芝桜
(城跡ほっつき歩記)より
赤の広場を埋めつくす女性兵士が
パープルルージュの唇を割っていっせいに叫んだ
スパシーバ芝桜クレムリンウバザクラ
地方都市の小学校の土手には
わんぱくな芝桜が無邪気な隊列を組んでいる
右へナラエ駆け足ゼンシン全体トマレ
マスゲームの一コマを静止画像で確かめると
朝日を浴びた鮮やかな統率の足並みは
なんと息詰めたシバザクラに似ていることか
腕取り肩組み堅牢な仲間となった芝桜よ
七つボタンの土浦海軍航空隊の跡地には
滑走路の割れ目からススキが顔を覗かせていたが・・・・
あの日流した感涙がウルウルと胸元を擽ってはいないか
郷愁の予科練ヨキカナ教習の少年飛行兵よきかな
おふくろの顔も霞みし湖に銀波は砕け現し世惜しむ
女性兵士のカーキ色の軍服に戦闘帽のナナメカブリ
貼り付いた笑顔が左右にユレル幼女の歌声怖し
世界はいっせいに台座の指導者を仰ぐか
チャクチャクと戦闘参加の準備は進んでいるか
したり顔の指導者はチャグチャグ馬っ子の首筋を撫でる
ヨシヨシおとなしくしてろよ誰よりも早く招集してやるからな
芝桜さんシバザクラさんあなたの特質は「いっせいに」
花のようで花ではない絵文字のようで絵文字でない
綺麗だから悩ましい美しいから恐ろしい
嗚呼 カラスが鳴く
ああ~ 母親が泣く
短日の移ろう原に累々と折り重なりし屍の数
規則正しく並んだ芝桜は
小さな花は桜よりも桜っぽくて
一つ一つが顔のようで
いっせいに同じ方向を見る姿から
戦争を想像されたのでしょうか?
赤の広場を埋めつくす女性兵士という表現が
なんとも寂しげで心に残ります
マスゲームの表現も素晴らしいです
気が付かなかっただけで
ホントにそうですね
いつも以上に
詩人の想像力と表現力の凄さに
深く感動させられました
素敵なポエムをありがとうございました
一つ一つは小さな可愛い花ですが、びっしりと地面を覆う繁殖力の強さに、ある種の脅威を感じたのも事実です。
ある動物行動学研究者は、人間同士の殺し合いを遺伝子の問題として説明しています。
長期にわたって蜂や蟻の行動を観察し、そこから導き出された結論だそうです。
もっとも芝桜にとっては迷惑な喩えかもしれませんが、戦争へと駆り立てる利己的遺伝子を阻止するために、
やむを得ず汚れ役を引き受けてもらった次第です。
今回もコメントをいただき、ありがとうございました。
芝桜は人工的に管理された自然公園などで見かけることが多いと思われますが、早春の低山などでも小さな群落を形成しているのが散見されることもあります。
外来種ゆえの性質かも知れませんが、水はけと日当たりの良い環境であれば、あまり寒さなどに関係なく2月上旬頃から開花しているのを確認できます。
また、一般に開花時期は3月から5月頃とされていますが、昨年12月の半ばに訪れた京都市内でも開花しておりました。
寒風吹きすさぶなか野生で生育しているその姿は頗る健気で愛らしい印象があり、公園の植栽など人工的に管理されているものの印象と大きく異なるように感じます。
ひとりひとりの個性が否定されるような世の中の再来だけは防がなくてはと感じる昨今であります。
「寒風吹きすさぶなか・・・・」という絶妙な描写に、あたかもその場に居合わせたような臨場感を味わわせていただきました。
一方、あまり意識していませんでしたが、公園などで人工的に植えつけられたサクラソウは、どこかそのような印象を与えるのかもしれません。
いずれにせよ、綺麗な花々を恣意的に扱うことに若干の後ろめたさを感じています。
とはいえ、手段は比喩しか持ち合わせないわけですので、これからも画像拝借よろしくお願いいたします。