君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
二次小説とオリジナル小説の置き場となっています。
同人に傾いているので入室注意★

『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」十五話(Noah/現在)

2011-11-07 16:38:47 | 『君がいる幸せ』(本編)三章「星の祈り」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
木星軌道上の衛星都市メティス 二人がいた建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」

  十五話(Noah)現在 

  エンディミオン艦橋
「キース。コロナフィズを使わせてしまうのはどうだろう?コロナフィズは何個も存在するものでは無かったでしょう?」
「こちらで確認されている物は一つだけだ。作るの自体偶然の産物に近い上に、もともとはある程度の密閉空間が必要な物で…こんな風に持ち出せるようにしているとは思わなかった」
「さっき一つ消した」
「フィズをか!?」
「ブルーが小型のを持っていたんだ」
「そんな物があるのか?」
「もしもの時に使うようにと…。俺が渡されたのだけだと思う…。基になった物はかなり貴重だと言ってた」
「…本体はあれの何倍の威力になるんだ?」
「何百倍?か何千倍か?わからない」
「そうなると、やっぱり一人じゃ無理だな…」
「…ジョミー。お前…まさか」
「彼らにフィズを使わせて、外に出させる。それを僕達で破壊する。ってどう?…出来る?」
 ジョミーはソルジャーズに聞いた。
「……」
 ジョミーはキースの顔色を覗う。
「絶対に星には落とさせない。それは絶対にない。たとえこちらに犠牲が出ても、それはさせない」

 やがて、三時間が過ぎた。
 彼等と話させて欲しいとジョミーが申し出た。
 ゼウスから交信を送る形で敵の艦隊に話すジョミー。
「こちらはミュウの前の長、ジョミーだ。知っていると思うが、お前達の惑星メサイアへの攻撃は失敗に終わった。出来ればこのまま艦隊を引き上げてくれないか?」
「ミュウの長よ。メサイアの攻撃が失敗しても我々とて簡単には引けない。それは、先の大戦を率いてきたお前にもわかる事だと思う」
 敵のリーダーから返事がきた。
「その思い…理解は出来る…。それでは、一つ問う。答えて欲しい。お前達はノアを制圧してから、ここに再びマザーのSD体制を復活させるつもりなのか?」
「いや、我々は、SD体制に戻すのではなく、新しいシステムを作り、人間が穏やかに暮らせる世界を作る」
「それは、前と同じように人間を管理し、監視する事じゃないのか?」
「その方が人間には良いのだと我々は思っている」
「結局は前のように、不具合を起こしたモノを排除してゆくと言うのだな?」
「そうだ」
 このままでは向こうを怒らすのではなくジョミーが怒ってしまうと思い、ブルーが口を挟もうとするが、それを眼で制するジョミー。
「人間は管理されなければならない」
「そんな体制。もしここでお前たちが勝っても。この僕が何度でも壊してやる」
 それをきっかけにするかのように、いつ間にかゼウスの前に大きなジョミーの思念波が現れていた。
 敵の艦隊を包んで余りあるほどの大きなジョミーの思念があった。
 会話でつないで思念波を張る時間を稼いだのだった。
 そのままさっきまで話していた敵のマザー信奉者のリーダーの意識に入り込むジョミーの思念。
「何故、僕達のクローンを作った?」
「お前を、お前達を殺す為に」
「何故殺そうとする?僕達はもう人類の敵ではない」
「その力がある以上敵だ!同じではない!」
「今、沢山の人間が解り合おうとしているのにどうしてこんな事をする」
「…権力が欲しい。お前のような力が欲しい」
「まさか、最初はクローンじゃなくて人間に因子を移植してたのか?あれはこの為だったのか?」
「力が欲しい…」
「お前達の所為で、何人不幸になったと思ってるんだ」
「…人間には無いもの…欲しい」
「ミュウだって完璧じゃない。助け合わないとやっていけない」
「…その力が欲しい…」
 人は、どこまで貪欲なんだ。
 僕らをあれだけ蔑んでいたのに、今度は、力が欲しいだというのか?
 戦後の混乱の中、ノア空域と辺境では行方不明者が多く出た時期があった。
 あれは、実験材料にしていると噂が流れていた。
 人への植え付けが出来ないなら、同じもの(クローン)を作ったのか?
「ジョミー・マーキス・シン。お前が存在するからいけないのだ…。私はお前を…作ったぞ、どうだ、良く出来ていただろう?あの子は…」
 思念体のジョミーからサイオンが出る。
「確かにお前たちは優秀だな…お前は有名な学者だったと聞いた。道を間違えたその罪。命を弄んだ罪。償ってもらう」
 青いサイオンはジョミーを包み彼を実体化させた。
 青いオーラを纏ったジョミーは、どこまでも冷たく彼を見下ろしていた。
 リーダーは最初は驚き近づこうとしたが、それが出来ないと気づく、
「人が触れてはいけないモノだったか…」恐慌状態になった彼はフィズの排出のスイッチを押した。
 射出されるフィズ。
「キース!」
 隙を付く形で身を隠していた連邦のミュウの部隊が敵の戦艦に乗り込んでいった。

