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福祉バスから住民の足としてのコミュニティバスへ(2)

2018-07-28 | コミュニティバス
 杉戸町では民間のバス路線も一部しかなく、町の巡回バスへの期待は大きいのですが、運行便数も少なく、また、巡回方法も一方向だけでとても利用しづらいため、利用者からは何とかしてほしいという声が相次いでいます。そこで、私たちは2018年7月6日に県内の先進地を視察しました。今回はその2です。

人口1人当たり利用者数、県内1位の鴻巣市


 上と次の図は鴻巣市のHPより掲載。次ページの時刻表は紙面の都合で14時頃で終わっていますが、実際は22時ごろまで続きます。

フラワー号の歴史
 鴻巣のコミュニティバス、フラワー号は、平成2005年に合併した時、もともとあった川里コースを存続させたものです。
 2008年に実証、2009年から正式に吹上コース、田間宮コース、鴻巣市南西部の住民の要望に応える形で馬室コースも加えました。コースを増やしたのは、市民の足の確保です。コミュニティバスと位置づけて利用者も多くなりました。その5年後には常光コースと笠原コースを加え、さらに吹上コースを南北に分け、現在の形になりました。交通空白地域をなくす、と考えていますが、要望があって路線を引き、停留所を作っても、利用者がない場合は停留所を廃止、整理しました。
バスはノンステップ低床型で車いすも乗せられる36人乗りで、年齢別利用者の状況では50代60代70代で54%を占めています。30代から40代についてはヒアリングやアンケートで、朝の利用者が多く、4対6で女性が多くなっています。

運営形態
 バス会社との契約は5年間契約。5年ごとに見直しを行って、現在、朝日交通とロイヤル交通の2社が受託しています。2019年が次の見直しですが、それに向けて2016年から2年間見直しを行い、現在、業者選定をやっているところです。
 運営形態は、車や燃料費、車両購入代及び車両減価償却費つまり予備の車も必要なので、その減価償却費など、そういったものは市が払う業務委託となっています。
 現在、コース改訂に伴い、利用者かどうかは関係なく、無作為アンケートで地域要望を吸い上げ、色々な要望も出てきています。地域公共交通会議を2011年に設置し、以降、存続していますが、コースの改定時には頻繁に開かれます。この会議には市職員のほかバス事業者、タクシー事業者、県職員、市民団体、警察や県、関東運輸局などが参加しています。市民の声の反映については「鴻巣市のバス交通に関するアンケート調査」を2017年4月に実施しています。

未就学児、障がいのある方及びその介護者の運賃は無料。回数券もあり、ICカードはいくつかのコースで使えます。

便数とコース
 全部で8コース(川里循環右回りと左回りは別計算)あり、バス車両は11台です。始発は5:50~7:25ですが、ほとんど6:00代です。最終便の到着はほとんどが20:00代ですが、駅から遠い川里コースは22:00代です。
運行は年末年始を含む毎日です。

北本駅への乗り入れ 6つの停留所が北本市内
 隣の北本に隣接するコースでは6つの停留所が北本市内に入っています。北本市民も利用できます。相手の市と協議し、民間の運行事業者が申請しています。ここでも地域公共交通会議に県や警察が入っていることで許可が早くなっています。

市の支出と利用者数 利用者はさらに増える
 フラワー号利用者数と収支率


 2014年度に県内1位だった人口一人あたりの利用者数はさらに増えています。収支率も県平均が23%なので大きい方です。市の負担額は約1億800万円程度となっていますが、さらに、市民の足の確保のために、次のようにデマンドバスの試行を始めています。

デマンドタクシーの実証について(今年6月から)
 バス停まで行けない人のために市はデマンドバスの事業を行おうと今年6月15日から実証をスタートさせました。現在までに1日平均50件を超え、計2300人以上が利用し、好評です。
 通常のタクシー料金に対し市が料金を決め、タクシー料金との差額を市が補填する形でスタートさせています(表)。タクシー会社にとっても損をしないで利用者が増え、利用者も低額で利用できる仕組みになっています。鴻巣の実証では市の補助は1回およそ500円ぐらいで済む感触があります。

利用料金

 運行範囲は①自宅→共通乗降場、②共通乗降場→自宅、③共通乗降場→共通乗降場 となっています。
※ 共通乗降場は各公共施設、各学校・保育園・幼稚園など、各駅、各医療機関、各介護施設、各金融機関、各商業施設、各コンビニ、各バス停、路線バス各バス停など687か所です。

利用できる方
 70才以上、要介護・要支援の認定を受けている人、身体障害者手帳・療養手帳・精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人、指定難病医療受給者などの交付を受けている人、小学校就学前の子、妊娠中の方です。事前に登録が必要です。

運行日
 毎日運行(12/29~1/3を除く)。受付時間は8:30~17:00

「利用者県内1位をキープするように頑張っている」と市の主幹の挨拶の通り、市民の移動する権利を守る気概が、デマンドバスへの新たな挑戦に表れているようでした。

 2つの自治体とも、住民の足を確保する気持ちが伝わってきました。通学・通勤者を対象とすることによって利用者数も増え、収支率も向上しています。住民の声も協議会の役割が大きいと感じました。


路線と便数を増やすと市の負担も大きくなります。そこで、国の補助を紹介します。


コミュニティバスへの交付税措置(国の補助)は赤字分の4/5

2018.7.11市町村課への聞き取り


 国は、経費―運賃収入など=赤字、については交付税措置を行っています。交付税措置の概要は以下の通りです。交付税は、特別交付税で「地方バス路線の運行維持に要する経費があること」という項目です。コミュニティバスを運行している県内の自治体にはほとんど措置されています。

国庫支出金ではなく地方交付税措置
 交付税はバス事業者への赤字補てん、という形で、運行費用の赤字分とバス購入費(バスの大きさに関係はない)に対して4/5が交付される。コミュニティバスにも適用される。
バスを直営で買った場合でも、同じように措置される。
直営のコミュニティバスの場合も同じ考えで、自治体の補填(=運行経費―運賃収入)に対して4/5が交付税として措置される。
コミュニティバスの要件は自立した日常生活及び社会生活の確保
 買い物、病院、通勤、通学、公共施設へ行く場合など生活維持に関するものであること。
デマンド交通(デマンドバスやデマンドタクシーなど)は輸送量の条件なしで適用される
 総運賃額、総キロ数が算出できないので、輸送量の条件なしで適用される。
 該当しない場合
① 輸送量*が150人以上になる場合
② バス運賃が無料
③ 黒字はダメ
*輸送量とは、停留所相互間の運賃額と総キロ数などによる。県内のほとんどは150人以上にならない。

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