ようこそ埼玉自治体問題研究所へ!

埼玉県での地域やまちづくりに役立ててください。
いろいろな情報を発信しています。

地元に設備・技術の提供こそ本当の復興・脱原発への道 岩手の広域処理を考える(K)

2012-05-29 | がれき処理
見直しによる岩手県の変更は次の通りである。
「岩手県災害廃棄物処理詳細計画の改訂」では次のように発表している。

発生量の変更

注1)可燃物を選別した概ね20mm以下のもの
注2)概ね50mm以下で土砂分を含むもの

差が出た理由


 一方、2011年度の処理目標692200tに対し、処理できた量は514,300t(達成率74.3%)であった。
23年度目標を下回った要因
・津波災害廃棄物に対応する除塩や破砕選別の施設選定及び整備に時間を要したこと
・広域処理が放射性物質問題の影響を受けて停滞したこと

処分の実績
 コンクリートがらの建設資源化が進んだ
 太平洋セメントで全体の19.5%を処理

本当に必要な広域処理は1/10に
 こうした処理の結果、広域処理の依頼分は下の表のとおりです。

 不燃物の大幅増がなければ、むしろ広域処理依頼分は20万t減少であり、処理量は約37万tとなる(これまでの広域処理必要量は57万t)。
しかも、改正された計画では「大幅増の不燃物については、可能な限り県内処理、復興資材化等に努める」としているので、資源になる可能性も高い。
 次に大きな種類は「柱材・角材」の17.5万tである。これも、燃料やボード材などにリサイクルすべきものとされている。
 残る処理が必要なものは可燃物と漁具・漁網で計11.7万tである。

木くずは期間延長もできる
 木くずについては、「広域での活用も検討。これらの廃棄物については、再生利用の需要量(受け入れ可能量)等を踏まえた、時間をかけた処理の検討も必要。」(見直し)、「木くず、コンクリートくずで再生利用を予定しているもの:劣化、腐敗等が生じない期間で再生利用の需要を踏まえつつ適切な期間を設定」(マスタープラン)と期間を延長することも予定されている。

リサイクルは広域ではなく地元への設備、機械、技術の持ち込みこそ本当の復興に
 ここで、処理も復興を目指すものというならば、復興のためにこそ、地元に仕事を、が必要である。木くずや、コンクリートがら、については時間も限られていないので、地元で資源化することが望ましい。木くずについてはボイラーでの利用や発電の燃料にすることもできる。熱を使った発電も可能である。この施設の建設費については、仮設の焼却炉の建設費用や、広域への運搬費用を支出せずに振り向け、復興事業とすることもできる。将来、山の間伐材を燃料にした発電事業へとつなげることができれば、原発に替わるバイオマス発電になる。脱原発に大きく近づく。

 リサイクル産業も地域への仕事づくりである。しかも、数十万tという量であれば、相当期間就業の場となる。

 期間が限られているガレキでも大規模の施設をつくれば期間内に終わらせることもできる。不燃物とそれに混合している堆積物(泥)は、名取市のような振動スクリーンや大きく破砕する破砕機の使用によって、資源物化することができる。その利用も南三陸に見られる不燃物の造粒物へのリサイクルもできる。宮城県や岩手県内の処理方式の情報交換によって、最も適した設備を、そしてその多くの場合移動可能なので、短時間で設置できるだろう。
 地元でやることでこそ復興につながる。広域では地元に仕事も雇用も生まれない。設備を提供すること、技術指導をして、地元で仕事ができるようになることこそ、復興になる。(K)

ブロック処理で地域の力、発揮できず がれき処理石巻編

2012-05-26 | がれき処理
 石巻は東北で最も被害の大きかった自治体である。
 石巻市(いしのまきし)は、人口149,307人、面積555.78km²の宮城県で第二の市である。面積は埼玉のさいたま市を中心に北は鴻巣、西は川島町、川越市、和光など4市、県南の川口市までに匹敵する。石巻市の約616万t、東松島市の166万t、女川町の44万tの災害廃棄物が石巻市の雲雀野埠頭に集中する。
そして、最も県外への広域処理を希望しているのが東松島市、女川町を含む石巻ブロックである。

日和公園より第2仮置き場となった雲雀野埠頭を望む(正面奥)

 石巻のがれき置き場を案内してもらっとき、木材の山は15mほど高いのにいまだにまだ積み上げている状況だった。まだ分別されていないがれきの山があちこにある。

木材を中心にしたがれき

混合のままのがれき

 流された車の山もある。二次仮置き場になっている石巻港の雲雀野埠頭には分別されないままの大きな山がいくつもある。リサイクルは単質化することから始まる。混ぜればごみ、分ければ資源である。しかも、発生源に近いところで分けるほど、分別しやすい。

