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「自然エネルギーが生み出す地域の雇用」(大友詔雄 編著)を読んだ(K)

2012-07-11 | 事務局のつぶやき・研究所では
 ようやく「自然エネルギーが生み出す地域の雇用」(大友詔雄 編著)を読むことができた。ドイツ・オーストリア・デンマークそして北海道の4つの町で取り組まれている自然エネルギーの利活用ですすむ産業振興と地域づくりの実践例が紹介されている。自然エネルギーの技術的到達点も触れられている。自然エネルギーは各地にあまねくあり、それでいて地域の自然特性で現れ方が違う。自然エネルギーは、小水力であったり、バイオマスであったり、太陽光でも、太陽熱でも小規模分散的に存在している。従って、そのもっとも効率的な活用は画一的でなく地域独特の方式とならざるを得ない。ここに大型プラント以外、メンテナンス、管理運転には大企業が入り込む余地はない。

 木材の自由化によって国産材が成り立たなくなっていたが、今は原油高騰で木質チップなどバイオマスがコスト面でも有利になった。

 自然エネルギーを普及させれば人間らしい暮らしができる社会になるのかというと、そうはならない、むしろ逆の方向に向くこともある。
 大量に発生するごみ処理、石油への依存からくる価格高騰や環境ホルモン問題、原発依存、農村の疲弊と都市への集中、これらは日本が加工貿易で国を豊かにしようとしてきたことが原因と指摘している。そして、これを推し進めた力は、人間の安全や暮らしよりも効率と利潤を優先させた社会にあった。まずは自分たちの社会がどんなひずみを持っているのか、徹底的に考えること。たとえ長い時間がかかっても、新しい価値観の醸成が必要なのです、としている。

 こうしたものの考え方や、スウェーデンの原発は高くつくという現実的計算に基づく判断、レスターブラウンの新エネルギーの紹介などにも及ぶ。

 放射能汚染問題についても、薄めて拡散するのではなく、吸収効率のいい植物を汚染地区の田畑で栽培し、海洋汚染の魚介類と一緒にバイオガス化し、残った消化液や残渣は太陽光で蒸発・濃縮して減容し、放射性廃棄物として貯蔵管理することを提案している。

 そして、すべてが町内の雇用創出と所得の確保、町の収入増をもたらすよう検討される。なぜ、自然エネルギーとまちづくりが大切なのか。あとがきで著者は次のように述べている。


 思い返せば30数年前、北海道泊原発の建設に反対する学習会が終わった時に、最後まで反対の意思を持ちながら「容認」という苦渋の選択をした1人の老漁師が、30代半ばに差し掛かったばかりの私に、涙ながらに語った、「原発は危険なものだということはよくわかっているけれど、それを拒否したら自分たちの未来は今のまま貧しいだけだ」、という言葉が、昨日のことのように胸を突く。その時の「地域を豊かにしなければ原発は止められない」という思いが、今日までの35年間の私の支えとなった。



 大飯町も福井県もこの老漁師と同じ思いかもしれない。この本で紹介されている北海道の町は困難な中でも、まちづくりに挑戦している。5月に訪問した葛巻町も住田町も困難な中から今がある。自分のまちが今までまちであったのだから何かがあるに違いない。エネルギー発見ツアーをはじめ、もう一度見直してみたい。

地域にどんなエネルギーがどのくらいあるかを調査することは、小さな自治体にとって負担を考えれば難しい。そこで、国は「地域新エネルギー策定等事業」を作り、新エネルギー全般の調査を100%補助してきた。事業を思いつきや感覚で行うのは危険であり、とてもありがたい制度でこれがなければ現在のような低炭素社会への取り組みがなかったかもしれない。現在この制度がなくなったことは大変残念であると、下川町職員はこの本の中で言っている。政府も原発再稼働に精力を注ぐ前に、この1年以上、新エネルギー転換への施策にどれだけ力を注いできたのか。国の姿勢も見直さなければならない。

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