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金子勝氏(慶応大学)の講演 アベノミクス その3 埼玉県中小商工業交流・研究集会より(K)

2013-04-24 | アベノミクス
金子勝氏の講演 その3 2013.4.21

TPP 今の若者の時代には、低所得者は病院に行けない、食品は農薬のポストハーベスト、遺伝子組み換えに
 TPPは4月12日に合意した。アメリカが言ったことが通った。アメリカの新聞と日本の新聞の報道が違う。合意文書では「日本の敏感な問題」という言葉しか入っていない。食料という言葉はない。
 一方、ジェネリック医薬品への影響*、保険が入れる分野を増やすことが入っている。アメリカでは医療費は高い。薬や医療機器が高額なため。高度医療は金がかかる仕組みになっている。日本もTTPを導入すると、金持ちは都市へ行ってホテルコースに、金のない人は民宿コースにという形に将来はなる。40代より若い人たちは、医療は受けられない、病院はないという時代になる。

 農業もアメリカ農業は200ha、ニュージーランドは3000haという広さなので、日本は平均1.8haなので、到底比較にならない。ISD条項では、メキシコ、カナダはアメリカ企業に訴えられて負けている。200ha農業では農薬を使うそれに合わせたポストハーベストなど日本より低いアメリカの安全基準、遺伝子組み換えが条件になる。
 それで、工業製品の輸出というが株価の操作で景気を上げたために国際競争力が落ちている。半導体では韓国のサムソンにコスト削減で追い上げられていて、スーパーコンピューターではアメリカに負けている。日本の技術は物を突き合わせて作るのが得意だったが、コンピューターの基盤になって力を発揮できなくなった。

これからの産業
 スーパーコンピューターは同じものを大量に作るのには適している。大量生産、大量販売はショッピングモールで小売店を全部食い尽くす。
 一方、コンビニは売れている。ヨーカ堂よりもセブンイレブンの方が売り上げが多い。在庫の必要がない。小規模分散しているのでリスクが少ない。これを身近でやっているのが直売所。商店街も専門店化して、それをネットでつないで売る。コンピューターでネットワーク化すると予測可能で、商品も安定し、リスクが少なくなる。
 アメリカでは再生可能エネルギーはネットワーク化が進んでいる。それは軍が主導している。藻から油をとることも研究している。核も石油も不安があると考えているから。再生可能エネルギーで戦争をする、「環境にやさしい殺りく兵器」になっている。一個一個では自立できないがまとまるとできる。将棋型から囲碁型へ。いつまでも原発に依存していると経済は遅れる。

原発問題
 電力の需給検討委員会の供給量計算については再生可能エネルギーは不安定だからと算入しなかった。日本原電は東海と敦賀と再処理工場を持っているが、そのどれもが動いていない。再処理工場は4兆円の赤字を出している。しかし、電力会社がその株に出資しているので、お金をつぎ込んでいる。福島事故で東電に政府などから3兆円の支出がされているが、事故処理に使っているのは1兆何千億円だけ。あとは日本原電などへの支出に充てるなど自己資本化に使っている。
 原発止めると使用済み燃料の冷却に1兆数千億円かかる。廃炉の費用の2兆数千億円と合わせて4.4兆円かかる。ゾンビ企業を救うために原発動かす。東電は解体しかない。株をタダにし、廃炉専門の新会社をつくり、そのために株を発行する。
 再処理に6兆円の税金をかけている。福島のために使え。
 六ケ所も98%が埋まっている。
 発送電を分離して一気に変える。福祉も農業も小規模・分散し、ネットワーク化する。環境によく、安全で地域民主型の社会になる。

以上が、金子勝氏の講演の要旨です


情報 EUとインドの自由貿易協定におけるジェネリック医薬品(補足K)
* ジェネリック医薬品についてTPPではどんなことが話し合われているか。EUとインドとの自由貿易協定について、次の記述があった。これは日本のTPPの実態を表しているのではないかと思うので、紹介しておきます。
 「EUがインドに迫っていた自由貿易協定によって、ブラジル、タイ、南アフリカ、などの発展途上国に手ごろな価格で入手しやすくなっていたHIVへの薬の供給・開発の薬局としてのインドの役割が終わりとなりそうです」と報道していました。(TIMES OF INDIA WEB版2013年3月21日付)

