ようこそ埼玉自治体問題研究所へ!

埼玉県での地域やまちづくりに役立ててください。
いろいろな情報を発信しています。

「自立」は福祉の充実こそ  デンマーク研究者澤渡夏代ブラントさん インタビューの記事 を読んで(K)

2014-01-11 | 税と社会保障の一体改革
 都知事選は景気も一つの争点になるだろう。株価と一緒に浮き沈みする、そして、財政負担を子どもたちに残すアベノミクスは4月以降、消費税導入によっての景気後退が予想されている。ハラハラする経済状況よりも、すでに高齢化社会を経験しているデンマーク・スウェーデンに学ぶことは大きい。

 本日、2014年1月11日付の「赤旗」に、デンマークの福祉と経済に関するインタビュー記事が載っていた。澤渡夏代ブラントさん(デンマーク研究者でデンマーク人と結婚し、自身も85年にデンマークで会社を設立している)は次のように言っている。


 日本では「経済がよくなれば人びとの生活が豊かになる」といわれます。しかし、デンマークは「豊かな生活がよい仕事につながり、経済をよくする」という考え方で福祉を充実させてきました。

 日本政府が進める医療・介護「改革」は象徴的です。デンマークの在宅ケアや高齢者住宅を参考にしているといいますが、考え方がかけ離れています。

両国の隔たり

 来年の介護保険「改革」では、要支援者への介護をボランティアに委ねていくといいます。デンマークでは考えられないことです。
ボランティアはデンマークでも盛んですが、介護・看護などを担う余地はありません。高い質を保つために専門職がいるからです。1年2カ月の教育と実習を受けなければヘルパーにはなれません。
 デンマークの福祉は「人」を中心に構築されています。生活の質を下げず、その人らしい暮らしを継続できるよう、「必要な人に必要なときに必要なだけ」介護や看護を無料で撞供しています。医療や教育費も無料。財源は公費です。
 狭い介護施設に代わって建設が進められた高齢者住宅は、寝室とリビングの2部屋を備え、ヘルパーが作業しやすいように広いバスルームが付いています。「誰にでも必要なときに適応する住宅を供給する」目的で、所得に応じて家賃への助成金が支給されます。


 以上のように言っていた。

トリクルダウンは幻想だった
 トリクルダウンでやがては賃金も上がり、庶民の暮らしもよくなる、と宣伝されてきて久しい。しかし、高度経済成長期には経済成長によって賃金も上がったが、利益が上がったと同じ率には賃金が上がらず、当時の春闘は利益の配分を増やす賃上げの運動だった。だから、経済成長でも同じようには賃金は上がらない。
 オイルショック以後、低成長時代と言われ利益は小幅になったが、労働者には合理化が迫られた。トリクルダウンも大株主が自分で決めた取り分を取った後のおこぼれでしかない。成長が小さければ労働者にはおこぼれもなくなり、さらに長時間労働や過密労働・解雇が押し付けられてきた。だから、庶民の懐は温かくならず、体もボロボロになるばかりだった。
 アベノミクスによる経済へのテコ入れも、政府の庇護の下で、補助金や税の減免で助けられている大企業のごく一部の労働者を除いて、中小企業など日本経済の大半を占める企業の労働者には通用していない。「経済がよくなれば人びとの生活が豊かになる」ことさえ、真実ではない。

「豊かな生活がよい仕事につながり、経済をよくする」デンマーク・スウェーデン
 デンマークは「豊かな生活がよい仕事につながり、経済をよくする」という考え方は、スウェーデンについての講演でも同じような話を聞いた。国は自立できるように、教育を無償にして能力を身に着けさせ、結婚して子どもを産んでも安心して働けるように保育・幼稚園教育の負担を軽くし、医療費も無料で早く病気を治せるようにしている。そして、自立して働けることを保障する、ということだった。
 先日読んだスウェーデンの税の制度では、経済の成長が福祉の充実を保障していることを書いていた。しかし、その成長のためにしていることは日本とは違う。一人でも多くに人に働いてもらい、高い技術も持ってもらう、そのために教育も無料にして人材を作り出し、女性が働ける環境を作っている。それが、生産性の向上につながりGDPも引き上げている。

