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福祉バスから住民の足としてのコミュニティバスへ(1)

2018-07-28 | 会員からの寄稿
杉戸町のまちづくりを考える会 木村芳裕


 杉戸町では民間のバス路線も一部しかなく、町の巡回バスへの期待は大きいのですが、運行便数も少なく、また、巡回方法も一方向だけでとても利用しづらいため、利用者からは何とかしてほしいという声が相次いでいます。そこで、私たちは2018年7月6日に県内の先進地を視察しました。

県内の状況は調査年がちょっと古いのですが、以下の通りです。

埼玉県内のコミュニティバス等の利用者数及び収支率等の比較(平成24年度実績、埼玉県調査資料)桶川市のHPより


平成28年度は、人口当たり1日平均利用者数割合=県の発表した利用者数÷年度の10月1日現在の人口÷365日、とすると、鴻巣市は1.22%、鶴ヶ島市1.11%、桶川市1.01%で、杉戸町は0.14%です。県平均は0.24%です。


平成28年度の県の収支率平均は、23%。コミュニティバスは採算が取れないのです。ちなみに杉戸町の平成27年度、28年度、29年度の収支率はそれぞれ10.3%、10.8%、7.9%です。杉戸町では29年度にコースの一方通行への改訂があり、使いづらくなったとの声が増えていました。コースの改訂によって収支率が下がってしまいました。

コミュニティバスの収支率の最も高い鶴ヶ島市


 鶴ヶ島市は人口約7万人、面積は17.5㎢。交通網は圏央道と関越道が通り、そのジャンクションがあり、それぞれのインターチェンジがあります。市内には入間市と東松山市を結ぶ407号線が通っています。鉄道は市の北東端を東武東上線、北西端を東上越生線が通っています。交通網は十分ですが、市内には路線バスがありません。市民には通学・通勤そしてくらしのための足が必要です。


上と下図 鶴ヶ島市のHPより。つるバス 6時台~10時台までの時刻表ですが、つるバスは10時台~20時台まである。この他につるワゴンの6コースがあり、おおよそ9時台~18時台で1時間~1時間半間隔となっています。つるバス、つるワゴンともに同じ料金で乗継ができます。

つるバス・つるワゴンの誕生まで
 1996年5月から、鶴ヶ島市は市内循環バス「ふれあい号」の運行を小型バス3台、2コースで開始しました。しかし、市民からは市役所と駅と公共施設を回ってほしい、市内全体を回ってほしいとの苦情や要望が多かったことと、要望があっても回ってみたら利用者いないことなどもありました。
これらの意見から循環バスの路線を見直すことになりました。市は2008年3月に地域公共交通活性化協議会を立ち上げ、国の補助金を使って、市民にアンケートを取り、要望のバランスが難しいのでコンサルに案を作ってもらい、それを地域公共交通活性化協議会に諮って正式に決めました。この時の協議会のメンバーはバス、タクシーの事業者5人、警察1人、市職員2名、利用者2名(公募はしていない)、商工会1名、関東運輸局1名、県の交通課から1名、県の道路管理の担当課から1名、計14名で行われ、副市長が会長を務めました。
 2010年2月、市民バス(小型バス3台)、乗合タクシー(セダンのタクシー)による実証運行が開始されました。その評価や市民アンケートをもとに何度も地域交通活性化協議会が開かれます。同年12月には1か月間のパブコメが行われました。ダイヤの策定にあたっては、複雑なので、公共交通やまちづくりを専門とするコンサルタントに頼みました。この実証に基づき現在のつるバス・つるワゴンが誕生しました。なお、デマンド交通については特定の人だけが使うようになるので考えていないとのことです。
 つるバス・つるワゴンの目的は、高齢者・障がい者などの市内の移動手段の確保のほか、通勤や通学、買い物などにも利用できる市内公共交通機関の確保です。