 国境なき医師団は、次のように言っています。

 「インドのジェネリック製薬会社が生産している医薬品は、世界のなかでも最も安価な部類に入ります。インドは2005年まで、医薬品に関する特許を認めていませんでした。そのため、安価で質の高いジェネリック薬の製造・供給の鍵を握る国となりました。」
 「インドは途上国で使われているジェネリック薬の大半を供給しており、“途上国の薬局”と呼ばれています。しかし、2005年に医薬品にも特許を認める法改正を行った結果、供給体制に影響が表れ始めています。インドもWTOの加盟国として、貿易の国際ルールに従う必要があります。その一つが「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」です。この協定に基づき、WTO加盟国は医薬品の特許を認める義務を負っています。
 そこで、インドは2005年に特許法を改定し、医薬品にも特許制度を適用しました。その結果、インドで特許が認められた医薬品については、ジェネリック薬を製造・販売できなくなりました。
 この改定は、インド製のジェネリック薬が欠かせない人びとに大きな影響を与え始めています。」(特許制度を利用したジェネリック薬の排除にストップ!(2013年4月1日現在))

 文中の図は私がそれぞれの出典から引用しました。
アベノミクスがよくわかる、そして私たちもアホにされてしまうメディアの洪水に毎日さらされていることがわかる、さすが金子勝の講演でした。埼玉民商をはじめ実行委員会の皆さん、ありがとうございました。

金子勝氏(慶応大学)の講演 アベノミクス その2 埼玉県中小商工業交流・研究集会より(K)

2013-04-24 | アベノミクス
2013年4月21日の金子勝氏の講演の続きです

3本の矢は3本の失
 3本の矢ではなく、3本の失。失ったものが3つ、と3つの失敗をいう。
 1つ目が1990年からの金融緩和。2つ目が借金がGDPの2倍(この水準は戦時中のみ)で誰も引き受けないから国債が金利高に。3つ目が規制緩和。「解雇規制の規制緩和」*って何のこと。それでも一人歩きする。ワンフレーズポリティックス(one phrase politics ワンフレーズで政治を語る)を多用し、考えない人を作っている。
 *解雇規制の緩和 政府の規制改革会議で議論されている。業務や職場、労働時間を限定した「ジョブ型正社員」制度を導入すること。社員の多様なワークライフバランス(仕事と生活の調和)を図ると同時に、雇用の際にこれらの条件を明確にすることで、景気悪化で、事業撤退したり、工場を閉鎖する場合、経営側が解雇などの訴訟リスクを減らすこともできるとしている(補足k)

考えない国民を作る
 劇場型の演出。小泉の記者会見の時はバックが必ず赤。劇場のセッティング。そして、自分の直接関係にない人をたたくと、改革しているように映る。生活保護をたたくと改革、橋下が組合をたたくと改革。
大人の学力調査をした方がいい。96年に先進国で学力調査をしたことがあるが、最下位だった。その大人たちが学生だったときの学力調査は1番だった。大人になるとバカになる。
 何か突出したことをやると多くがたたかれる。しかし、アメリカに追随して失敗してもOK。イラク戦争に賛成した大臣は大学の先生におさまった。しかし、アメリカに反対した人が失敗すると完全に失業する。本当は企業が衰退しているが、だれも責任を取らない。
 今の財界人は1955年型の考え。経団連などはサラリーマン重役の互助会になっている。経団連幹部の企業は皆、経営が大変なところが多い。大企業は失敗しても国が救ってくれる。

デフレの始まり
 デフレの始まりは、労働者派遣法。単価が叩かれると、中小企業は生き残るために非正規も使う。すると、どんどん買う人がいなくなる。一人ひとりにとっては合理的だが全部がやると悪くなる。合成の誤謬という。こういう風にならないようにするのが国の政治。
 今回、景気が良くなって賃金が上がったといわれているが、春闘で上がったのは日本で50億円だけ。ほとんどの人は、朝昼、ハンバーガー、夜は牛丼(検査の少ないアメリカ牛も使われている。狂牛病の可能性もある)、そしてユニクロ。賃金が7万円になるまで我慢しろ。
 企業が悪くなっていることは隠して、隠してどんどん悪くなる。悪くなっている原因究明はなく総括もない。無責任で、本当のことが隠され、産業競争力は落ちている。
 外国人投資家は株の半分をもっていて、株を持っているアメリカの投資家は株を買って値を上げている。日本の投資家は後で買い合はじめた。日本政府はアメリカに受けのいいことをやって株価を上げている。郵政民営化や、イラク戦争支持。スペインやイタリアでは50万人、100万人の反対デモがあったが、日本では3~5万人だった。

つづく

金子勝氏(慶応大学)の講演 アベノミクスのからくりと対案 埼玉県中小商工業交流・研究集会より(K)

