君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
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『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」二十話・閑話

2011-11-12 02:11:01 | 『君がいる幸せ』(本編)三章「星の祈り」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
木星軌道上の衛星都市メティス 二人がいた建物
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 三章「星の祈り」

  二十話 現在 
 後日談  
 子供だったのが無理やりに大人になったような…とは、当たっているのかもしれない。
 誰にでも子供時代はある。
 けれど、今の大人達に子供時代の記憶はない。
 子供時代が無いような人間達を相手していれば、僕はかなり不安定なモノに見えると思う。
 SD体制は記憶を消し、都合のいいようにして何百年もやってきた。
 それを人間は不満を持たずに受け入れてきた。
 それを壊したのが僕ら。
 人の記憶は大切だが問題はある。
 それがあると動けないようになってしまう場合もある。
 だけど、たとえどんな事がその人に起きたとしても、人にはそれを乗り越えられる力があると僕は信じている。  思っているより人は強い。

 記憶を見せる以外に出来る事は多い。
 その人の記憶から映像を取り出し見せる事も出来る。
 それが人物であるならある程度の情報があればその人を思考の中で映像を再現し、会話をさせることもできる。

 キースに今、会いたい人は?と聞いたら、
「ジョナ・マツカ」
 と答えたので、僕は情報を集めキース自身からの記憶も聞いて彼を再現してみる事にした。
 トォニィが殺した彼を再現させるのは僕にも辛いものだったが、キースの方も、心理的な波形があまりに微妙だったので、僕自身は再現させるだけで見ないようにして、彼に会わせた。
 マツカとキースがどんな会話をしていたかは僕は知らない。
 何が聞きたくて会ったのか。
 何が言いたくてそうしたのか、僕にはわからなかった。
 興味があると言えば、ある。
 自分がやった事なので、自分をたどれば見えると思うが、それをする気はなかった。

 何日かしてからキースが聞いてきた。
「お前が今、会いたい人は誰だ?」
「ブルーと答えると思っているよね?」と聞いてみると、
「ああ。そうだろう?」と返ってきた。
「別にいないよ」
「いないのか?」不思議そうに言うキースが言った。
「んー、今、会いたい人には、会ってるから。他はいないんだ」 
 にっこりと笑いながらジョミーが答えた。
 一瞬驚くキース。
 僕はその顔が見れたから蟠っていたものが流されていく気がした。
「言うようになったな…」
「自覚したからね」
「何をだ」
「それ、言わせるんだ…」
「お前が言うのを聞きたい」
 我がままだねと思いつつ。
「君を愛している。僕には君が必要だと自覚したんだ」

「今すぐ会いたくなった」
 キースは笑った。
「来れば?僕が行ったみたいに」
 と笑うジョミー。
「今度いつ会えるか?なんて思う日が来るとは思ってもみなかった」
「僕も」
 これが交信でなければ僕はキースに抱きついていたのでは?と思う程だ。
 自分でも感情が浮ついているのがわかる。
 こんな日が来るとは思っていなかった。

 消えたモニターの前に、ゆっくりと彼の幻影が現れる。
 僕に手を延ばして、僕の襟を掴んで引き寄せる。
 唇が触れる程に近づく…。
「お前は、もう離れていたくないと思う事は無いのか?」
 ごめん。
 キース…。
「僕にはそれは望んじゃいけない事なんだ」
「……」
 今だけ…、
 今、愛している。
 それじゃいけない?
 だけど、 
 先の事はそうなってみないとわからない。
 その時その時を生きた先が未来なんだ。
 僕は…望み願う。
 この先がある事を。
 ああ…。
 今は前だけを見て進もう。



   「星の祈り」 終


 閑話 キース
 それは、メティスで暮らしていた頃に、精神感応をしたいと、ジョミーが言ってきた。
 また地球が見たいのか?と聞くとそれとは違うと言う。
 僕の記憶を君に見せたい。と言うのだ。

 僕が持ってる十四歳までの記憶を君にあげたいんだ。
 パパやママ そしてサムのきっと君にもこれは必要だと思う。
 記憶がないのは寂しいことだから、
 せめて…僕には君にしてあげられる事が何もないから…。

 何も無いと思うのか?あるだろう?

 そうかな?
 でもね。今は記憶を見せたい。
 十四年分のすべてを渡すわけじゃないからすぐだし、怖くないよ。
 持ってて欲しいんだ。君に。
 人間らしく生きると決めたのなら持ってた方がいいと思うんだ。
 SD体制で皆が幼い記憶を無くしているけれど、無くしてしまったのと、無かったのとは全然違うと思うから…。
 記憶を無くしていない僕には、本当の辛さはわからないけれど…、
 でも、この記憶が無かったら…と思うと…。
 僕は僕でいられたかどうかわからない。

 だから、
 コレはきっととても大切なモノなんだと思う。
 持っていて欲しいんだ。
 君にも。

 キース
 あげるよ。君に僕のこの暖かい記憶を…。

「ねぇ、暖かい?」



 閑話 トォニィ
 ねぇ、知ってた?暖かいんだ。

 何が暖かい?

 グランパがいるとシャングリラは暖かいんだよ。知ってた?

 それはね、きっと。
 君が安心していられる場所だから、家に誰もいないと寂しいよね?
 自分の家なのに、そう思うだろ?
 そこに誰か居ると安心するよね?
 それが「暖かい」んだよ
 親がいるだけで子供は安心して眠れるんだ。
 子供が安心して眠れる場所を与えてあげるのが親の仕事。
 それが僕達ソルジャーの役目。
 仲間たちが安心して暮らせるように。
 外で親鳥が戦い傷つき帰って来ても、そこに子供が笑顔で待っていてくれたら…。
 どこでも何度でも立ち向かえるんだ。
 僕達はそうならなきゃいけない。
 君は大人になってゆく。
 僕が君にしてあげられる事はもう少ないだろう。
 だから、
 今は、ここで…、眠っていいからね。
 僕の隣で眠って。

「ねぇ、暖かい?」



 閑話 ジョミー
 やってきた事の全てが正義だったなんて思わない。
 いい事だけを選んで生きていける訳じゃない事も知っている。
 したくない事もしたし、しなきゃならない事から逃げもした。
 理不尽さに泣いた日も、ただ力だけを揮った日も、諦めてしまった日も、
 でも僕たちは、それでも進まないといけないんだ。
 キースに十四歳までの記憶を渡した時、思い出した。
 僕はブルーにも記憶を渡している事を…。

 貴方は眠っていて、受け取ってくれたかもわからなかったけれど…。
 記憶がないままで、ずっといるのが辛い事だろうと思ったから…、
 だけど、あの頃の僕はまだ未熟で、不慣れで。
 十四歳までの記憶をちゃんと選んで送れていたかがよくわからなかった。
 ありとあらゆる事まで見せてしまっていたんじゃないだろうかと…。
 後で顔から火が出そうな程になったっけ。
 あれもきっと貴方は笑って許してくれるだろう…。

「うん、そうだね暖かいね」って笑ってくれる…。




  終



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