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安倍内閣スタート 言動の記録(K)

2013-01-15 | 安倍政権
 あけましておめでとうございます
 
 しばらく休んでしまいました。総選挙後もぜロエネ住宅の藤島建設の視察もあったほか、安倍新政権の動きを集め、その整理で時間がかかてしまいました。
 その安倍政権、その目指すこと、そして今どこまで進んだのか追って見ました。

安倍内閣スタート 言動の記録

 自民党は12月16日の総選挙によって衆議院の61%を占めるという結果になり、12月27日には安倍新政権が発足しました。発足早々、動きが急です。安倍政権はどこに向かうのか。今回の選挙の争点であり国民の関心事である、経済・雇用、原発、TPP、憲法・集団的自衛権などと自民党の公約に対して、選挙後のどんな言動をしているか、自民党の公約(「自民党 重点政策2012」http://jimin.ncss.nifty.com/pdf/seisaku_ichiban24.pdf)、新聞記事から探ってみました。(公約は斜体、赤字はコメント)

【外交・安全保障】
• 日米同盟強化のもと、国益を守る、主張する外交を展開します。
• 日本の平和と地域の安定を守るため、集団的自衛権の行使を可能とし、「国家安全保障基本法」を制定します。
• 防衛大綱・中期防を見直し、自演隊の人員・装備・予算を拡充します。
• 憲法改正により自衛隊を国防軍として位置づけます。


12/18 安倍総裁はオバマ大統領に電話会談
 「中国の台頭など安全保障環境が厳しさを増す中、さらに日米同盟を強化していきたい。北朝鮮のミサイル発射への対応でも緊密に連携したい」。
1/6 小野寺防衛相のNHK番組で
 「日本の防衛費は10年連続で削減し、片や近隣諸国は防衛費がどんどん増えている」「しっかりとした防衛体制ができるよう予算を要求したい」(しんぶん赤旗)
1/8 政府及び防衛省
 政府は2010年に民主党政権下で閣議決定した「防衛計画の大綱」及びそれに基づく中期防衛力整備計画を凍結し、新大綱を年内に策定する方針を固めた。防衛省はこれまで微減傾向が続いてきた予算を、来年度の概算要求では自衛隊の人員・装備増のほかオスプレイ購入の調査研究費も含む、前年度比1000億円増を要求する考え(東京新聞)。
1/11付け東京新聞インタビュー 安倍首相
 「尖閣諸島はわが国固有の領土だ。私たちは全く交渉するつもりはない」「領土、領海、領空を守る強い意思を示したい」

力では解決できないことはイラクやアフガニスタンでも明らかになっています。粘り強く話し合って平和的に解決する努力を優先すべきですが、力による解決の方向に進むことに危機を感じます。

【TPP】
• 「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、TPP交渉参加に反対します。

12/18 安倍総裁はオバマ大統領に電話会談
 TPPについても「国益に即して積極的に自由貿易を推進する立場だ」「協議の内容を把握したうえで、どう対応するか考えたい」と述べた。
12/18安倍総裁は都内のホテルで日本経団連の代表と懇談
 経団連の米倉会長が書簡で、「とりわけTPP交渉への参加は一刻の猶予も許されず、早期実現を果たしていただきたい」とコメントしたことに対して、安倍首相は「日米首脳会談でしっかり議論したい」と表明。
12/31付 安倍首相は、産経新聞のインタビューに
 「聖域なき関税撤廃という前提条件が変われば、当然参加ということも検討の視野に入ってくる」(12月31日付)と、以前より踏み込んで回答しました。
1/6 高市自民党政調会長 テレビ番組で
 「交渉に参加しながら守るべき国益は必ず守る、条件が合わなかったら脱退するという選択肢はゼロではない」と交渉参加を容認する発言。

選挙後、反対よりも原則は参加容認に変化。目が離せない状況が続きます。

【経済対策】
デフレ・円高対策
• 明確な「物価目標(2%)」を設定、その達成に向け、日銀法の改正も視野に、政府・日銀の連携強化の仕組みを作り、大胆な金融緩和を行います。

12/18安倍総裁は都内のホテルで日本経団連の代表と懇談。
 経団連の米倉会長の「景気悪化への対応を」のコメントに対して、安倍首相は「強い経済を取り戻す。2%のインフレターゲットを設定し、日銀と協調して必ず円安・株高に持っていきたい」。
12/26 安倍首相、記者会見で
 「デフレ脱却が政権に課せられた使命だ」はこう言った。