OECD factbook 2013が示す経済の実態

 デンマークやスウェーデンは日本よりも労働1時間当たりのGDP(最新のUSドル、購買力平価)が高い。OECDは労働生産性として次のグラフを紹介している。

これによると、

スウェーデン、デンマークの方が時給が日本よりも1200~1300円も高い。

また、女性も就業できる環境が整っているので女性の就業率が高くなって、全体の就業率を押し上げている。
それに比べて、日本は男性の就業率が高く、女性は低くその差は大きい。それが全体の就業率を引き下げている。

就業率2011年、男女別雇用率。15歳~64才までの労働人口に対する。OECD Factbook 2012より作成

デンマークやスウェーデンの高い労働生産性、女性の就業機会の保障によって、

一人あたりの労働時間が、日本よりも0.6~1.4か月分短くても


一人当たりのGDPは約1.2倍になっている。


スウェーデンに見る税と社会保障 番外編 日本の消費税(K)

2013-10-26 | 税と社会保障の一体改革
付加価値税の補足

 スウェーデンも、デンマークも消費税は25%と高い。そして、やはり消費税は逆進性を持っています。しかし、所得格差が小さければ、逆進性は小さくなります。そこで、所得格差について見てみます。
 所得の分配の不平等さを測る指標にジニ係数があります。主要国のジニ係数をOECD統計によって見ると次のようになります。

 2010年、是正後の低い順。当初所得には大きな格差があります。そこで、誰もが必要とする生活の場面への給付が行われています。それによって、格差は縮小しています。
 デンマーク、スウェーデンは所得格差が是正前も低い方で、再分配後は最も低いレベルです。しかし、近年は格差が若干広がりつつある。日本とアメリカは再分配後も0.4に近く、しかも2005年以降格差が広がった。日本は当初の所得格差は大きい方です。

その原因はどこにあるか。年齢別に見る。

 労働世代の所得格差が低いのは北欧、ドイツそして日本である。しかし、再分配後では日本は高い方になり、労働世代にはほとんど再分配がなく、格差が解消されない。


 65才以上では、ヨーロッパでは格差が大きいが、再分配後は小さくなっている。一方、日本は当初の格差は高いもののヨーロッパに比べると低い。しかし、再分配後ではヨーロッパに比べると大きくなっていて再分配の効果が小さい。

 労働世代、退職世代とも日本のデータがないが、前掲した厚労省の全体の統計では格差はむしろ広がっているので、より格差が広がっていることが予想される。

 スウェーデン、デンマークは消費税が25%になっているものの再分配後は格差が小さく、またスウェーデンは消費税が複数税率になっている。その結果、逆進性の弊害が小さくなっていると思われる。再分配の機能が働かない日本での消費税は格差を広げるだけで、低所得者の生活は福祉の向上どころか、脅かされる。

スウェーデンに見る税と社会保障 その6 付加価値税とまとめ(K)

2013-10-26 | 税と社会保障の一体改革
下線部を追加・修正しました。

今回は付加価値税です。

付加価値税に関する小冊子12版 2013年6月発行
(The VAT Brochure SKV 552B, edition 12. Issued in June 2013.)より

 一般税率は25パーセントです。
 下記の商品とサービスについては、税率は6または12パーセントです。

12%の付加価値税
 食品。(主に原材料。飲料水も含む。加工品は除く。)
 芸術家による芸術作品の販売
 ホテルや下宿事業の家の賃貸。
 レストランや調理サービス。(アルコール類を除く)

6%の付加価値税
 本、小冊子、単一のチラシを含むパンフレットなど作品。
 主題にかかわらず新聞や雑誌(例えば、ニュース雑誌や週刊誌のような)。
 子供のための絵本、描画本や塗り絵。
 楽譜や地図帳のような地図、壁マップや地形図など。
 タクシー、電車、国内線を含む旅客輸送(移動)。
 コンサートやサーカス、映画館、劇場、バレエやオペラの公演そしてそれと同様のものへの入場料。

