドル。言っただろ必要な事なんだ…。最終的に僕の命を欲しいと言われても構わない。今は…だから…」
 見上げるジョミーが笑う。
「俺を見るな」
 セドルはジョミーの視線を遮るように手を上げた。
「ああ、ごめん」
 一瞬、ポカンとしたジョミーが慌てて謝る。
「お前、気が付いていないのか?」
「いや、薄々は…」
『意識してやっているのか?」
「ううん。違うよ。これは力(魅惑)じゃない」
「ニュクスへ行った時の強いお前と、さっきのお前と今のお前と。一体どれが本物なんだ?」
「それはセドル、君に気を許している証拠だよ」
「そんな訳ないだろう…」
 セドルは彼の癖の卑屈な笑いを作ろうとしたが出来なかった。
「ごめん。君が僕の中に、僕が君の中に入り過ぎてしまったようだね…。僕が不安定なんだ。緊張してしまっているのかもしれないね」
「だから、俺をあんな瞳で見たのか?、ああ、もういい。俺はいい。これで本望だ。お前が言ったように俺が親のように俺を無条件で愛してくれる存在を求めていても、それはお前じゃない。だからもう止めるのは諦めた。全てが終わって本当に俺が必要じゃ無くなったら、もう一度だけ、夢をみさせてくれればいいさ」
 と、セドルは笑った。
「死ぬ気はないけど、すべてが終わってお互いに生き残っていたらね」

「アガレス・ベリアル卿。あなたでしたか…」
 古の民の神と悪魔の名を持つこの男。セルジュと同じ年代いの彼はペセトラの評議会員の一人で、ペセトラでもその地位は高かった。彼がアルテメシアの教育ステーション落下事件の時にダールトン家に近づき圧力をかけ、セドルと僕に罠を仕掛けた張本人ではないかとセルジュは見ていた。
「髪はいつ切ったのでしょうか?」
 唐突にベリアルは言った。
「…なんのことでしょう?」
「ニュクスでは肩につくくらいまであった筈…シャングリラでは今の短い髪だった」
「あなたはニュクスにはいなかったのでは…?」
「セドルから聞いたのですよ。彼が気していてね。いつ切ったのですか?」
「髪はキースに会った時に切りました」
「キース・アニアンに…。そう言えば、ジョミー・マーキス・シン。いや、ソルジャー・シンを手に入れたら世界が手に入るとは本当ですか?」
「さあ、どうでしょう。そのような事より、話を始めましょう」
「この会見はそちらが望んだものだ。まずはそちらから」
「わかりました。アガレス・ベリアル卿」
「ベリアルで良いですよ。ソルジャー・シン」
「では僕もジョミーで良いです」
「僕からの提案は、軍縮に協力をして頂きたい」
「セルジュの軍解隊はすすんでいますよ」
「そうですね。ですが…彼だけは、問題があります。ベリアル。あなたは軍縮は反対ですか?」
「いいえ。戦争はもう無いでしょうから…」
「では、お願いします。彼らは研究所や病院などの建設を進めていますので、心配はないです」
「人類をどうするつもりですか?ジョミー」
「人類をどうもしませんよ。戦争を望まない。それが人類の意思だと解りましたし…」
「『ジュピター』としてですか?」
「いいえ。ミュウの元長(ソルジャー)としてです」
「あなたはもう長ではない?」
「はい」
「今は何なんです?」
「ただの、ジョミーです。ですから、セルジュと共に、トォニィにも協力をしてほしいのです」」
「ミュウにもですか…ではジョミー。こちらの軍備解体の代わりにミュウにはバンクからの供給を止めてもらうのはどうですか?」
「子どもは…人口を維持するのに必要なものであって、軍事とは対等に扱えません」
「それはそちらの都合ではないのですか?ミュウも子どもは産まれにくい。人の母体ばかりはどうしようもない」
「…ええ」
「それは嘘だ。ジョミー。あなた方、ミュウは母体が無くても子どもは作れる。そんな恐ろしい事は発表出来ない。人類と同じように生きるには、子どもは供給してもらわないといけない」
「ミュウの力で作った子どもは…」
「もう、人とは呼べない?」
「…いえ…」
「ミュウはやはり人では無いですね」
「ベリアル卿」
「私はミュウが嫌いです。恐ろしいです。自覚しましたか?あなたはミュウであると」
「そうですね。僕はミュウです。でも、その前に一人の人間です」
「何が言いたいのか…」
「あなたの望む世界は今、僕ではなく、あなたに委ねられたと言う事です」
「わかりました。協力します。軍縮も供給もこのままにしましょう。でも、ジョミー。私は世界と他に欲しいものがあります。あなたは何だとおもいますか?」
「……」
 バラバラと男たちが、ベリアル卿の部下が銃を持って入って来る。
「これは何の真似ですか?」
「私にセルジュを助け、と同時にトォニィをも守って欲しいのでしょう?」
「ええ。ですが、僕にこのような攻撃は無意味ですよ」
「彼らはあなたに攻撃はしません」
「…彼は…セドルはどこですか?」
「セドルが心配ですか?」
「…彼だけではありませんが…あなたの言う通りに…」
「そうですね。まずはひざまずいてお願いしてもらえますか?」
「わかりました」
 ジョミーは床に膝をつく、その肩をベリアル卿が掴む。
「あまりにあっけないですよ」
 見返したジョミーは聞いた。
「あなたは僕がキースの手から離れるのを待っていた。僕に何をさせたいのですか?」
「30年前。ペセトラで私はあなたを見ています」
「え?」
「ペセトラの将校を殺した事を忘れましたか?」

 記憶が蘇る。
 ペセトラのある家で銃撃戦が起きる。
「ジョミー。大丈夫ですか?」
「何が起きた…体が動かない」
「乗って下さい」
「ダメだ。助けなきゃ…」
「人類に任せましょう」
「ハーレイ」
 ジョミーはハーレイに引きずられるようにしてその場から離れた。

「…何をした…」
 ジョミーは急に眩暈を覚え、倒れた。





 つづく







最新の画像もっと見る

コメントを投稿