国民の所得の向上なくして2%の物価高になれば、国民消費は落ちこんで、国内向け製品の生産は低下し、経済はさらに悪化します。国民所得が落ち込んだことによって物価が下がったという実態を考えると、国民所得の向上=賃金の引き上げこそが有効な策と思われるので、この対策は逆効果ではないでしょうか。

経済政策
• 「日本経済再生本部」を新たに司令塔に「失われた国民所得50兆円奪還プロジェクト」を展開し、「縮小均衡の分配政策」から「成長による富の創出」への転換を図ります。デフレ・円高からの脱却を最優先に、名目3%以上の経済成長を達成します。
• 5年間の集中改革で、「世界で一番企業が活動しやすい国」「個人の可能性が最大限発揮され、雇用と所得が拡大する国」を目指すと同時に、海外投資収益の国内還元を日本の成長に結びつける新たな国際戦略(「産業投資立国」)を進めます。
• 日本経済再生本部に「産業競争力会議」を設置し、成長産業の育成に向けたターゲティングポリシーを推進します。まずは「国民的課題を解決し世界に展開可能な戦略目標の設定」(“健康寿命世界一”など)、さらに、コア技術への集中投資、制度改革など一気通貫の政策を進めます。


1/6 麻生財務・金融相 NHK番組
新規国債発行枠(44兆円)について「こだわっている間は前の(民主党の)内閣と変わらないじゃないかというイメージしか伝わらない。したがって44兆円にこだわるつもりはない」と増額の可能性を示す。(赤旗)
1/8 日本経済再生本部(全内閣で構成、本部長は安倍首相。安倍政権の経済政策の司令塔)初会合
 「産業競争力会議の設置」と「緊急経済対策の骨子」を決めた。
 「産業競争力会議」には民間人9人を起用。武田薬品工業社長、コマツ会長、東レ会長など財界中心の構成。小泉「構造改革」を主導した竹中氏も。構造改革路線が鮮明。
 「緊急経済対策の骨子」はデフレからの早期脱却に向け、政府と日銀の連携の強化など。
1/9 経済財政諮問会議
 政府のマクロ経済政策を担う位置づけ。3年半ぶりに開かれる。「選挙戦で訴えた物価上昇率目標2%の方向性を踏まえた金融政策の実施」を要求。会議後甘利経済再生担当相は、諮問会議において「財政再建を無視した成長の姿は描けない」と、社会保障費の抑制など「痛みを伴う改革」にも取り組む考えを示した。
1/10 復興推進会議(全閣僚をメンバー)
 東日本大震災の復興予算を5年間で19兆円を増額する方針。2012年までに約18兆円を計上し、補正予算では1.6兆円を方針としているので19兆円を突破するのは確実。
*詳しくはhttp://www.reconstruction.go.jp/topics/20130110_sanko03.pdf
1/11 内閣、緊急経済対策を決定
 「日本経済再生に向けた取り組みの第一弾」と位置付け。事業費の総額は20.2兆円。国の財政支出は2012年度の補正予算で10.3兆円(うち約5兆円は建設国債)、地方自治体・民間企業の負担も合わせて20.2兆円。これにより「GDPをおおむね2%押し上げ、約60万人分の雇用を創出する」とする。復興・防災対策、成長による富の創出、暮らしの安全・地域活性化の3分野を重点。
*詳しくはhttp://www5.cao.go.jp/keizai1/keizaitaisaku/2013/0111_01taisaku.pdf

• 大型公共事業がまた、国の赤字を膨らませただけとなる可能性が大きい。なぜ、日本の借金が増えたのか、不要不急の大型公共事業と、富裕層・大企業への減税という原因が改められない限り同じことの繰り返しになります
• 経済財政諮問会議の再開は、公約には出てきません。選挙の時に言わなかったことも行う、財界との太いパイプの復活です。
• 復興予算が被災地で使われていないことが明らかになりましたが、安倍政権が本当の反省の上に立っているのか見守る必要があります。
• 「緊急経済対策」は2012年度中に緊急に計画した総額約20兆円の事業。国の予算は約90兆円なので約2割にあたる予算の事業を執行できるのでしょうか。20兆円という目標を達成するために不要不急の大企業のための大型事業になるのではないか、被災地の生活に必要な本当の復興事業は行われないのではないか。公共インフラも老朽化を迎えており、その維持・補修だけでも50年間で190兆円をかかる(東京新聞1/7)というのに、「全国ミッシングリンクの整備」(高速道路の未整備区間の新設と意味を含む)なども計画していて、必要な補修さえ行えるか。将来にまで継続しない事業なので、バブルの時のように大量の失業者を生むのではないか、大企業の事業が増えるので内部留保だけが増え、働く者は不安定雇用の低賃金で内需は増えないのではないか、消費税を引き上げるための急激な対策ではないかなど多くの問題をかかえています。
これまでの経済政策の反省に立って、労働者の雇用と所得の確保、生活関連のための公共事業、地域経済に寄与する事業、持続可能な社会を目指す分野への事業が望まれます。