2013-04-24 | アベノミクス
 4月21日、さいたま市で埼玉県中小商工業交流・研究集会があり、記念講演で慶応大学の金子勝氏が講演をした。(レジメなし、録音禁止だったのでタイトル、内容の文責はすべて筆者Kにあります。)

アベノミクスは人によってあほノミクスというという人がいる

今日の話
 アベノミクスのからくりの説明と「集中メインフレーム」に対し「小規模分散ネットワークで対抗する。無理なくコンピューターも取り込んでいく」が結論、とまず話した。
 今日は中小企業の交流会だが、私の父親も自動車の整備機械を売る個人事業者だった。金融機関は信用金庫を相手にしていた。手形もらって金を借りて作り、振り落とされて成り立ってきた。不渡りでダメになり、信金に泣きつくということもやってきた。ところが竹中でダメになった。不良債権になる恐れのあるところには貸さないとなって、借りられなくなり仕事ができなくなった。(モノづくり、産業育成のために貸すのではなく、返せない人には貸さない、利息を払えない人には貸さない、という利息稼ぎのための金融になった、ということ)
 よくなると思っている人もいるが冷静に見るといつの間にか、「ものづくり」がバカ者扱いになり、金融で稼ぐ世の中になった。政治がさびしくなった。

政治がさびしくなったわけ・・・内閣の支持率は株価とともに
 内閣の支持率は株価とともに変動するようになった。
(そして、次のような図を描いた)

 株価が景気判断の尺度になった。
 1993年、国際会計基準が変わった。簿価(株価)から時価へ。簿価とは、額面100万円が300万円になっても100万円の計算。時価は、取引価格が300万になると300万となり、200万円の増収とみなされる。本業が不良でも株価が上がれば、増益となり黒字になることも多い。実体経済が景気の判断だったが、金融が景気の判断になった。景気が良くなっていると見えるためには株価が上がらなければならない。1993年は失われた30年の始まりである。
*従来は収益と費用の差額を利益としていた「収益費用アプローチ」重視から、資産の負債の差額である純資産を利益と定義する「資産負債アプローチ重視」へ転換した。その結果、取得原価をベースとした資産・負債評価から将来キャッシュフローを重視した時価評価が取り入れられることになった。(補足K)


株価はなぜ上がる?
 株価が上がるためにはどうするか。論理は必要ない。上がると国民が思えば株は上がる。中身がないことに意味がある。理屈も根拠もない。
 テレビが煽る。テレビは印象で視聴率が変動する。難しいとチャンネルを回される。テレビは見る人が受け身。大人の学力が低下する*。ラジオは聞く方が聞こうと思っているので聞かれるので、少し難しくても聞かれる。本は読者が主人公。読もうと思う本を読むので読まれる。
 テレビを見ている人はたれ流しを受けている。ワーワー言うと刷り込まれる。理由も前提も要らない。印象操作が株価をつり上げる。株は根拠なく上がって、根拠なく落ちる。

*大人の学力について科学技術白書に次のグラフがある。子どもの学力は2位なのに大人の学力は22位。こんな異常は日本だけ。

この結果について科学技術白書は次のように解説している。
 第1-2-54図は、我が国と欧米等各国の大人の科学技術の基礎概念に対する理解度と併せて、子どもの理科・数学の学力を示したものである。これを見ると、一般的には、子どもの学力が高い国は大人の理解度も高く、子どもの学力が低い国は大人の理解度も低いという関係が見られるが、我が国については、国際的に最上位レベルにある子どもの学力と対照的に、大人の理解度は下位に位置しており、極めて特徴的である。


つづく(K)

ビルマの民主化運動を聞いて その3(K)

2013-04-17 | 事務局のつぶやき・研究所では
ビルマの人の話を聞きました  その3


在日ビルマ人への日本政府の対応
 日本のビルマ人は麻生政権時代難民の受入れによって法の保護を受けられるようになった。ビルマ政府の海外渡航は、政府に承認された留学、就労、観光でビザは発行されるが、就労の場合には政府に毎月1万円を支払うことになっている。しかし、支払った税金がみな、政府幹部の個人財産になると思うと支払いたくない。それを拒否するとパスポートの更新がされない。それでビルマに帰れない。また、帰ってもいつクーデターが起こるかわからないので帰りたくても帰れない。
 今、アウンサン・スー・チーさんが日本に来ているが、1週間の在日期間のうち、在日ビルマ人がスーチーさんに会えるのは1時間しか設定されていない。在日ビルマ人は日本に約1万人いるが。

