パワフルになった？

2010年11月24日（水）（2歳7か月）


　春奈は寝る時に、「お休み」の言葉ととも
に、僕と右手の手のひら同士をパチンとたた
く行為をする。

　今日もパチンとタッチを交わして、

　「春奈すごいやろ」

と、僕に言った。

　何がすごいって？

　一瞬わからなかったけど、どうやら僕の手
をたたく、その力が強くなったやろ、と言い
たかったようだ。

　春奈も自分の変化というものを意識したり
実感したりできるようになったのだろう。

　いや、実感は前からしていたのかもしれな
いな。

　意識するようになっただけかもしれないけ
ど、これだってもしかすると、だいぶ前から
していて、ただ、それを言葉に出して言うよ
うになっただけなのかもしれない。

　今回は力のことだったけど、それじゃあ、
言葉が育っていることについては実感できて
いるのかな？？？

179 日本神話と水銀

大国主の誕生179　―日本神話と水銀―


　これらも同源の伝承と考えられていますが、それでは、
どうして伊勢と、出雲や播磨に同じ伝承が残されたので
しょうか。

　この伝承の発祥は水沢の地理にあるとみられます。

　初めに足見田神社が鎮座されていたと伝わる鎌ヶ岳に
は良質の水銀が採れるところがあるといい、事実、昔は
採掘場があったそうです。

　しかし、水銀は同時に人体に悪影響を与えるものでも
ありました。水銀中毒と呼ばれるものです。

　一口に水銀中毒と言っても、その症状は軽度と重度に
よって異なりますが、それ以前に無機水銀とメチル水銀
（有機水銀）でも症状が異なります。

メチル水銀の場合は中枢神経系に影響を与えます。
中毒の初期症状は、四肢末端や口唇周辺のしびれ感で
始まり、進行すると手指のふるえ、歩行障害、求心性
視野狭窄などが現れます。
　水俣病もその原因はメチル水銀によるものですが、そ
の症状のひとつとして言語障害が挙げられるといいます。

　一方、無機水銀の場合、その急性中毒には、粘膜のた
だれ、血圧降下、ショック状態、腎障害、口内炎、胃腸
炎、呼吸器障害等が挙げられます。

　すると、ヤマトタケルが杖をつかないと歩けなくなり、
三重村では足が三重に折れ曲がった、とする『古事記』
の伝承や、『播磨国風土記』の三重の里の伝承にある、
ここに住む女の足が三重に折れ曲がり起き上がることも
できなくなった、というものも水銀中毒による四肢の痺
れや歩行困難を連想させずにはおれません。

　それに、『古事記』や『日本書紀』のホムチワケや、
『出雲国風土記』のアジスキタカヒコが、言葉を発する
ことがなかった、というのも、水銀で喉をやられたか、
あるいは言語障害に落ちいった状態を思わせるのです。

　ホムチワケのお供をしたアケタツ王とウナカミ王兄弟を
祭神とする神社が三重県にあるとお話ししましたが、その
うち、アケタツ王を祀る佐那神社の鎮座する三重県多気郡
多気町には丹生という地名が存在します。
　丹は水銀のことで、水銀の採れるところを丹生と呼びま
すが、多気町丹生も丹生鉱山があり、１９７３年（昭和４８
年）まで採掘がおこなわれていました。
　丹生鉱山に隣接する池ノ谷・新徒寺・天白遺跡から発見
された縄文式土器は、粉砕した辰砂を利用したもので、他
にも辰砂原石や辰砂の粉砕用に利用したと見られる石臼も
発見され、縄文時代の頃から採取されていたことがわかっ
ています。何より、４０か所以上に及ぶ採取坑跡が付近か
ら発見されています。

　辰砂は水銀の原料です。
　辰砂を空気中で４００～６００ ℃ に加熱すると、水銀
蒸気と亜硫酸ガス（二酸化硫黄）が生じます。この水銀蒸気
を冷却凝縮させると水銀になるのです。

　足見田神社に残る伝承に、神域の東にオシミ田という地が
あり、ここで農耕すする者は、口がきけない子を生む、とい
うものがあるそうです。
　『出雲国風土記』の仁多郡三沢の郷の条にある、アジスキ
タカヒコの神話の最後にも、

　「今も孕める婦人はその村の稲を食わず。もし食う者があ
れば、生まれる子はもの言わざるなり」

という一文があります。

　水銀中毒は胎児への影響が強いもので、水俣病の場合でも
母親が水銀を摂取してしまったために胎児に影響が及んだ
ケースが多く見られました。
　伊勢の足見田神社の伝承や『出雲国風土記』のアジスキタ
カヒコの神話にある、もの言わる子が生れる、というのも、
母親がこの地で採れた米を食べることが原因と伝えるもので、
土中に水銀が含まれていることを示唆します。


・・・つづく