稚児ユリ
(城跡ほっつき歩記)より
日当たりのいい雑木林に
足を踏みいれると
柔らかそうな緑の葉に
星のような白い花が
ちょこんと乗っかっていた
たぶん稚児百合だよね
恥ずかしそうにしているので
すぐに分かったんだ
武家社会に根付いた特異な存在
お小姓という制度があったことも
史上で一番有名な稚児さんは
美少年で知られた森蘭丸だよね
気配りもよく織田信長の寵愛を受けた
本能寺の変で主君とともに果てたが
その生涯は後世まで語り継がれている
認知されたのは戦国時代だったかな
戦に不向きな女性に代わって
身の回りの世話や夜の伽も務めた
やがて合戦のない世の中になると
稚児さんの存在は霞んでいった
それでも春から初夏にかけて
稚児ユリは下草の中から姿を現す
可憐な白にわずかな翳りを帯び
悲しくも雄々しい存在のあかしを
歴史のページにとどめている
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そい言われれば、未だ大人になり切れない清楚で幼い印象です。
私は、稚児といえば、田舎の稚児行列を思い出します。
田舎のことですから、町内の稚児が全員着飾って参加する大イベントです。
なるほど、美少年の森蘭丸ですか。
稚児というには少し大人びた印象もあって、思いつきませんでした。
河津桜が満開とのニュースを、花粉症の目をしょぼしょぼさせながらみています。
さて、稚児行列の経験がおありだとのこと、うらやましい限りです。
私の田舎にはそうした行事がなく、映像で見た記憶では雅で美しく、親子総出で祝う姿がリッチな気分にしてくれます。
作品に戻ると、確かに森蘭丸は稚児と見るには大人びていますが、元服前から主君に仕えて一般的に「稚児小姓」と呼ばれていたようです。
多岐にわたる仕事をこなす才人でもあったようですが、18歳で討たれてしまったのは哀れとしか言いようがありません。
コメントありがとうございました。