君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
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『君がいる幸せ』 Missing-link編 「伝えたい言葉」 二十一話

2013-06-11 03:13:45 | 『君がいる幸せ』 Missing-link編
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー ノア副首相に就任 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
      ジョミー 本当はジョミーはクローンではない(タイプイエロー

   

 今にも泣きそうな顔のソルジャーズのジョミーを見て、僕は彼が愛おしくてたまらなくなっていた。
 ここまで連れてきたのに、君は僕の甘言に乗らないね…。
 やり難いよ。
 元が僕と同じ人間だからか?思考が似ているからなのか…。
 僕は彼から見えないように小さく微笑んだ。 
「僕は気が付いていた。君はブルーよりも人間を恨み、ミュウを恨んでいる。感情がすぐに表に出る彼の方が怒っていると思われがちだけど、実際は君の方が深くて重い。惑星ノアを救った時も、メサイアでもそうだった。スメールの子供たちと交流して素直に受け入れたのはブルーだ。彼は実験体だからかどこか希薄な部分がある。そうだな…彼はいろいろなしがらみを切って進める。メギドの中で僕たちミュウの方を選んだのも彼だろう?人間の君はそんな風に簡単にはいかない。出来ないんだ。…恨みや思いが消えない」
「僕がミュウを受け入れて喜んでいると演技をしていたと?」
「演技?そうか…演技だったと…。そうだね。演技じゃなくて、本当に受け入れていた部分はあっただろう。けれど、自分の運命を作った僕を、君をそこへと連れて行った人類を許してはいなかった。君が第三勢力の海賊と繋がりを持ったのも全てを壊してしまいたいと思ったからだろう?」
「!」
「だが、それも結局は出来ずに自分で自分を罰した…」
「ち、違います」
「違わない。君は本当に人間だな…」
「……」
「流されては迷い…、戸惑って悩み…傷つきやすくて脆いのに強い。殺されても生き延びようとする命。人は本当に強い。僕は君を羨ましく思うよ。だから、もっと自由になって世界を見てごらん。そして君なりの答えを見つけるんだ。君が人類やミュウを許せる何かを捜すんだ」
「僕には何も見つけ出せません」
「どうしてそう思うんだ?」
「それは、僕が僕だからです…」
「君が?何だと言うんだ?」
「皆を騙し続けていたから…僕は許されないし、許しもない」」
 そう言って彼は自分の両手で両腕を抱えた。
「そうだな」
 その答えに彼の体が小さく震えた。
「……」
「そう、では「楔」にはならないのか?」
 ふわりとジョミーが宙に浮いた。
 シュルシュルという衣擦れの音がして、天井から布が降りてくる。一つ、また一つと、布が増えていく、それは心の防壁が増えるという事だった。
「ジョミー?」
 そして、どこからか声がした。
「君の弱点と僕の弱点は同じ…」
 それは、ブルー。
 言葉ではなく心に響いた。
「じゃあさ。何故、次は僕を嫌だとか怖いと思うのかを教えてくれる?」
「…あ…それは、力が強いから…」
「今では、ブルーやトォニィのが強いじゃないか」
「好きだからです。そして、悔しいから…」
「良い答えだね。じゃあさ。僕らがブルーを取り合っても君は僕を好きでいられる?」
「ええ!?」
「…出来ないよね?普通ではいられない。それで良いんだ」
「いえ、たとえ、そうなっても僕は…」
「人類を恨みに思うならその気持ちをキースに向ければいい。ミュウを恨むならそれは僕に向ければ良い。それが出来ないって言うなら…」
「ジョミー」ふいにどこかから、ブルーの声がした。
 目の前には金色の髪と青い瞳のクローンのブルーが居た。その横にはジョミーが立っていた。
 ジョミーはブルーの肩と顔に手を伸ばして、少し背伸びをして、目を閉じる。
 二人の唇が徐々に近づく…。
「ダメ。嫌だ」ソルジャーズのジョミーが叫んだ。
 ブルーとジョミーはそこで止まった。
「もう少し、強くなって自信を持つんだ。でなければ、彼は僕がもらうよ」
「…嫌だ」
「本体であろうと、クローンだろうと、ブルーの遺伝子には僕を探し求めるようにインプットされている。それは絶対的な僕からの支配だ。彼の意思だけでは太刀打ち出来ない。僕が彼を拒否しない限り、ブルーは僕を追い続けるだろう」
「知っています」
「僕に似ていると言うだけのただの人間の君には、どう足掻いても分が悪いね」
「知っています」
「それでも?」
「それでも」
「君はもう十分強いのかもしれないね」
 答えはもう君の中にある。進んでごらん自分の足で、その意思で。
 もう誰も君を束縛しない。
 大丈夫だから、前を向いて進んでごらん。
 僕はここに、ここに居る。