「跳べ」
 ジョミーの合図でソルジャーズの二人が宇宙へ飛ぶ。
 段々大きくなりながら落ちてゆくフィズを受け止める二人。
 そこにジョミーが加わり青く大きな三角形が出来た。
 その真ん中は真っ暗な球体が生き物のように不気味うごめいていた。
 下へ下へと落ちてゆく三人。
「落ちるぅ」
 とソルジャーズのジョミーが叫ぶ。
「惑星の引力下はまだだ。落ちると思うから落下するんだ」
 とブルーが叫ぶ。
 それでも落下は続く。
 フィズの力にどうしても押されてしまう。
「僕を下にしろ!」
 ジョミーが言った。
 三角形が動いて向きを変える。
「落とすな。引っ張り上げろ。出来るだろう。タイプブルーならば!」
 怒鳴るジョミー。
「くっそぉーー」
 ソルジャーズのブルーが唸った。

 やがて、落下速度が少しずつ落ちてゆき、落下が止まった。
「押し上げるからこれ以上フィズが大きくならないように抑えて」
「それ、僕達にやらせて」と声がした。
「僕だってタイプブルーなんだから」
 トォニィだった。
 ジョミー達の後、青い三角と惑星ノアの間にステルスデバイスを解除してシャングリラが現れた。
 その船首にトォニィが立っていた。
「シャングリラの仲間の力も使って。宇宙(そら)へ押し上げるから収束する力を温存していて、ジョミー」
 トォニィと仲間達はフィズを抑えながら、ジョミー達の三角形を惑星ノアから遠ざけた。
「トォニィ、ミュウのみんな、来てくれてありがとう。もうシャングリラは離れて。コレを消してくる」
 シャングリラはジョミー達から離れた。
 遠くに見える青い三角形。
「ジョミー…」
 シャングリラの艦橋でそこに加われないトォニィが悔しそうにモニターを見ていた。
 彼はゼウスへ交信をしてフィズの収束を手伝う事を望んだがジョミーに頑として反対されたのだ。
「今は君がミュウの長なんだ。君に何かあったら、また仲間達は危機に晒される。君はもう君一人の身体ではなくなったんだ。それに、今回の事とフィズに関しては僕の責任だ。僕に任せて」
 
 ジョミーはシャングリラが離れたことを確認すると「いくよ」と二人に声をかけて、一気に収束をかけた。
 すざまじい反発がきた。
「…こん…なに…」
 ブルーはさっきの小型を完全収束させてしまったジョミーの力に驚いていた。
(他の事を考えてる場合じゃないよ)とジョミーがブルーに声をかけた。
「集中して!」
 その声にグンと三人は威力を上げた。
「このぉ!」
「いけぇー!」
 それを見て、なお一層ジョミーの輝きが強くなる。
 反発してくる力にあちこちすり傷が出来る二人。
 ざぁ…という音と共にまたジョミーの力があがる。
 それと一緒に三角形が大きな青い円になる。
「いくよ」
 ジョミーの声を合図に
「消えてしまえーーー!」
 と三人のソルジャーが叫んだ。
 やがてフィズはその活動を止め、小さく小さくなってゆき収束されて消えた。
 ガクンと倒れかけるソルジャーズの二人。
 二人の身体を自分の許に飛ばし両手でジョミーが支えていた。
「よく頑張ったね」
 その背後にシャングリラが近づいて来た。

「僕らの母船だ。疲れただろう…。一緒においで。皆、びっくりするよ」
 とジョミーは微笑んだ。



  続く





最新の画像もっと見る

コメントを投稿