付加価値税の免除
 商業活動目的を除く不動産の販売、譲渡、賃貸
 医療、社会的ケア、放送、芸術発表
 義務及び高等学校レベルと高等教育における教育。
 テレビ番組、生産および放送活動は、主に政府の補助金によって賄われている場合
 公的なスポーツへの入場料など

 背景に、文化的生活、移動、住宅、医療、教育、知る権利など、人間らしく生きることの保障が配慮されているのではないだろうか。


全体の感想としてのまとめ
 税収全体では、総額も所得税も消費税を含む付加価値税もスウェーデンの方がずっと高いことがわかりました。しかし、その中身は所得税では地方税の31.6%、実質は年金の掛け金分がそっくり税から引かれるなど、もっと低いものになっていました。高所得者はそれに国税の20%~25%が加わります。企業への法人税は22%と低いものの、労働者の賃金の31.42%の給与税という名の社会保障負担が企業によって支払われます。また、資本家へは株の配当や売買など資本への税も30%と日本よりも高くなっていました。
 消費税などの付加価値税も人間らしく生きることの保障の構造になっているようです。
 
 こうして集められた税は、GDPの45.8%にも及びます。約半分が公の管理の下に、つまり、国民の意見で使われ方が決められているということです。その結果、下のグラフのように日本の国・自治体の総支出額を上回る額が暮らし関連に使われているのです。福祉国家と言われるような国になっています。一人あたりのDGPも日本よりも高くなっています。


 OECD.Stat Extracts より作成

 以上で、今回のシリーズを終わります。
 スウェーデンは今、ギリシャ、スペイン、イタリアの経済危機や、緊縮政策への賛否などEUが大きな問題を抱え、参加国として影響があるかもしれません。リーマンショックの影響もあるかもしれません。今後、どの方向へ向かうのか、興味のあるところです。
 間違いの指摘も含めて、ご意見をお寄せください。ありがとうございました。(K) 
 
 

埼玉自治体問題研究所では11月8日午後6時より、下記の通りヨアキム・カウト氏の講演会を行います。ぜひ、ご参加ください。



カウト・ヨアキム JoskimKautto 氏

学歴
 2000年 ヴェクショー大学(社会心理学と社会福祉士プログラム)
 2005年 国際基督教大学、交換留学生
 (グループホーム職員のケアに関する日瑞比較研究)
 2005年 ヴェクショー大学卒業
 2013年 国連大学 『気候・エネルギー・ 食料安全保障』
職歴
 1998年 ベルリンの障害学校研修
 1999年 埼玉県植木研修生
 2005年 スウェーデン福祉研究所入社、(プロジェクトマネージャー)
 2008年 スウェーデンクオリティケア、所長
 2009年 Swedish Quality Care株式会社、代表取締役
 2013年 Bunne Japan株式会社、 代表取締役
スウェーデンでの経歴
 2年 パーソナルアシスタント
 6ヶ月 ケアマネージャー
 1ヶ月 アルコール中毒患者のための治療施設

 また、来年5月5日より8日間の日程で、デンマーク・スウェーデン「環境・エネルギーと税財政と福祉の旅」を予定しています。(10月4日のブログで掲載しました)現在参加者募集中です。

 


スウェーデンに見る税と社会保障 その5 企業所得への税(K)

2013-10-08 | 税と社会保障の一体改革
企業所得への税 税への責任

所得税
 スウェーデンに居住する企業は、彼らの全世界での所得は国税の対象となります。居住する企業は、スウェーデンに登録され、管理・制御されます。
 課税年度の2013年には有限会社、財団、経済団体、非営利団体や生命保険会社からの国の所得税は26.3から22%に低下しました。
 企業は株主への配当に対して控除は許可されていません。また、株主が受け取った配当も資本所得として課税されています。配当金は、このように二回課税されます。