住民の声の反映
 これまで、5回ほど運行ルートやダイヤの見直しが実施されました。見直しの間隔は不定期で、新施設の建設、駅前に広場の新設、JRの時刻表の変更などの時に見直しを行っています。現在は2018年4月改正のルート・ダイヤで運行中です。
 コース・ルートなどに決めるにあたっては、市への問い合わせや要望なども考慮されます。市への問い合わせは主に時刻表の見方などですが、役立って嬉しいけれど運転手の態度が悪い、とか車がスピードを出しすぎとか、乗り継ぎが悪いというのもあります。運行は毎日で年末年始(12/29~1/3)だけが休みですが、年末に買い物に行きたい、という要望が出ています。何とかしたいが事業者との関係があってまだ解決していません。バスへの市予算の支出について、市民一人1000円くらいになりますが、この経費への苦情は年に1件か2件くらいでほとんどありません。
 今年度、駅口が新たにできたり、バス空白地域があることから、見直し作業を行い、来年度バスの時刻表の改正を予定しています。大規模なコース改正の時にはアンケートを取ったり、パブコメを行っています。そして協議会を開き決めます。

つるバス・つるワゴンの運行状況
 現在の運行状況はつるバス2台(36人乗り、ノンステップバス)、つるワゴン6台(9人乗り。運行路線ごとに車両の色が決まっている)、全車両とも車椅子リフト付きになっています。つるワゴンの内の1路線とつるバスは通勤通学者への考慮から朝6時から夜の21時まで運行しています。
 現在の1日平均の利用状況は、つるバスは1日508人、つるワゴンの黄色は48人、ピンク色は45人、オレンジ色41人、緑色は96人、青色は56人となっています。つるバスと緑ワゴンは6時~21時までの終日運行で通勤通学の利用者が多くなっています。

運営形態
 平成8年5月からの市内循環バスふれあい号の運行は東武バスに委託によって始まりました。
現在、運行事業者は市ではなくバス会社やタクシー会社で運行業者が停留所やコースの許可を取っています。運行費用の一部を協定を結び市が負担する仕組みになっています。事業者はつるバスは東武バス、つるワゴンは市内1社と坂戸の3社のタクシー会社が運行しています。つるワゴンの車両はリースで、このリース代も経費に含まれています。

乗車料金と運行経費、利用者数など
つるバス・つるワゴンの乗車料金は、片道、大人200円、子ども(小学生)100円となっています。支払い方法などは次のようになっています。

2017年度つるバス・つるワゴンの経費及び利用者数


 運行経費―収入(運賃収入)=補償額(市の支出)となっていて、現在、市が負担している補償額は年間で6,740万円ほどになっています。運行経費の中には事業者が借り上げる車両(つるワゴン)のリース代も含まれています。
 つるバスの利用者は、通勤、通学、スーパーやホームセンター、公共施設に行く大人や子どもが多く、つるワゴンは身近に交通手段がない高齢者の割合が多くなっています。つるワゴン緑の通勤・通学者用では通勤・通学に向かう人が乗りやすいように、朝の始発から16時40分まで右回りで16時45分からは左回りとなっています。つるバスは6:00~21:00、およそ20分間隔の運行、つるワゴンは通勤・通学用は、その時間帯は30分間隔、他のつるワゴンはおよそ1時間半間隔です。

隣の坂戸駅まで行けるためにどうしたか
 坂戸市に話して関東運輸局の認可が必要なので認可を得た。活性化協議会を通すと認可が早くなるので警察や国・県の人も入った活性化協議会の了解を得ると早くなるが、その了解を得るためにも相手の自治体の了解を得ているということであれば協議会での結論も早くなる

つるバス・つるワゴンのサービス
 ●乗り継ぎ:乗継しても乗車1回分のままです。ただし、目的地までの1回乗り継ぎとなっていて、乗り継ぎの停留所は複数路線が合流する「乗継指定停留所」にて相互に乗り継ぎとなっています。
 ●降車フリー:降車場所はつるバス、つるワゴンの運行ル、―ト上であればどこでも降車できます。
 ●続行便:つるワゴンが満員の場合は運転手がタクシー車両による「続行便」を手配し、料金はそのワゴン利用の時と同じですが、続行便が来るまで時間がかかるので利用者は少ない。
 ●マイ時刻表:時刻表はホームページで公表していますが、それが見られない人のために、よく利用する経路に限定した時刻表を作成し、昨年は35人に54ルートを手渡しています。

 鶴ヶ島市のつるバス・つるワゴンには細かな配慮がされていて、住民を思いやる姿勢が感じられました。

エクアドル・カヤンベでの植林活動を経験して その2

2012-08-09 | 会員からの寄稿
 研究所会員、鈴木満さんからのエクアドル報告です。
 鈴木満さんは、今年4月から7月までの3か月間、エクアドルで植林活動をしてきました。

