小春奈日和

赤ちゃんは、人間は、どのように言葉を獲得するの?
わが家の3女春奈と言葉の成長日記です。

180 アシハラシコオの再考察

2013年09月24日 00時27分42秒 | 大国主の誕生
大国主の誕生180 ―アシハラシコオの再考察―


 水銀の採掘される地では鉄などの鉱物も採取されます。
 アケタツ王を祀る佐那神社の鎮座する多気町仁田のあたり
にはJR佐奈駅や佐奈小学校など佐奈の名が残されています。

 この佐奈は、「鐸(さなき)」から来ているものと考えら
れます。と、言うのも、古代の製鉄などに関わっている地に
は「さなき」につながる地名が残されていることが少なくな
いからです。


 愛知県の猿投山(さなげ山)も「さなき」から来たとする
説があります。愛知県豊田市には猿投神社が鎮座しています
が、ここの祭神はヤマトタケルの兄大碓命(オオウスノミコ
ト)を祭神としています。

 もっともオオウスが祭神となったのは近世になってからの
ことだそうですが、オオウスが祀られるようになった理由と
してはこの地に残る伝承によるものと思われます。
 すなわち、オオウスが猿投山の山中で蛇毒によって命を落
とし山頂に葬られた、というものです。
 この伝承は、『日本書紀』が、ヤマトタケルが伊吹山の山
中で伊吹山の神の化身である大蛇に出会い、その後神の前に
気を失う、と伝える話によく似ています(『古事記』では大
蛇ではなく猪となっています)。

 伊吹山はその名が示すように、製鉄に関わったと考えられ
る伊福部氏(いぶきべ氏、もしくは、いおきべ氏)と関連が
指摘されており、そうすると、どちらの伝承も製鉄に携わる
氏族たちに間に伝えられていた話と思われます。

 佐那神社の鎮座する佐奈の現在の地名は仁田といいます。
 『出雲国風土記』がアジスキタカヒコの神話を伝えるのは
仁多郡で、仁田と仁多の関係性ははっきりしないのですが、
ただ『出雲国風土記』の仁多郡の条には、

 「以上の諸郷より出る鉄は堅くして、もっとも雑具(くさ
ぐさのもの)を造るに堪ふ」

と、あり、この地から良質の鉄が採れたことを伝えています。
 この点では、ふたつの地はともに製鉄という共通点を有し
ているわけです。

 アジスキタカヒコ(アヂシキタカヒコネとも)は、その名
の中に「鉏」という言葉が含まれていることから製鉄の神で
あったとする説もありますが、もし製鉄の神であるなら『出
雲国風土記』でオオナモチ(大国主)の御子神とされている
のはどういう理由からなのでしょうか。
 大国主自身に製鉄神の性格はあまり見られないのですが、
鉏が農具であるように、農具にも鉄が用いられます。大国主
が農耕神としての性格を与えられた時にアジスキタカヒコを
結びつけられた可能性も考えられます。


 もうひとつ、大国主の別名のひとつとされる葦原醜男(ア
シハラシコオ)についても今一度、再考察が必要かと思いま
す。

 『古事記』では、アシハラシコオは、大国主が根の国のス
サノオを訪問した時の名前として描かれています。
 最初オオナムチという名であった大国主は、八十神たちか
らの迫害を逃れて根の国に住むスサナオを訪ねますが、この
時にスサノオからアシハラシコオと呼ばれます。
 そして、スサノオの娘スセリビメをつれて根の国を発つ時
に、スサノオから、
 「これからは大国主命と名乗れ」
と、言われるのです。

 これが、『古事記』に描かれるアシハラシコオですが、実
際にはオオナムチとは別の神であるとする説も強くあります。


 それはさて置き、『古事記』の「垂仁記」におけるホムチ
ワケは、アケタツ王、ウナカミ王とともに出雲を訪れますが、
これは、ホムチワケの口がきけないのは出雲大神の祟りによ
るものとわかったためでした。
 『古事記』によれば、出雲に着いた一行は、肥の川で仮の
宮を造り出雲の大神を祀ります。
 その時に、出雲国造の始祖岐比佐都美(キヒサツミ)が川
下にて青葉で山の飾りつけをして御子に大御食を奉ろうとし
ますが、それを見た御子が、
 「この川下にある青葉の山は本当の山ではないね。もしか
してアシハラシコオの神を祀る者の斎場なのか?」
と、言う場面が描かれています。
 ここでは、出雲大神は、大国主でもオオナムチでもなく、
アシハラシコオの名で呼ばれているわけです。

 アシハラシコオの名は『播磨国風土記』にも登場します。
 それが、これまでに何度かお話しした揖保郡の粒丘の神話
で、アシハラシコオとアメノヒボコの国占め争いの話です。
 この他にも、『播磨国風土記』はアシハラシコオとアメノ
ヒボコの国占め争いの神話として、宍禾郡の奪谷、伊奈加川、
御方の里の話を載せています。

『播磨国風土記』には、これらの他に伊和大神とアメノヒボ
コの国占め争いの話も2つ載せています。宍禾郡波加(はか)
村の神話と神前郡粳岡の神話です。


・・・つづく

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