 がれきを大量に処理するために、300t/日処理できる大きな焼却炉がほぼ完成していた。広い敷地に300t/日の炉が5基並んでいる。5月中旬に1号機の火入れ式があり、8月には5基すべてが稼働するという。中古の焼却炉もある。
 宮城県環境生活部の災害廃棄物処理業務の概要によると、石巻ブロック(石巻市、東松島市、女川町)の災害廃棄物の発生量は846万t県全体の47%になるという。県内最大の発生量である。石巻市内でも638万t、これも自治体単位では最大である。

300t/日の処理能力の仮設焼却炉 こうした焼却炉が5基並んでいた

 すでに、震災から1年以上が経過しているにもかかわらず、焼却炉はようやく完成するという状況の中で、東松島市と女川町では、それぞれ46.7%、59.2%を一次仮置場で自力でリサイクル・売却する計画を策定し、実行に移している。その後、二次仮置場に持ち込み、委託企業が機械的に処理をすることになっている。石巻市は市が行うリサイクル・売却は9%だけである。それだけ混合のままのがれきが増え、リサイクルが進まないということである。県の処理業務の概要でも「石巻市の混合廃棄物量は約54%と他の市町村と比べ高い」とし、広域処理についても環境省は「石巻ブロックは混合状態の搬出もありうる」としている。
 それにしてもなぜ、こんなにも自力で取り組みが少ないのか。市内には24の一次仮置場があるが、選別するスペースがないという。しかし、二次仮置場のある雲雀野埠頭には余地がある。「市は委託企業の仕事がなくならないように旧市街の分別はさせない」とも言われている。スペースの工夫はできると思う。

 岩手県内の仮設焼却炉は2基だけ。仮設の2基も2012年2月、3月に本格稼働になっている。
宮城県は県が請け負い、今年5月から順次稼働が始まっている。ブロックでやることでスタートが遅くなった。スタートの遅れが処理期間を少なくする。その分、大規模になる。そして、H26.3.31日に終了すると撤去が始まる。石巻の300t/日×5基の大焼却炉群も取り壊す。何億もかけて作り、2年弱でまた金をかけて取り壊す、考えられないことだ。

広域処理の大きな要因 石巻プロポーザルの失敗
 二次仮置場の近くや中には、たくさんの大きなフレコンパックが並んで積まれている。この中にも混合物が入っている。この処理を受託した鹿島建設はその提案では800万tの4割を北海道の苫小牧に広域処理の委託を予定していたという。ところが、苫小牧の住民に反対されてできなくなり、とりあえず二次仮置場に混合物のまま仮置きされることになった。1.5次仮置場と呼んでいる。いま、県外への広域処理依頼が石巻からも出されているが、希望量は約290万tである。全体の34%である。鹿島建設の予定した通り40%を苫小牧に委託していたならば今日の広域処理騒ぎは少なくともなかった。企業の提案の後始末を国が先頭になって、全国の自治体に肩代わりさせようとしている。
 受託企業の見通しが甘かったこと、そして、県も企業の出した提案の甘さを見抜けなかったことに原因がある。

 前回掲載したように、地元の業者はがれき処理に意欲を持っている。ノウハウも機材も売却ルートも持っている。仕事が地域の復興に役立つ。仙台に見られるように処理への着手も早く、期限内に終わり、さらに県内の処理に10万tの協力を申し出ている。地元の事業者を中心にオール宮城の体制への立て直しを期待する。(K)

がれき処理の広域処理見直し 岩手は増加 宮城は減少 「自区内処理で地元に仕事を」の声(K)

2012-05-25 | がれき処理
 今年5月21日 環境省は「災害廃棄物推計量の見直し及びこれを踏まえた広域処理の推進について」を発表し、これまでの県外への広域処理必要量を改めた。広域処理必要量は岩手県は57万t→119万tへ、宮城県は344万t→127万t(処理先が確定している女川町の13万tを含む)へと変更になった。

岩手県が増えた理由は
① 不燃混合物中に想定以上の津波堆積物が含まれていたことなどを踏まえ、その混入を新たに計上したこと
② 海から引き揚げられた災害廃棄物の量を新たに計上したこと
③ 解体の要否が不確定でこれまでの推計に含めていなかった大型建築物等について新たに計上したこと

宮城県が減った理由は
① 浸水被害を受けた地域にあって、解体の可能性があると当初推計された家屋等のうち、相当数が津波により海に流出したと見込まれること
② 市町によっては、解体せずに補修する家屋等が相当数生じていること
③ 当初県への処理委託分と見込まれていた災害廃棄物の一部が、市町の独自処理により既に処理されている場合があること
としている。

広域処理必要量の内訳は次の通り。
岩手県の広域処理対象物の詳細(単位:万トン)