【エネルギー】
• いかなる事態・状況においても社会・経済活動に支障がないよう、エネルギー需給の安定に万全を期します。
• 当面の最優先課題として、3年間、再生可能エネルギーの最大限の導入、省エネの最大限の推進を図ります。
• 原子力の安全性に関しては「安全第一」の原則のもと、独立した規制委員会による専門的判断をいかなる事情よりも優先します。原発の再稼働の可否については、順次判断し、すべての原発について3年以内の結論を目指します。安全性については、原子力規制委員会の専門的判断に委ねます。
• 中期的エネルギー政策として、将来の国民生活に責任の持てるエネルギー戦略の確立に向け、判断の先送りは避けつつ、遅くとも10年以内には将来にわたって持続可能な「電源構成のべストミックス」を確立します。その判断に当たっては、原子力規制委員会が安全だと判断する新たな技術的対応が可能か否かを見極めることを基本とします。


12/18 経団連の米倉会長はコメントで、
 エネルギー政策の再構築などへの早急な対応を求める
12/21 安倍総裁は山口県庁において記者会見
 原発の新増設に関して「国として新設をどう考えるのか。民主党政権が決めたことは決めたこととして、もう一度見直していきたい」。10年以内に中長期的なエネルギー戦略を策定するとした自民党の衆院選公約に基づき「新設をどう考えるか検討したい」とした。
 原発再稼働について「原子力規制委員会にルールを作ってもらい、判断してもらう」と、7月までに作る新しい安全基準に合致したら、再稼働させる考えを示した。
12/22 安倍総裁は山口県田布施町で
 原発の新規建設に関し「どう考えるかは新しい政府・与党で決めたい。民主党が決めた方針をもう一度見直していきたい」
 上関原発についても「地元の(建設)凍結という意思を尊重しつつ、国全体としてどう考えていくか検討していきたい」と言及。
12/29 安倍首相 原発政策の見直しを示唆
 29日に福島県を訪問した時に民主党の2030年代の原発稼働ゼロについて「希望を政策にするということではない。責任あるエネルギー政策を進めていく」と見直しを示唆。
12/30 安倍首相 原発新設を明言 TBS番組で
 今後の原発新設について「新たに作っていく原発は、40年前の古いもの、事故を起こした福島第一原発とは全然違う。国民的な理解を得ながら新規に作っていくことになるだろう」と述べた。
1/6 茂木経産相NHK番組で
 原発をめぐって「安全だと(原子力規制委員会に)評価されたものについては再稼働を進めていきたい」
 新設に関して「規制委員会を中心に原発の安全性についての知見や技術がたまってくる。そういったものを踏まえて在り方を考えていきたい」

コラム 自民、公明 連立政権樹立に関する合意文書に署名(12/25)。
 原発 公明の「ゼロ」は文書化されず。「可能な限り原発依存度を減らす」で合意。
 憲法 改憲発議要件の緩和について意見は不一致。結局「憲法審査会の審議を促進し、改正にむけた国民的議論を深める」でまとまる。
 TPP 「国益にかなう最善の道を求める」と条件次第で交渉参加、という含みを持たせ合意。
 消費税 「複製税率導入の検討など低所得者対策を確実に実施する」
 景気対策 「大型補正予算を2013年度予算と連動して編成・成立させる。特に、地域経済や中小企業に十分配慮する」


東通原発に「活断層」 規制委 専門家全員が一致(12/20)、「大地震どこでも」政府研究本部発表(12/21)など、原発の危険性が言われても、再稼働、新増設を話題にする閣僚の発言は、ありえません。
公明党との連立でも原発ゼロは約束しませんでした。公明党も巻き込んで再稼働、新増設へ着々と条件整備をしているようです。