 世界が広がる 安心して、まだまだ広げていけるから。




  惑星アルテミシア クローンのブルーとの邂逅後
 僕の記憶はなんだかまったりとした感じでスッキリとしなかったが、それでも次へと向かうのに支障はなかった。
 最近は前よりもゆっくりと時が流れている気がする。
 それは、僕の「記憶」が有る無しに関わらず、時を大切に思うようになったからかもしれない。
 僕はいつも何かに追われていた。
 それは、ソルジャー・シンだった時も、ジュピターになった時も、何かを追い探し求め、何かがずっとその先へその先へと僕の背中を押していた。
 「死」というものを感じたあの時も同じだった。
 簡単な安らぎが僕を覆いつくし、眠りたいと願った時も、それでもまだ何かに追われていた。
 まだ「人類の目覚めはこない」そう思って僕は何故?どうして?とそればかりを嘆いていた。
 でも、気がついたんだ。
 彼らはもうとっくに「目覚めている」静かにゆっくりと目を開いていたんだ。
 僕は僕の周りしか見えずにそれに気がつかなかっただけだ。
 もう、僕は…何も心配をしなくていい。
 次を追う準備が出来たのかもしれない。
 
 あの後で聞いた。クローンのブルーの願いは自分が死んだ後で、彼がもし願ってくれたのなら、同じ場所に埋葬して欲しいとの事だった。
「ジョミーがあなたのクローンでもなく、タイプブルーでも無いのに、ただ仲間が欲しくてそうしてきたのは自分だから、あの事件は僕にこそ非がある。僕が勝手に死のうとしたジョミーに怒ったり恨みに思ったりするのは見当違いなんです。あなたが僕の願いを叶えてくれるなら、お願いがあります。この先、どう長く生きても自分が先に逝くから…その時に寂しいのは嫌だと思ってしまったんです。でも、彼が死んだ時、僕の隣なんて嫌かもしれない。それは彼の意思次第だから、だから、お願いにも何にもならないかもしれないけれど、叶えられないかもしれないけど、僕はそれを願ってしまうんです。だけどもう、寂しいのは嫌なんだ…」
 その願いは、僕の心を締め付けた。
 僕はブルーをあの寂しい場所に置き去りにしている。何もなく、僕が作った氷が閉じ込めた悲しみだけの世界に。
「ブルー。わかった。彼の意思を尊重する。君の意思は必ず伝える。だけど、似ているね。これは前に皆と月に行った時に考えたんだけど、僕は月でオベリスクのようになったあの氷ごとブルーを地球へ運ぼうと思う。そして、僕が死んだらそこに埋葬してもらえたらなと思っていたんだ。だから、地球で良いなら…君もそこにと…」
「…はい…」
 と、泣きながらブルーはうなずいた。

 僕の同級生のスウェナはまだまだ若々しいが、レティシアが昨年子供を産んだので「おばあちゃん」になってしまったわ。と言っていた。
 そして、そういう話の最後には決まって「ジョミーはいいわね」と続く。
 僕は一度自分を殺し戻った。
「肉体年齢は二十歳でも…僕は僕だよ。君と同じだ」
 彼女も僕がクローンで、そう永くないのは知っている。
 それは、僕だけではなく、同じクローンのブルーも、実験体として生まれたキースも同じだった。
 そして、僕ら自身で子孫は残せない。

 後、何年生きていられるのかわからないけれど
 僕らはそれまで懸命に生きるんだ。
 それしか出来ない。
 でも、それで良いんだ。

 人は生き続けるいつもいつでも、営みが続いてゆく。

 僕らはそれを見つめ続ける。

 それが僕ら「タイプブルー」の生きる道。











「では、これからは、君の為に生きようかな」













  「伝えたい言葉」    終






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