企業の社会保障負担
 ほかに社会保障負担があります。社会保障負担は雇用主によって支払われる通常の率が31.42パーセント(2010)か、あるいは自営業者自身によって支払われる28.97パーセントの給与税です。労働雇用を奨励するために、26歳以下と66歳以上の人にはより低い率が適用されています。
 このほか、国の年金または給付を受ける権利を発生させない、報酬の項目に特別賃金税というのがあります。報酬からのこの控除は付加年金システムの一部に割り当てられます。EUの統計の原理によれば、料金のこの部分は、家計の貯蓄に属すると考えられます。2010年には、社会保障負担の合計は4,930億クローナでした。
※ 特別賃金税:企業活動的でない事業所得に対する社会保障負担


労働者雇用について企業の負担を詳しく見てみます。


上の表の労働者の雇用について100,000SEK所得の例に見ると、
 課税所得は基礎控除をされて70,100SEKになっている。これに地方税率の31.60%が掛けられて21,151SEKの地方税が引かれている。
 一方、一般的年金負担は7%と決まっているが、これは基礎控除前の所得に掛けられている。企業が支払う社会保障負担の給与税も同じ金額に掛けられている。

 労働者にとっては、一般年金負担に対しても、就業活動からくる所得に対しても減税されるが、それは日本のように課税対象から外すという方法ではなく、税から直接控除する方法となっているので、かなりの負担軽減になっている。

 企業にとっては、賃金のほかに賃金の31.42%の社会保障を負担することになっていて、日本の労使5:5よりも負担は大きい。一方、企業の所得への税は22%であり負担は小さいが、減税の例外はなく、また、企業や個人の資本からの利益、すなわち株の配当という所得には30%の税が掛けられている。

 税もきちんと払っているし、不労所得の資本所得には30%の税率が掛かっている。社会保障負担も労働者の4.5倍払っている。

 個人の貿易業者(自営業者)のような事業を展開する個人は、事業からの純利益について市町村所得税、国への所得税と社会保障を支払います。

このような税制に次第に国民の賛成の声が増えている。

スウェーデンに見る税と社会保障 その4(K)

2013-10-04 | 税と社会保障の一体改革
労働者の所得税は次のようになっています―
“Tax in Sweden 2012” An English Summary of Tax Statistical Yearbook of Swedenより

 雇用からの所得税は市町村税と国税から成る。ほとんどの人は市町村税だけを支払う。居住地の自治体に応じて額が異なります(約29から34パーセントの税*)。 2012年の地方所得税(市町村(コミューン)税と郡(ランスティング)地方税)の組み合わされた平均の率は31.60パーセントだった。

 国税はSEK426,300(約6,394,500円)以上の所得を持つ人々によって支払われます。2012年の所得に対して個人が国への所得税を支払うことが義務付けられている2つの閾値があります。下限しきい値は426,300 SEK(約6,394,500円)です。この制限を超える稼ぎ高に対して、個人は20%の国所得税を支払わなければならない。上限のしきい値は604,700 SEK(9,070,500円)です。この制限を超える稼ぎ高に対して個人はさらに5%の国所得税を支払わなければならない。
*SEK スウェーデンクローナ。1SEK=15円として計算

* 課税所得は、地方と国の所得税を計算するための基礎となります。地方所得税は比例税であるが、率は自治体によって異なります。それは、2つの構成要素から構成され、2010年には平均率は31.56パーセントであったとされています。市町村税20.74パーセント、郡地方税10.82パーセント。合計31.56パーセント。最低の地方所得税率は一般に大都市の裕福な郊外、一方、最高率は北部の農村や産業衰退に見舞われた自治体で発生している。
2012年には最低の税率は、南部のVellingeの郊外のマルメ(28.89パーセント)であり、最も高いのは中央スウェーデンの製鉄産業によって支配されているHofors(34.32パーセント)である。コミューンやランスティングへの経済的平等の仕組みがなかったので、ギャップはかつてなく広がった。

 加えて、誰もが一般的な年金拠出金(7%)を支払います。控除は、直接仕事に関連付けられている費用に対してのみ許可されています。控除は、個人的な生活費のために許されることはありません。最も一般的な控除は、通勤のためのものです。

資本利得(所得)に対する課税
資本利得は次のものを含みます:
• 利息および配当金
• 株式、住宅やテナント•所有権の売却による利益。
純資本利得に対する税は30%です。

具体的な計算例も次のように示されていました。