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介護報酬2.27%引き下げの影響についての事業者からの聞き取り調査 その2

2015-05-06 | 福祉
内部留保が可能だったわけ
 2000年4月1日から施行された介護保険制度では、それまで介護度に応じて国の措置費として計上されていた経費が4%削減されると言われた。介護保険施行以前は介護職員も専門職として扱われボーナスも5ヶ月以上、5.2月という時期もあった。介護福祉士という専門職がいることが施設のステータスになって、施設の売りになっていた。
 2000年4月から介護保険制度が施行されて職員のボーナスが3~2.5か月分に減らされた。さらに、介護には無資格者もできるとなって給料はさらに下がり、離職率も高くなり、介護力が下がった。
 施設の側は給料を引き下げたために、お金が余ったので、国はさらに介護報酬を4%下げた。それでもまだ余裕があるというので今回の引き下げとなった。

今回の介護報酬引き下げの影響
 施設の内部留保があるといわれて介護報酬が2.27%引き下げられた。たしかに、これまでは数年で4~5000万円貯められた。ストックが多くなると次の特養の建設のために土地の確保に乗り出す。それくらいメリットがあったので、介護に関係のない業種の人も介護事業に乗り出してきていた。
 今回の引き下げによって年間で約2000万円ほど減る。事業者の中にはうまみがないからやめようかという所もある。
 長くやってきたところはそれなりにストックがあるが、そうでないところはメンテなどでも多額の費用がかかり大変だ。運営的には例えば電力設定も安いメニューを使うなど工夫をして、赤字にはならない。だが、大事なことは、もっとしたい他のサービスができなくなったことだ。

介護職員の給料は本当に上がるか
 これまで介護職員の給料を引き上げるために、処遇改善加算として介護報酬基本サービス費+加算・減算に2.5%分プラスされていた。その総額の10%が利用者の負担だった。
 その処遇改善加算が、サービスの質に応じて3.3~5.9%に増える。金額にすると10000~12000円になる。したがって、利用者負担も増えることになるが、1日あたりの基本サービス費が減額になるので利用者負担は、ほぼ同じままということになる。従って、介護報酬の引き下げでも給料は必ず上がる。

給料改善による職員の定着度
 昔は仕事に対する自覚があったが技術はなかった。今は離職率は他の会社と同じようだが、職場にとどまり続ける人が少なくなった。定着の要素には人間関係、達成感、つまり仕事へのモチベーションが大きいと思う。給料が30万円だからとどまってくれるとは限らない。しかし、資格を取ってステップアップした職員には、トータルで何年という経験が必要ということもあり、その時には30万円、40万円とあげたい。しかし、これは国が何とかしてくれなければ実現できない。
 自治体が介護職員の給料に補助をしてくれると、もっと定着がよくなると思うのでやってほしい。

懇談でわかったこと
 以上が施設長の説明でした。内部留保が介護職員の給料の大幅な減額によって蓄積されてきたこと、それを元に戻すためには、今回の処遇改善加算だけでは足りず、国が何とかしなければできないことがわかりました(下の「参考」を参照)。職員の給与の大幅な減額の上に支えられてきている介護サービスの実態はまだまだ改善されません。結婚して家庭を持っても働き続けられるようになるにはほど遠い状況です。
 介護は経験によって質も向上するというサービスです。介護の質を確保するためにも、職員の待遇改善が必要です。命を守るために国が財源をキチンと保障すべきです。

 また、今回の介護報酬削減によって、サービスが充実できなくなったことも明らかになりましたが、その具体的な内容についてもっと知る必要があります。今後の2園との懇談の中でさらに具体的に捉えていき、自治体がすべきことを明らかにしていきたいと思います。



介護報酬2.27%引き下げの影響についての事業者からの聞き取り調査 その1

2015-05-06 | 福祉
 少し遅くなりましたが、介護報酬2.27%引き下げの影響についての事業者からの聞き取り調査の概要を、住民と自治埼玉版5月号の記事を転載します。

介護報酬2.27%削減で介護はどうなる
杉戸町のまちづくりを考える会 木村芳裕


 3月18日、杉戸町のまちづくりを考える会はこれまで、介護保険について学習をしてきましたが、実態を見ないと制度改訂の具体的な問題点が見えないと杉戸町にある民間の特養施設に懇談を申し入れてきました。開園して2年目のS園はぜひ、話を聞いてもらいたいとの返事で懇談が実現し、会はS園を訪ねました。以下は園が話した要旨です。

ユニット型特別養護老人ホームを訪ねて
 ユニットは10室単位で10ユニットあり、現在は90人台後半の入居者がいる。職員は1ユニット24時間、5人配置で、入居者のその人らしさを保障する家族的介護をめざし、いつ起きても同じ顔があるようにしている。しかし、現実には2割の人とは馬が合わない。その時は、それを行動で感じて職員には教育を含めて年に何回か異動がある。
*スウェーデンでは1グループ10人、6グループで65人(うちフルタイム59人)の職員がいました。

待機者の現状 2025年は介護のピーク、介護職員は30万人の不足予測
 全国では入居待機者は50万人いるといわれている。2025年には75歳以上がピークに達し、介護職員はあと100万人必要だが、70万人は確保できるが、30万人は不足になると予測されている。
 待機者については需要と供給にミスマッチがある。地域包括エリアというのができたが、これは入居者の30分圏内に医療、特養、終の施設が必要とされる。北関東などでは、多くの施設の建設計画があり、事業者にとっては利用者の確保が困難になる。一方、都内では逆に高齢化で多くの施設が必要になるが、用地の確保が難しく需要に応じた施設建設が困難な状況にある。

介護1,2以下は在宅、サコージュ、や有料老人ホームに
 制度改訂で介護度3以上でないと入居できない。例外的に、認知症などで家庭崩壊が起きる場合には介護度2でも入所できる。介護度判定は家庭環境によっても異なり、どれほど介護が必要かということで決まる。
 特養施設は、入居者本人が有料施設のように選ぶのではなく、入らざるを得ない人が入るので、選べない。S園では絶望の中で生涯を送るのではなく自分らしく送られることを目指している。医療が必要な人については、ナースは24時間いないが、医療機関と連携をとっている。
 利用料は、ユニット型で月15万円以上(居住費やおむつ代も含む)。居住費は800円~2000円/日かかる。従来型は10万円くらい。いずれにしても介護度と所得に応じて決まってくる。
 この施設の入居費用は最も高い人で15~6万円。この違いは提要されるサービスの違いによるものではなく、補足給付による負担の違い、すなわち所得に応じた居住費・食費の負担の違いによって出てきたもので、段階的になっています。

制度改訂に伴って 待機者は有料ホームへの流れに
 今度、要介護1、2は特養を利用できないことになり、その場合、軽度者は介護施設への通所あるいは自宅で対応することになる。
 サコージュ(サービスつき高齢者住宅)は60万人分ある。主に要介護1の人が入居している。基本的には賃貸住宅で2~3階建てが多い。条件は夜間に管理人がいればいいというだけ。サービスは望めば24時間介護訪問部隊を抱えているが介護力は特養よりも落ちる。入居料は20万~30万円/月、あるいはそれ以上のところもある。
 一方、要介護2を対象とする有料老人ホームでも入居費10万円を切るところもある。

つづく