君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

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『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編二章十七話

2016-05-28 02:50:45 | 『君がいる幸せ』 limitato etemita編二章
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。 

 <用語>
惑星ノア 人類の首都星
惑星メサイア ミュウの星 ノアに近い位置にある
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる
<人物>
ジョミー ノアの前副首相 ジュピターという宇宙の軍を動かせる権限を持っていた
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任していたが…行方不明中
ソルジャー・トォニィ ジョミーの後を継ぎミュウの長となる。ニュクス事件による政変でノアの議会を掌握する。現在、ジョミーのジュピターの権限を預かっている。
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
シルジャーズのジョミー 本当はジョミーのクローンではない(タイプイエロー)


   『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編二章十七話


  ジョミーの部屋

「ミッシェル」
 それがソルジャーズのジョミーの本当の名前だった。
「でも、僕は君の名前しか知らない」
「それは…どういう事なんですか?」
「手紙が届いたんだ。スウェナの所に、ミッシェルへとなっていた。僕達はこの名前が彼女の子どもだろうと思った。だから、まだ開封せずに彼女が持っている。いつか取りに行くといい」
「ジョミー…。それは本当ですか?」
「ミッシェル。ミカエルとも呼べるんだ。それは天使と言う意味の名前だね」
「本当にどういう事ですか?」
「ん…?」
「何故、何もなかったような顔をして、話すのですか?」
「何も無かったからさ」
「嘘です…」
「嘘か。僕は前に君を甘言で懐柔しようとした。飴と鞭で…」
「……」
「耳触りのいいだけの言葉なら言う事は可能なんだが…。それは余りにも酷い所業だ。事ここに至って僕は君へ何も言えないんだ。それくらい何も出来ないんだ」
「それは、何もしなかったと言う事なんですか?」
「いいや、違う。けれど、何も出来なかったのと、しなかったのは同じだと…思う。何も出来ないからって…僕は彼女をスウェナに託した。戦時中の話だ。そうするしかなかった。問題はその後だ」
 ジョミーは彼の母親リザと出会ったいきさつと、その後、彼女が行方不明となり、幽霊船を呼ばれたオルロワでジョミー(ミッシェル)だけが見つかった事を話した。
 何度か止まり、何度か詰まり、思い出しながら話すジョミーをソルジャーズのジョミーは見た事がなかった。それは浮かんできた言葉を打ち消しながら話しているかのようだった。これが彼の真実なのかもしれない。
「いつか話す時がくると思っていたが…。実際にこうなると話せないものだね」
「話せない事があるのですか?」
「いや、そうじゃない…。いつか君が誰かから聞くより、僕から話した方が良いとわかっているんだが…」
「何でも答えてくれるのでは?」
「そうだったね。君に嘘をつく事なら話せるかも…。卑怯だよね…」
 それは、今までが全て嘘ではなかった事になる。何も出来なかった事実と何もしなかった事実。
 弁解すら出来ない程の後悔。そんな経験は自分もしてきた。
 もうこれ以上の詮索はしなくていいと思った。
「もう、いいです」
「ジョミー」
「オウロワの後、僕はブルーと出会った。そこからは覚えています。ブルーと一緒のクローンだと思っていた僕は幸せだった。そう思います」
「今、僕が語ったのは記録として残っているほんの断片だよ」
 首を振り、その先を拒絶する彼に僕は何も言えなくなってしまった。 
「僕は君への答えは…出来ているのだろうか?」
「ジョミー」
「……」
「あなたは母が妊娠している事を知らなかった。そして、探していてくれた事、もしかしたら生きていたと思いながら、僕らと戦って、仲間に加えた事」
「全て、言い訳でしかない…」
「ジョミー。あなたは、今、僕をどう思っていますか?」
「難しい質問だね」
 考え込んだジョミーの元に、突然、通信が入ったとコールが鳴る。
 ジョミーが手首の端末でそれを受ける。
「何か起きましたか?」
「ソルジャー。セイレンが捕まったわ」
「ああ、やはり。だから、彼女が直接僕に会いに来るのは危険だと言ったんだ」
「でも、コードは受け取ったわよね?」
「ああ、確かに受け取った」
「彼女は口を割る事はないと思うけれど、急いだ方がいいわ」
「わかった。彼女を任せていいかい?」
「ええ、任せて」
「ツェーレン…?」
 考えていたソルジャーズのジョミーがそう言った。
「ジョミーなの?」
「はい」
「そう、今日だったのね。だから、セイレンが急いだのね。ああでも、そんな時にごめんなさい」
「いえ、もう殆ど話し終えた所です」
「ジョミー。ソルジャーが何を言ったか想像がつくわ。彼は何もして来なかったって言ったと思うの。それは違うわよ。私達は彼の深い悲しみを知っている。ソルジャーは、もうずっとあなたと話したがっていたわ」
「…それは?」
「本当はとっても不器用で、何も言えないんじゃないかしら?」
「ツェーレン」
 と、ジョミーが止めに入るが、構わずツェーレンは続けた。
「信じて欲しいの。それは、トォニィが、何度もソルジャーとあなた達を引き離そうとしていたの、あなた達を戦士にしようとしていたよ。それをソルジャーは反対して自分の近くから離さなかった。このニュクス事件でもキースの事で対立して監禁されて…ジョミー。あなたはとても守られ、愛されているのよ」
「……」
「ツェーレン。もう時間が、見つかるといけないから切るよ」
「ソルジャー。トォニィも、彼も許して」
「ああ、わかっているよ」
 そう言って、通信は切れた。
「ツェーレン…」
 トォニィと結婚してから、あまり表に出てくる事がなくなったツェーレンが、今、この状態でジョミーに連絡を取っている事は、彼女はトォニィを裏切っているとソルジャーズのジョミーは思った。
「彼女は僕に協力をしてくれている。だが、それはトォニィの為なんだ」
「でも」
「彼女はトォニィを助けたいんだ」
 ニュクス事件でノアの勢力図が大きく変わった。軍部まで及んだ粛清の嵐。その事に反感を持つ人間が出始めていた。
それを、彼女は畏れていた。人類の中に「入り込み根を張っているジョミー助けを求めるのは、当然の事だった。
「トォニィは、どうしてこんな事を?」
「それに答える前に、僕の願いをきいてもらえるかな?」
「願い?」
「ああ、君は本当に優しい。僕なんかよりずっと…。僕は君に責任を持たないといけない。親として何かをしようと思うのも、それすらも申し訳ないくらいだ。だから…」
「何です?」
「僕を殴ってくれないか?」
「殴る?」
「それで済まそうと思っていないよ…。けれど、それで、僕の気は済む…」
「嫌だって言ったら?」
「それが君の判断ならそれでいい。でも、この先にも僕の事を殴りたいと思える時がくると思う。その時に今日も分も足して殴ってくれるかな?」
「それこそ嫌ですよ。だったら今、やります」
「ありがとう」
 構えたソルジャーズのジョミーは一発殴る。
「痛た…」
「殴りたいと思った時もあったなぁ…」
「そうだよね…」
 と、二人は笑った。








☆今回、女性率高し。新キャラ(セイレン)、スウェナとツェーレン。
政治家とファーストレディになった二人の情報網は侮れないのです。^v^
それにしても、今回は書きにくかったです。;;
女性を捨ててきてしまった事実を子ども伝えるなんて、土下座しか思いつかない!^^;
謝って逃げるのも、弁解するのもジョミーらしくないと思ったら、何も言えなくなってしまい…。
でもそれじゃ、話が進まない。

とても困りました。;




 


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