どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

ポエム40 『志乃とアメジストセージ』

2014-03-08 08:49:21 | ポエム

 

      アメジストセージ

      (城跡ほっつき歩記)より

 

 

地中から掘り出された紫水晶を

志乃さんは欲しくありませんか

そう 磨かれたアメジストのことです

世界一の産地から運ばれた 真実の愛の象徴を・・・・

 

ぼくのふる里は雪の下 弱いひかりに導かれて

外につながっているのです

兄も姉も自分の運命に戦き 自らひかりを断ちました

そのような血筋のぼくを よくぞ選んでくれました

 

志乃は あなたの愛に命を捧げました

雪の祠に籠る 青いひかりが祝福の印です

早朝に目覚めると 志乃の傍にはあなたがいる

シャンシャンと通りすぎる馬橇の音が あなたの鼓動と重なります

 

志乃さん その青をぼくは紫にする

地上に現れたアメジストセージが 永遠の契の色です

リオデジャネイロで採掘した世界一の紫水晶よりも

アドリア海の色を映した薬用サルビアが 最もあなたにふさわしい

 

アメジストセージですか バルカン半島に根付いた希望の植物

南欧の太陽を浴びた その花の輝きは鮮やかすぎませんか

薬草の系譜をつなぐ ハーブのたくましさは

志乃の生い立ちには 眩しすぎはしませんか

 

石言葉も 花言葉も

手にとった時には みな退色のさなか

二月の誕生石と 忍耐の花を寿ぐ歓びを

志乃さん ぼくたちは共に睦み合おう

 

アメジストセージは 究極の癒し

地中海の風に乗って 吹雪が舞う夢を

あなたの腕にすっぽり包まれて

志乃は 永遠に見ていたいのです

 

 

 

 

  * 志乃=『忍ぶ川』のヒロイン


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8 コメント

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創造力に感嘆 (くりたえいじ)
2014-03-09 12:31:15
一読させていただいて作者の果てしない空想力や創造性に驚嘆いたしました。

例えば、突然、現れた志乃という麗人(?)に空想力を掻き立てられます。
この一輪の花と、その人とがどんな関係にあるのか、想像するしかありませんが、いかにも、しっとりと描かれているように思えます。

同時に、斬新に言葉使いが散り込められており、すべてがこの花を愛でているように感じられます。

ともあれ、一葉の写真から、これほどの空想力と語彙を生み出すのか、感嘆するばかりです。
撮影者冥利にも尽きることでしょう。
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志乃さんにあげたい (tadaox)
2014-03-09 22:39:00
くりたさん、ありがとうございます。
志乃さんは『忍ぶ川』のヒロインをイメージしました。
雪に閉じ込められる北国の冬、夫の愛とともに、初めて自分の家と呼べる場所を手にいれた新妻の悦びが切なく胸を打つ小説でした。

ともすれば忍耐ばかりが付きまとう印象の志乃さんに、鮮やかなアメジストを配してみたい。
アメジストセージは、まさに心の宝石・・・・この画像を志乃さんにあげたいと思いました。
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アメジストセージの花 (katakuri)
2014-03-10 05:22:34
先日読ませていただいた時
この花と志乃という純和風のイメージの女性が
結びつきませんでしたが
「忍ぶ川」のヒロインからとあり納得できました。

このお花も咲き始めの然も何輪かしかついてない物の方が
志乃さんにピッタリかと思います。

このお花からこれだけの文章を紡ぎだす
想像力と文章力に脱帽です(^_-)-☆

前回の「長谷良子」さんの「朝会うあの場所で」
「aqua様」同様読んでみたかったですねえ~
名前の文字が同じなので
余計にどんな方だったのかと思いました。

切ない文章いいですね(*^_^*)
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咲き始めのアメジストセージ (tadaox)
2014-03-10 17:54:25
(katakuri)様、こんにちは。嬉しいコメントをいただき、恐縮しています。
ところで仰有るとおり、志乃さんには咲き始めの花がピッタリかもしれませんね。そのように思わせる初々しさが、「忍ぶ川」が長く支持される要素の一つかと思います。

また、長谷良子さんの作品「その年の秋」(1作のみ)についてですが、以前当ブログで「凱」という同人誌を紹介しておきましたので、発行元から取り寄せる方法はあるかと思います。(書評カテゴリー『同人雑誌の中の名作を読む』)=どうぶつ・ティータイム(159)の末尾に住所等掲載してありますので、参照して戴ければ幸いです。


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女性像 (aqua)
2014-03-11 12:04:46
tadaoxさま こんにちは

何度も読ませてもらい
アメジストセージという洋風な花から
志乃という女性像にたどり着くまで
時間がかかりました

志乃という名は
女優の『池波志乃さん』しか思い出せずに
しっとりとした和服の似合う
日本女性のイメージかなと思ってました

コメントを拝見して
しのぶ川の志乃さんだったのですね

『しのぶ川』はずっと昔に
父が持ってた文庫本で読んだような気がします

記憶が薄れかけてたので
You Tubeの動画を見ました
ちょっと色っぽかったですが
紫水晶の上品な色と
やさしい煌めき
それと艶やかなアメジストセージの花が
女性像志乃によく合い
読み手にいろんな想像力を掻き立てる
独特の表現力は
さすがtadaoxさまだと思いました

ありがとうございました









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映画もいいですね (tadaox)
2014-03-11 20:32:54
(aqua)様、こんばんは。皆様を混乱させてしまったようで済みません。
若い時に衝撃を受けた小説でしたので、自分のイメージが先行し少し説明不足だったかもしれません。

You Tubeの動画をご覧になったとのこと、小説とは違った意味で純愛のすばらしさが伝わってくる映画でした。
なんとかアメジストの艶やかさにつなげていただき、感謝しています。ありがとうございました。
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古い画像で失礼を (小頭@和平)
2014-03-13 00:10:24
今晩は。

約10年前近くに撮影した古い画像です。
このような画像が、ご創作の一助とさせていただき、誠に光栄に存じます。
撮影機材は多分ニコンD70のミニズーム18-135ミリだったと記憶しております。

街中を歩いておりますと、しばしば見かけることも少なくないのですが、他所様の庭先であることと、どことなく人手が入りすぎているような印象があり、その後はなかなか自生に近い自然な雰囲気の被写体に遭遇する機会に恵まれません。

なお、この画像のものは埼玉県の熊谷市(旧江南町)の耕作地(低湿地の地形なので、元は水田と思われます)の道端に、なかば自生していたものです。
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貴重な画像を (tadaox)
2014-03-13 15:53:26
(小頭@和平)様、今回はアメジストセージの画像を使用させていただき、ありがとうございました。

この花がもともと園芸種なのかどうかわかりませんが、撮影時の解説をお聞きし、自生種を思わせる奔放な花穂の姿も納得がいきました。

いよいよ多彩な花の季節、これからも自然な野草の画像をお見せくださいますようお願いいたします。
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