君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

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『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」十九話 ※BL風味(会話が過激?)

2011-11-12 02:06:48 | 『君がいる幸せ』(本編)三章「星の祈り」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
木星軌道上の衛星都市メティス 二人がいた建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」

  十九話 現在  ※BLあり…会話が過激?

   戦艦ゼウス キースの部屋
「人を好きになる意味がわかったと言ったが本当に解ったのか?」
「どうしてこだわるの?」
「気になったからだ」
「言いたくないと言ったらどうする?」
「無理にでも答えてもらう」
「…性格が違ってるって言うんじゃなくて、元々からそういう性格だったね…。疑問があると突き進む…」
 分かっているなら早く答えろ。と言う顔で見てくる。
 仕方なく素直に答える事にした。
「好きになるって言い方をしたけど、本当は愛する意味は?と聞いていたんだ。愛は難しいから言いにくかった。愛する事は知っているけど…。親から子への愛なら親への愛も愛。友情も愛だし、僕がミュウたちを守ってきたのも愛があったから、地球や人類への愛もあった」
 何も言わずに聞いていたキースが少し厳しい顔をした。
「…それでは何故わからなくなった?」
 それは、多分…。
「僕自身が真剣に愛した事がなかったからだと思う」
「相変わらず、お前のは…許容量が広すぎる…。それなのに、愛した事がなかったのか?」
「すり抜けて行くものばかり追ってた気がする」
 僕は手を見た。
「わからなくなったのは、誰も僕を見てくれてないから…」
 戦後になってやっと自分は生きているんだと自覚が出来たキースには、ジョミーの言う意味が痛いほどわかる気がした。
 彼はミュウである以上、どこまでも「ソルジャー・シン」の名は付いてまわる。
 どこまでも人間ぽいこの男を、その強大な力は人間で無くさせてしまうのだろう…。
 そんな気持ちが自分はわかると思った。
「だから、僕は、ミュウの女達のように自分の命をかけても後悔しないような、愛し方がしてみたいと思ったんだ」

「じゃあ、俺を好きになれは、あながち間違ってはいなかったな」
「それは、僕に命をかけさせる程に、君を好きになれという事?」
「そうしたいんだろう?」
「ん、わからないな。僕に子供でも産めればすごくはっきりした形で理解できるんだけどね」と答えると、キースは黙ってしまった。
「……」
「ん?なに?」
「お前、俺の子を産みたいって思ってるのか?」
「!!」
「ち、違うーーー。そうじゃない」
 そうか、ソルジャーズみたいなクローンでなく、もし、僕が女だったとしたら、受精するその相手ってのが必要になるんだ。僕と僕ってわけにはいかないんだ…。でも、だからって…。
 キースは考え込んでしまったジョミーを面白そうに見ていた。
 彼はジョミーが他と考え方や感じ方が少し違うのを楽しんでいた。
 そして、助け舟を出すようにキースは「俺も愛はわからない」と言った。
 それに対してジョミーは事もなげに言った。
「キースは人を愛していればいいよ。僕はそんな君を愛するから」
 今こいつは俺に対して、最上の殺し文句を言ったのを全然、わかっていないなと思った。
 言われたのは嬉しかったのだが、ジョミーのそれは人類愛だ。
 キースは、人類愛=愛 の図式を恋愛に替えてやろうと思った。

「命を掛けても惜しくない愛か。それは重くないか?」
「重い?」
「お前が言う愛は、人類愛や親が子に思う愛だ。その辺りはお前は十分に実践してきている。お前が人類も愛していて、その行く末も心配していなければ、でなければ、イグドラシルに降りたりしない」
「…そうかもしれない」
「そんな重い愛じゃなく。もっと違うのがあるだろう?」
「?」
「お前、いままで何人と経験した?」
「!」
「何人好きになったか?だ」
「…」
「ちゃんとした恋愛で…何人とだ」
「4人、5人かな?」
「それで何回経験してる?」
「か、回数?」
「そう、肉体関係が何回あったか?だ」
「それは、こ…答える必要があるの?」
「必要無かったら聞きはしない」
「…人数と同じくらいだと思う…」
「ミュウってそんなに禁欲主義なのか?」
「き、禁欲って……。他の人は知らないけど…」
「それが、もう一種の愛だ。お前はそこを飛び越えて重い方のばかりを追っているから、わからなくなるんだ。人を好きになって愛してからじゃないのか、命を掛けれる程の愛ってのは?」
 これでは、恋愛=愛ではなく、肉体関係=愛になってしまう。
 かなり強引な言い方だとキースにも思えたが、これくらい言わないと、きっとジョミーには、わからない。
「そうか…」
 命を作り出す過程で僕に足りなかったのは愛だったんだ。
 カリナもユウイを愛しているから、何があっても怖くなかったんだ。
「僕の中で、いつしか命と愛が別物になってしまっていた…。愛があるからなんだね」
 ボロボロとジョミーは泣き出した。
「バカだな。お前」
「機械人間に愛を諭されるなんて思わなかったよ」
「俺には子供時代が無いが、お前は子供からいきなり大人にさせられた感じがあったからな…」

「あ…れ?」
「?」
 それっきり何も言わなくなってしまったジョミーをいぶかしげに見るキース。
「どうした?」
 ジョミーはじっとキースを見ながら、
「君がちゃんと見れない」と言った。
「?見てるじゃないか?」
「ドキドキするんだ」
「…お前、今までの経験って何だったんだ?したいだけだったのか?」
「ち、違う。好きで愛してきたけど、どうしたんだろう…情けないな…僕はこんな感情も閉じ込めてきたってことなんだね…」

 ミュウになるという事。
 ソルジャーという重責。
 ナスカの責任、宣戦布告、地球へと。
 その役目を終えた僕は…。
 もう人でもミュウでも無くなっていた。そう思っていた。
 家族を作る事には憧れたけど、僕はどこか臆病になっていた。
 人を愛せない。
 いや、愛してはいけない。そう決め付けていた。
 カリナを失い、ブルーを逝かせてしまった。
 僕が愛する人は不幸になるんだと、だったら、誰も愛さずに。すべてを愛してゆこうと。
 でも、それはとても悲しい事だったんだ。

「僕はどうすればいいのだろう?」
 そう聞かれたキースは、今、はじめて、ブルーに会って話をしてみたいと思っていた。
 ジョミーは確実にブルーを愛している。
 それは心の底から、ジョミーの深層心理には彼がいた。
 深い海の底でジョミーを見守るブルーがいた。
 だからもう誰も他を愛するなんて出来ないのだろう。
 けれど、その一画に自分が入った。
 それは事実だ。
 今、ブルーならジョミーをどう受け止めていくのだろうと思っていた。
 どうやって愛してゆくのだろうと思った。
 結局はこいつは…、俺だけのものにはならない。
 いや、なれない。
 そうキースが思った時、
「僕だけの…ものになって…」
 聞こえないような声で、きれぎれにジョミーが言った。
 それはきっと心からの言葉だろう。
 自分は俺だけのものになれないのに、俺にはなれ。と言うのか?
 そんな事、もうずっと前から決まっている。
「いつでも俺はお前だけのものだ」
 お前が笑っていられる世界を、作っていくのが俺が生きるという事だ。

 半年前のあの時、俺はふわふわとどこでも行ってしまいそうだったジョミーを、繋ぎとめようと抱いた。
 思えばそんなのは一時の事で、腕の中に居る時間だけしか止めておけない事に気がつくべきだったんだ。
 でも今は違った。俺の中にも愛しているという自覚があった。

「何でも持っていけばいい。それがお前を俺のモノに出来る。唯一の方法なら」



  続く







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