ビルマの人たちは日本をどう見ているか
 ビルマの人たちの日本人に対する考え方は、基本的には親日です。しかし、日本軍の協力によるイギリスから独立の後、日本はビルマを属国にしたし、その強制に反対すると拷問など、とても酷いことをされた。これまでの軍政府による拷問は日本軍をまねたものです。しかし、ビルマの人は基本的には親日です。戦争当時のことは学校でも教えているがファシスト日本がしたこと、と教えている。日本はビルマに対し、きちんと戦時中の残忍な扱いを認め、二度と過ちを繰り返さないよう日本国民にも事実を知らせ引き継いでほしい。

ビルマと中国
 ビルマは多民族国家でインドやバングラディッシュからも人が入ってきている。インドからの移民は何世代前から続いているもので、ヒンズー教やイスラム教だが、ビルマの人との衝突は起こらなくなっている。いま、衝突が起こっているのは民主化したくない人が仕掛けている。
 ビルマには中国人が多い。人口5000万人に対して50万人がいる。島を中国軍に貸している。中国は政府に肩入れしている。
 中国の人が独自に軍を雇って自治州のように振る舞っている州もある。

ビルマとアメリカ
 北朝鮮とビルマの違いは、ビルマは一国でもやっているということ。気候は暖かく着るものの心配はなく食べるものもある。アメリカにとってもビルマはそんなに魅力的ではない。石油や貴重な資源があるわけではない。


話を聞いて思うこと
 アウンサン・スー・チーさんが来日できるのはこの一週間だけです。今、日本には約1万人のビルマ人がいる。民主化だ、新たな日本企業の進出だ、と思っている日本人も多いと思うけれども、民主化闘争の中で身の危険が迫り日本に来て暮らしている、いまだに母国の軍事政権があることによって帰りたくても帰れないビルマの人たちもいる(一部表現を修正しました)、そして目の前にいるという事実を私たちは知っているだろうか。
 「民主党時代、民主党は民主化陣営を支持し、スーチー寄りだった。民主党政権が呼んだから来たのかもしれない。自民党は政権寄りで麻生政権の時に麻生首相が来てもスーチーとは会わないでビジネスの話だけだった。」と話してくれた彼は言っていた。日本の企業の営利目的の経済進出が、民主化を願うビルマの人たち、そしていま日本で暮らすことを余儀なくされているビルマの人たちの希望をかなえることができるのだろうか。

ビルマの民主化運動を聞いて その2(K)

2013-04-17 | 事務局のつぶやき・研究所では
ここからは在日20年のビルマの人の話です。彼らはミャンマーではなくビルマと言っていました。

学生が中心の民主化運動
 軍政に対し学生を中心に、1998年3月、民主化運動の時、武器を持たないデモ隊に対して、軍隊に覚せい剤を使って正気ではない状態にして発砲させた、という噂もある。発砲によって多くのデモ隊が死んだ。流血の惨事は何度も繰り返された。しかし、国民の反対に抗しきれず9月に政府はデモに発砲しなくなって民政移管を宣言した。民衆の力が民主化を進めたかに見えた。
 しかし88年以降、社会は犯罪など物騒になった。そこでまた規制が厳しくなった。
 ビルマでは正月に水かけ祭りがある。前の年の悪いことを水で流すという意味で、午後5時まで行われる。5時以降は街の中に舞台ができて、ラップで政府批判など自由に言えたが、1988年以降政府批判ができなくなった。
 今思うと、物騒な社会になったのは軍政府のやらせではなかったのかと思う。

ビルマは民主化するか
 スーチーさんが政権につく可能性は、非常に小さい。政府のトップは軍人でなければならない、また国会は、国民から選挙で選ばれた議員ほかに25%は軍推薦枠があるというのが今のビルマの憲法で、その憲法は「民主化」した今でも変わっていない。軍がスーチーさんの配下になることを容認しないだろう。また、こうした憲法を変えることも難しい。

「今の民主化はなぜ始まったのか」という質問に
 今、政府は財政難になっている。原因は軍幹部が税金を私物化していること、また、「社会主義」ということで公務員が多いことによる。公務員の給料もほかの労働者よりも高い。幹部の贅沢は、例えば、立派な豪邸に住んだり、前の政府幹部の子どもはヨーロッパのサーカーチームを買おうとしたり、夫人が多くの宝石類を買ったりしているということ。こうした幹部の贅沢と多い公務員によって政府は財政難になっている。借金が多くなって、外部から資本を招き、税収を増やさないとやっていけない。そこで、アメリカなどの資本を呼び込むために民主化を始めている。
 スーチーさんの今回の訪日の背景には、ビルマ政府が「民主化」したことの証としてのことであり、その本音は日本の投資を期待してのこと。したがって、今の憲法を変える動きはない。

                                つづく