エクアドル報告 その2  2012・8・8

エクアドル・カヤンベでの植林活動を経験して
~Think Globally Act Locally の実践~

鈴木 満(研究所会員)


3.2つの学校に植林 
 日本のSANEは、会費や寄付を集め、キトやカヤンベにある団体SOJAE(ソファエ)に送金し、その資金で現地では、子どもたちに高校への奨学金を支給したり、溶接や木工などの学校での教育訓練、学校菜園、学校の施設改善などを23年にわたり活動してきた団体である。今回、カヤンベにある2つの学校において植林をおこなった。ひとつは、オルメドのサンパブロウルコにある「ウンベルト フェロ」という学校、もう一つは、カンガウアのピタナアルトという地域にある「ルイス ウンベルト サルガド」という学校にそれぞれ800本ずつ植林をした。
 私からは、花や実をたくさんつけ鳥や動物が集まるものを植えたいという要望を出し、カヤンベのSOJAEスタッフのヘルマン リコ(カヤンベで学校の農業技術を指導している)が選んでくれたのは、アリソ、ポリレピス(ユーカリの一種で乾燥に強い)、テイロ、チョラン、フヤフヤなど8種類を現地の環境状況に応じて選び、学校、コムニダ(地域の共同体)と調整し段取りをすすめてくれた。
 ピタナアルトの「ルイス ウンベルト サルガド校」は、子どもが小さいので、コムニダの父母が協力なくては不可能であり、しかも植林事業は初めての活動なのでどの程度協力してくれるかわからないとのことだったが、当日は30人近くの父母が集まって協力してくれた。直径が20センチほどで深さ30センチほどの穴を掘り、土壌改良剤と堆肥を混ぜたものを中に敷き苗を植えた。周辺にほとんど森林がなく、一日中強い風にさらされ、乾いた風が土壌も乾燥させ土もカチカチになっており、そのため穴掘りに多くの時間がかかり3日ほどかけ植林をした。苗も小さく2年ほどは定期的に水をやる必要もあるのでコムニダの協力が欠かせないとのことだったので、水やりに必要な配管材料、ホースなども揃えた。
 サンパブロウルコにある「ウンベルト フェロ校」では、教育の一環として、全生徒が参加、事前に穴掘りや、苗木の準備をしてくれていたのであっという間に800本の植樹が終った。この学校の環境は、SANEの23年にもわたる支援があり、周囲に植林や学校菜園もあり緑も多く、土壌も湿気もありスムーズに作業が進んだ。

(サンパブロウルコ 教育の一環として)


4.植林は地球温暖化防止の確実な活動
 カヤンベの山も昔は、多くの木が茂っていたという。しかし十数年前に紙パルプとして伐採されていったという。パルプは日本にも運ばれていったという。現在、わずかに残る樹木は、ユーカリ、スギの一種で、保水力に乏しい樹木だけ、それも谷間に細々と流れる水を頼りに生えている。木のないところは土壌流出が起きている跡がくっきり残っている。雨が降るといたるところで洪水が起こり、乾期になるとまったく流れなくなるという。
 ピタナアルトの学校には、水の有効利用を図るため、わずかに流れる水を溜めておく池をつくり、少しずつ植林の拡大を図るプロジェクトを提案した。植林の区域が広がれば、保水力が向上し、きれいな水が少しずつ増えていく。この水を生活用水や畑に利用すれば、地域の人も生活が向上するのではないか。このモデルが成功すれば、第二、第三のプロジェクトがより理解され、環境にも良い結果が生まれてくるのではないかと思う。環境問題はバリアフリー、エクアドルの環境が良くなれば、地球環境、日本の環境も必然的に改善さる。植林は木を1本植えれば1本分だけ確実に二酸化炭素を吸収してくれる。そして不要になった木や草は焼却処分するのではなく炭素として土壌に固定化しておく必要がある。

(サンパブロウルコ 植林の後で)


