小春奈日和

赤ちゃんは、人間は、どのように言葉を獲得するの?
わが家の3女春奈と言葉の成長日記です。

城陽市の豊玉比売の祭祀

2015年06月20日 01時28分40秒 | 大国主の誕生
大国主の誕生402 ―城陽市の豊玉比売の祭祀―
 
 
 践祚大嘗祭において天皇に御膳司を務めたのが安曇氏ですが、『古事記』によると、
安曇氏は綿津見神を始祖としています。
 天孫ホノニニギとその子ホオリはともに綿津見神の娘を妻にしていますが、ホノニニギの
妻となった豊玉比売を祀る神社が京都府にあります。
 それは京都府城陽市の水度神社の祭神で、正確には祭神は天照大御神と高御産霊神
(タカミムスヒ神)、そして少童豊玉姫命(ワダツミトヨタマヒメノミコト)の三神です。
 これは、平安時代に編まれた『延喜式』にも、
 
 「水度神社 三座」
 
とあります。
 ただし、奈良時代に作られた『山城国風土記』に記されていたとされる、いわゆる「山城国
風土記逸文」には、
 
 「久世の郡、水渡の社(註:水度神社)、み名は天照高弥牟須比命(アマテラスタカミムス
ビノミコト)、和多都弥豊玉比売命(ワタツミトヨタマヒメノミコト)なり」
 
と、記されていますので、天照大御神が合祀されるのは後のことで、元はタカミムスヒとトヨ
タマビメの2神を祀っていたものと考えられます。
 なお、ここの高御産霊神は「天照高弥牟須比命」とあり、アマテラスとタカミムスヒを合体
させたような神名になっていますが、ここでの「天照」は、天火明命(アメノホアカリノミコト)が
『先代旧辞本紀』に「天照国照彦天火明櫛玉饒速日尊」と記されているのと同じで、太陽神を
意味する「天照」のことと思われます。
 
 水度神社と同じ城陽市には、水主神社(みずし神社)があり、祭神は『延喜式』に天照御魂神
(アマテルミタマの神)とあります。
 こちらの天照も、天照国照彦天火明櫛玉饒速日尊、すなわちホアカリのこととされています。
 
 ただ、ひとつ疑問も生じます。
 海のない葛城に海神大山祇神を祭神とする鴨山口神社が鎮座していたのと同じく、やはり
海のない京都府城陽市に豊玉比売が祭祀されているのはどうしてなのか、ということです。
 豊玉比売も海神綿津見神の御子であり、『古事記』に載る伝承も海と深く関わったものです。
 
 そこで考えられることは、天孫降臨神話に関係しているということです。
 そもそも豊玉比売と高御産霊神の接点は『古事記』には何も語られておらず、その意味では
この両神が同じ水度神社で祀られているのも不思議なわけですが、あえて接点を挙げるならば、
どちらも天孫降臨神話に登場する神である、ということでしょう。
 
 そして、安曇氏の存在も挙げられます。
 安曇氏は、豊玉比売と同じく綿津見神の御子神である穂高見命から始まる系譜を持ちますが、
そもそも安曇氏とは志賀島発祥の氏族とする説があるほど玄界灘に縁があります。
 意外に思われるかもしれませんが、十市郡には対馬が関係している神社も存在するのです。