コラム 新閣僚になって(12/27)
茂木経産相
 原発の再稼働について「安全性が確認された原発は(原子力)規制委員会の判断を尊重して政府の責任で再稼働を決めていきたい」と、政府が再起動を進めていく考えを表明。
 大間原発、島根原発についても、「すでに設置許可が下りている。建設中だ」と新増設を容認。
 その他の新増設についても「可否は専門的知見を十分に蓄積した上で、大きな政治的判断になってくる」と今後も建設を認めていく可能性を示唆。
 核燃料サイクルについて「いま、完全に放棄する選択肢はない」と継続を明確にした。
 民主党の「2030年代原発稼働ゼロ」の目標について「再検討が必要だ」と撤回する考えを示した。
田村厚労相
 生活保護の給付水準について「1割ぐらいを上限に検討し、判断していきたい」と引き下げを明言。
 受給者に対するジェネリック医薬品の使用義務化についても「誘導できる政策を考えている」と削減を削る考えを表明。
 一方、現在無料になっている医療費の自己負担化については「導入するには問題がある」と慎重。(以上、赤旗)
菅官房長官
 従軍慰安婦問題で1993年の河野談話について「継承するとかしないとかではではなく、この問題を政治問題、外交問題にさせるべきではない」と述べた。「歴史学者、有識者の研究が今行われているので、そういう検討を重ねることが望ましい」と発言。結局、河野談話の継承の明言を避けた。
太田国土交通相(公明党)
 八ッ場ダムの建設について「1年前、前田大臣の時代に継続ということが決定された。そのことをしっかり尊重してのぞんでいきたい」と建設推進を表明。
麻生財務・金融相
 2014年4月の消費税引き上げについて「きちんとした補正予算や本予算を組んで(景気対策をして)、世の中の景気が特によくなったとならない限り、(97年増税時の税収減と)同じことになる。そうならない配慮が必要だ」と指摘した。
 民主党が維持してきた毎年度の新規国債発行額を「約44兆円以下」に抑える方針には「こだわらない」と、国債の追加発行に踏み切る考えをにじませた。
下村文科相
 高校授業料無償化について「公約で所得制限を設けることを約束している。速やかに実現する方向で検討する」と明言。2014年度以降から実施する考えを示した。


【教育】
• 「教育再生実行本部」の提言を、改正教育基本法に沿って着実に実行し、子供の「教育を受ける権利」を守るため、大人が責任を果たします。
• 今すぐできる対策(いじめと犯罪をはっきり区別、道徳教育の徹底、出席停止処分など)を断行するとともに、「いじめ防止対策基本法」を成立させ、統合的な対策を行います。
• いじめ問題でも明らかなった、現行の無責任な教育行政システムを是正するため、首長が議会の同意を得て任命する「常勤」の「教育長」を教育委員会の責任者とするなど、教育委員会制度を抜本的に改革します。
• 高校在学中に何度でも挑戦できる達成度テストの創設などを行い、大学入試を抜本的に改革します。
• 大学9月入学を促進し、高校卒業から入学までのギャップターム(半年間)などを活用した大学生の体験活動などの必修化や、学生の体験活動の評価・単位化を行います。
• 日本人の海外留学の大幅増や、優秀な留学生を戦略的に獲得(当面20万人目標)するため、国費留学生を拡充するなど、積極的に支援します。


1/8 下村文科相 閣議後の記者会見で
 安倍首相直属の「教育再生実行会議」を来週にも官邸に設置を明言。当面、いじめ防止対策、教育委員会制度の改革、大学教育の抜本的見直しがテーマ。

2006年の安倍内閣の時に「教育再生会議」を設置し、同会議の報告に沿って教育3法を成立させました。この3法は「副校長、主幹教諭、指導教諭を置く」「教育免許に10年ごとに更新制を導入」などの教育現場の上意下達の管理統制強化と、「義務教育の目標に『我が国と郷土を愛する態度』など愛国心にかかわる徳目を盛り込む」など子どもへの特定の価値観押しつけを狙ったものでした。今回の会議がこの「再生会議」のさらなる強化になるのか懸念されます。

おわりに
 総選挙後、一気に政策を打ち出した自民党安倍政権。各閣僚も一致して「世界で一番企業が活動しやすい国」を目指しての復興・経済、軍事力を背景とした強い外交、そして「日本の伝統文化に誇りを持てる内容の教科書で学べるよう」にする教育に危機感を感じます。
「大企業が活動しやすい」ことより、労働者が人間らしく生活できることを優先すべきです。それは、日本経済が困難に陥った原因である拡大した非正規雇用や低賃金を取り除くことになります。大企業の内部留保の一部を取り崩すだけでできることです。
また、財政危機の原因となった富裕層・大企業への優遇税制を元に戻して福祉を充実させること、自主独立の立場による外交力の強化による平和的解決への努力も重要です、
命を最優先にすることは政治の基本です。命と人間としての尊厳を尊重する民主国家を守るために、国民として目を光らせていかなければなりません。