 滞在中、キトからカヤンベまでのバスの中で、土壌流出の跡がくっきり残る裸の山々の風景を眺めながら、いろんな思いにはせることができた。2校で1600本の植樹は、むなしくなるほど小さい面積である。しかし、この膨大な面積を森林の山々にしたらどれほど地球温暖化に貢献できるか。まさにそれは、国家事業か国際的事業であれば可能だろう。それだけの価値のある仕事だと思う。なぜやらないのだろう、どうして誰も言い出さないのだろう。そんな空想を続けながら3ヶ月のあいだ何度もカヤンベとキトを往復しました。
 帰国後、伐採された木材、パルプが本当に日本に輸入されたのだろうか気になって、調べたところ、確かに1995から2011年まで毎年輸入されていることがわかった。

(カヤンベ 伐採で裸になった山)


エクアドル・カヤンベでの植林活動を経験して その1

2012-08-09 | 会員からの寄稿
 7月9日に予告をした研究所会員、鈴木満さんからのエクアドル報告です。
 鈴木満さんは、今年4月から7月までの3か月間、エクアドルで植林活動をしてきました。2回に分けて掲載します。

エクアドル報告 その1 2012・8・8

エクアドル・カヤンベでの植林活動を経験して
~Think Globally Act Locally の実践~


鈴木 満(研究所会員)


はじめに
 乾燥したアンデスの裸の山々を左右に見ながらキトからカヤンベまでの風景を車窓から眺めていた。
 3年前にSANE(サネ「エクアドルの子どものための友人の会」本部は飯能市にある)の20周年記念事業として8人でエクアドルに来た時と同じ道を、今回はキトの友人に送られて一人カヤンベに向かっている。途中水量の多い流れの速い川は、雨も降らないのに、泥水でにごっている。3年前にきたときは、澄んでいたはずなのに。
 私は今年3月、所沢市役所を定年退職し、それまで活動していたSANEの関わりを頼りに、エクアドルの首都キトから車で1時間30分のところに位置するカヤンベという街の2つの学校の植林活動をおこなうために、エクアドルを訪れたのである。34年間、廃棄物処理の現場に携わり、多くの環境問題と関わり、最大の環境問題ともいえる地球温暖化問題である二酸化炭素の排出に自分なりに立ち向かうことの必要性を感じ、自分に課せられた使命として植林活動を思い立った。

(裸のピタナアルトの山)


1.なぜエクアドルか
 植林活動は、砂漠化の進行している中国内モンゴルや、エビの養殖で伐採されたマングローブ林、紙、パルプとして伐採された森林を再生するため東南アジアなどでおこなわれていることはよく耳にするが、「エクアドルでどうして植林を?」と思う人も多いかと思います。
 平成18年に、所沢市職員労働組合公衆衛生部会による「SANEの活動報告会」を契機に労働組合内でのスペイン語教室の開催に参加。SANEの20周年記念事業としてのエクアドル訪問したことがことの始まり。アジア、アフリカ、北極、南極の環境問題はマスコミで取り上げられるが、南米の環境問題はあまり取り上げられないので、この機会にエクアドルの環境問題をみてこようとして参加した訳だが、カヤンベの山々の森林が無残伐採され丸裸のままの惨状に衝撃を受け、この地に植林しようと考え始めた。

(ピタナアルトでの植林)


(ピタナアルト 植林が終わって 背景はカヤンベ山)


2.カヤンベの環境 
 エクアドルは、ペルーとコロンビアにはさまれたアンデス山脈の北側に位置する国で、国の首都キトはアンデス山脈の高地(2800m)に位置し、山岳地帯(シエラ)東は太平洋湾岸地帯(コスタ)、西はアマゾンの支流熱帯雨林(オリエンテ)、ガラパゴス諸島に分類される。エクアドルという国名も「赤道」という言葉からきているというように首都キトの近郊には赤道記念碑があり、カヤンベの郊外にも赤道記念碑がある。
 赤道直下とはいえ、シエラ地域は、アンデスの尾根が国の南北を走り、チンボラソ山、コトパクシ山、カヤンベ山、アンティサナ山、アルタル山など5000mから6000m級の山々が連なり、首都キトにおいても高地特有の乾燥と一日の中に気温変化がある。気候は雨期と乾期にわかれ、渡航した4月は雨期、6月はじめに突然乾いた風が吹き乾期が始まった。当時、カヤンベで西川農園(カヤンベで花の品種改良の農園をしている)の作業を手伝っていたが、急に唇が乾き始め、30分ごとに水でのどを潤すほどすさまじい乾燥であった。

(ピタナアルト わずかな湧き水を汲み植樹に)


 続く