どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

ポエム225 『稚児ユリは野に生きて』

2019-02-16 01:00:12 | ポエム

 

     稚児ユリ

    (城跡ほっつき歩記)より

 

 

 

  日当たりのいい雑木林に

  足を踏みいれると

  柔らかそうな緑の葉に

  星のような白い花

  ちょこんと乗っかっていた

 

  たぶん稚児百合だよね

  恥ずかしそうにしているので

  すぐに分かったんだ

  武家社会に根付いた特異な存在

  お小姓という制度があったことも

 

  史上で一番有名な稚児さんは

  美少年で知られた森蘭丸だよね

  気配りもよく織田信長の寵愛を受けた

  本能寺の変で主君とともに果てたが

  その生涯は後世まで語り継がれている

 

  認知されたのは戦国時代だったかな

  戦に不向きな女性に代わって

  身の回りの世話や夜の伽も務めた

  やがて合戦のない世の中になると

  稚児さんの存在は霞んでいった

 

  それでも春から初夏にかけて

  稚児ユリは下草の中から姿を現す

  可憐な白にわずかな翳りを帯び

  悲しくも雄々しい存在のあかしを

  歴史のページにとどめている

 

 

 

 

 

 

href="http://novel.blogmura.com/novel_short/"

 <短編小説ブログ・ランキング用バナー>が復活しました。

  

  

 


コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ポエム224 『後ろ姿の雪だる... | トップ | ポエム226 『ミミズクは夜の... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
稚児行列 (ウォーク更家)
2019-02-21 22:36:37
そうですか、これが稚児ユリですか。

そい言われれば、未だ大人になり切れない清楚で幼い印象です。

私は、稚児といえば、田舎の稚児行列を思い出します。
田舎のことですから、町内の稚児が全員着飾って参加する大イベントです。

なるほど、美少年の森蘭丸ですか。
稚児というには少し大人びた印象もあって、思いつきませんでした。
返信する
稚児行列の風習 (tadaox)
2019-02-22 11:03:36
(ウォーク更家)様、おはようございます。
河津桜が満開とのニュースを、花粉症の目をしょぼしょぼさせながらみています。

さて、稚児行列の経験がおありだとのこと、うらやましい限りです。
私の田舎にはそうした行事がなく、映像で見た記憶では雅で美しく、親子総出で祝う姿がリッチな気分にしてくれます。

作品に戻ると、確かに森蘭丸は稚児と見るには大人びていますが、元服前から主君に仕えて一般的に「稚児小姓」と呼ばれていたようです。
多岐にわたる仕事をこなす才人でもあったようですが、18歳で討たれてしまったのは哀れとしか言いようがありません。

コメントありがとうございました。
返信する

コメントを投稿

ポエム」カテゴリの最新記事