(図をクリックすると拡大します)
 岩手県の大部分を占めるのは不燃物だが、環境省はこの「見直し」の中で次のように言っている。
「従来の推計から柱材・角材が大幅に減少する一方で、不燃物が大幅に増大している。ただし、約89万トンにのぼる不燃物については、土砂分を含むものであり、今後の検討により、県内処理、復興資材等としての利用に活路を見いだすことに努めることとされている。」この通りに行われるならば、県内処理で地元での事業となるべきものである。

宮城県の広域処理対象物の詳細(単位:万トン)

(図をクリックすると拡大します)
 木くずの44万tについて、宮城県は「木質ボードやボイラー燃料、発電等への利用」と説明している。東日本大震災に係る災害廃棄物の処理指針(マスタープラン)では、
「木くずについては、広域での活用も検討。これらの廃棄物については、再生利用の需要量(受け入れ可能量)等を踏まえた、時間をかけた処理の検討も必要。」とし、さらに
「・木くずについては、木質ボードやボイラー燃料、発電等への利用が期待される。
・一方、受入側との間で、受入が可能である木くずの形状や塩分など不純物等に関する条件について事前に調整を行うことが必要。(利用用途を決めないまま木くずを全てチップにすると、引取り業者の確保が困難となる)
・降雨により塩分を除去しつつ、需要に応じて利用していくことも一案。その際、腐敗や火災防止の観点から、木くずを木材チップに加工しない状態としておくことが必要。」
と、リサイクルを前提にきめ細かな指示をしている。

従って、両県からの協力要請量は次の通りとなった。

(図をクリックすると拡大します)

地元でリサイクル・処理こそ復興支援
 処理・リサイクルが適正ならば、広域処理でもいいのか。そもそも、広域処理は被災地の復興を目的としているが、本当に復興になっているのだろうか。
 宮城県議会ではすべてのがれきを県内で処理するよう意見が相次いでいる(4月21日 河北新聞)。宮城県の全市町村長の会合でも県内での処理量拡充に向け協力体制を築くことを申し合わせた(4月25日河北新聞)。

 災害からの復興は、命を守る、住まいを確保する、そして、生きるための雇用と所得を確保することだ。現場での分別は、地域経済にも貢献する。しかし、宮城県の仙台を除く4ブロックの実態はゼネコンへの一括発注で地域でできるものまで委託されている。こうした一括発注に地元から「地元に仕事を」の声が上がっている。

 宮城県議会でも10月7日の定例会で次の質問がされている
 「仙台市の例を見れば、大手ゼネコンを引き込まなくても、行政がきちんとコーディネートをやって対応すれば、地元業者を結集して十分にやれるということだと考えます。今回、県が結局ゼネコンに丸投げする道を選んだのは、地元業者ではやれないということではなく、専門知識を持った県職員の体制が組めないということで、極めて安易な道を選んだのだと考えます。亘理名取地区でも本当に県内企業だけでやれないのかどうか、明確にお答えください」(横田有史議員)

 石巻市議会の東日本大震災対策特別委員会(平成23年11月07日)でも地元業者の声がのっている。
 「一つ一つ調べてみますと、看過できない問題が山積みになっている。ましてやごみ処理の障害になっておった自動車の処置についても、これまた石巻市の業者でない韓国の人材に発注をしている。・・・市長、これは市長の今の答弁を見ますと、地元ができないから大手だという話です。仙台市は約1,000億円の処理、県のほうに委託しないで全部仙台市で処理した。その際、焼却炉については仙台市で大手のほうに発注をし、この分別については全部地元業者ですよ。市長はできないと言いますけれども、歩いてみてください、市長、地元の業者に。やるだけやりたい、そういう声ですよ、皆さん。とてもこういうプロポーザルの内容では出してもだめだから、うちの会社はあきらめたという話です。」(黒須光男委員)
 「やはり地元の発注というのが一番重要だというふうに思われますが、この辺、片づけるのに外様が来て片づけるのではなくて、住民、市民の地元の業者がするというのが最もふさわしい推進の方法であるというふうに思いますが」(阿部和芳委員)
 地元にやる意欲があるのにゼネコンに頼む、これでは地域の復興にも貢献しない。


地域でやってこそ進むリサイクル、廃棄物の減量
 東松島市は先の東北連続地震の経験から、地元のリサイクル業者が今度、大地震が起こった時は仮置き場はここにとか、こう分別するなどを決め、行政もそれを了解していた。そこで、今回のように地元の業者で分別しようと決めた。そこで、石巻ブロックの中でも約47%を自区内でのリサイクル、売却の計画になった。
一方、石巻では、一時仮置き場での選別が9%しかできず、委託企業の提案の中でも混合廃棄物が54%と他の市町村に比べて高い、と述べている。そして、
 環境省は処理の基本的な考え方として、「発生現場において危険物、資源物を分けて集めるなど可能な限り粗分別を行った後に仮置場等へ搬入し、混合状態の廃棄物の量を少なくする。」ことを第一にあげている。
 自治体が地元の業者と協力して、過去の経験を生かし、備えておくこと、そして、災害時には地元の業者を中心に取り組むことが、短時間に着手でき、リサイクル率を引き上げ、処分する量を減らすことができる。(K)

