どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

ポエム03 『立葵の風景』

2012-07-30 00:01:07 | ポエム

             
      タチアオイ

      (城跡ほっつき歩記)より 

 


庭先の立葵は
花嫁の蒼ざめた紅いろ
祝言の夜を前に
不安の風が胸元を吹きわたる


昨日まで陽光に焼かれた肌を
はたはたとパフで叩けば
打ち水の庭に似て
あえかな羞らいが立ち昇る


姉よ 三つ違いの姉よ 
花嫁になるな
憧れであり懊悩である幾多の日々を 
持ち去らないでくれ


思い出のカンバスには
暮れなずむ青い空と
立葵の紅い花びらが
ふるふると震えつづける


庭先に咲く丈高き遺伝子よ
来年はその場所に自生するな
浴衣のような艶やかさで
こちら側へ風を送るな


田舎の縁側から望む立葵
古風な慎みを秘めて匂い立つ夏の情念
旧盆には 盆花とともに摘み
真菰の馬に乗せてやろう


(すでにはや祝言のざわめきが聴こえる)


人の世の仕来たりなど
立葵の花にも及ばぬ
花弁ににじむ蠱惑の色に
気づく者など どこにもいない

 


  

  

  


コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« (超短編シリーズ)74 『... | トップ | どうぶつ・ティータイム(1... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ご利用ありがとうございまする (小頭@和平)
2012-07-30 20:56:31
こんばんは。
はじめまして。
この度は拙HPの画像をご利用いただき、心より御礼を申し上げます。
因みに「植物図鑑」のアクセス中では、唯一ダントツの2万件越えをしておりまする。
撮影した画像は主に城館めぐりや仕事先にて撮影をしたものでございます。
素晴らしいポエム拝見をいたしました。
果たしてお役に立ったかどうか、誠に汗顔の至りでございます。
今後とも宜しくお願いを申しあげます。
返信する
立葵の風情に魅かれて (窪庭忠男)
2012-07-31 00:04:06
(小頭@和平)さま、こんばんは。
このたびは「植物図鑑」の美しい画像を利用させていただきありがとうございました。
立葵をイメージして詩を書きはじめたとき、貴HPの画像に出会いました。
正直これほどイメージ通りの立葵に遇えるとは思いませんでした。
ふだん詩や小説に画像を添えることはないのですが、今回は切り離せなくなってしまい転載のお願いを申し上げた次第です。
他のタチアオイもすばらしく、また城館にまつわる話も興味深く、今後たびたび訪問させていただくことになりそうです。
快く画像使用を了解していただき、さらにコメントまでいただき、心から感謝しております。ありがとうございました。
返信する

コメントを投稿

ポエム」カテゴリの最新記事