情報の公開をもっと早く 利根水系の水道水にホルムアルデヒド(K)

2012-05-20 | 防災対策
 5月18日から水道水にホルムアルデヒドが含まれたことがマスコミでも報道され、埼玉県内の利根川水系の住民は不安な日々を送った。具体的にどれくらい検出されたのか埼玉県のホームページを19日に何度も見たが何も出ていない。意見欄に投稿し、急いで公表するよう求めた。県内でも市町村に問い合わせの電話が殺到したようだ。
 ようやく20日になって測定値も含めて公開された。測定の最終時刻が20日1時となっていたので、それ以降の公開である。
 この間、18日夜から19日、スーパー、ホームセンターでは飲料水のペットボトルが飛ぶように売れた、と店員は言う。

 福島の原発事故以来、国民は公的機関が「安全」「健康に影響ない」と言っても信用しなくなった。自分で判断するしかないと考えるようになった。しかし、そのためには客観的なデータが必要である。そこで、マスコミが言わない数値を求めてHPを見る。しかし、それさえ出ていないのでは住民は不安になるだけである。
 千葉県は5月19日にホルムアルデヒドに関する第一報を公開し、測定値と断水の可能性もあることを県民に知らせた。以降、同日中に第7報まで公開した。

 埼玉県内の自治体は東日本大震災以後、地域防災計画の見直しを進めている。1年後でも見直しが終わったのは県だけという遅さだが、その中でも災害直後、情報をいかに早く住民に伝えるかを課題としている自治体が多い。必要な情報が必要な時に、必要な情報手段で発せられるように、早期に改善を求めたい。(K)

風力発電を断っている政府と電力業界 葛巻視察から(K)

2012-05-17 | 震災と原発
 いま、マスコミと政府は大飯原発再稼働の大キャンペーン中である。
 政府や電力業界は再生可能エネルギーの体制ができていないとか、できない理由を挙げている。自然エネルギーのまちづくりで有名な、葛巻町を5月14日に視察した。詳細は別の機会にするとして、原発再稼働の世論操作が行われていることを改めて確信した。

 葛巻町の風力発電量は年間5,600万kwh、16,000世帯分だ。葛巻町は約2,900世帯しかない。葛巻町内で消費される全電力も3,412万kwhで、その160%を風力で発電していることになる。そして、2003年に12基が稼働し、全部で15基稼働になって以降も建設を申請しているが、認可が下りていない。「RPS法」で枠が決まっているという。

グリーンパワーくずまき風力発電所 上外川高原(2003.12稼働)

説明を聞く視察団



1750kwの風力発電。これが12基ある。
発電機までの高さは60m 羽の長さは33m
合わせて93mになる


 RPS法とは、2002年6月に公布された「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(RPS法)のことで、電気事業者に 対して、一定量以上の新エネルギー等を利用して得られる電気の利用を義務付けることにより、新エネルギー等の利用を 推進していくものです(資源エネルギー庁)、と説明されている。この法律により、義務の量を1.6%とか4%とか国の法律で割り当てている。電力会社はこの義務量は受け入れていかなければならない。ところが現実には、すべての電力発電会社はこの義務量はクリアしているので、これ以上は法律上の義務はないとして、受け入れない根拠にしている。義務付けている量が上限になってしまっている、というのが現状だという。

 自然エネルギーは不安定電源といわれているが、現在、風力はデンマークの国内電力消費量の約10%を担うエネルギー源にまで成長し、2030年までにこれを50%まで高める計画が進められている。日本の風力発電容量は244万kwで、全発電容量の約1.2%である。発電量での比較となると、0.5%くらいになる。

 東北電力では、これまで年間10万kwhくらい風力発電を買いますとなっていた。募集がされていた。葛巻でやっている企業とかが手をあげて申請をしているが、応募の量が多くて、実際、導入する量の10倍以上の申し出がある。風力発電をしたいという量が多いが電力会社の受け入れない、という。


 なんと! 再生エネルギーの体制ができていないのではなく、風力についてはすぐにでも実用可能な技術と財力が十分にあるのだ。4月21日のこのブログでも紹介した環境省調査再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査報告書H22年度版でも日本の全発電能力の約10倍の実用可能なエネルギーが風力にはある。原発よりももっと風力に力を注ぐべきだ。(K)