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どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

ポエム(293) 『割り箸のうた』

2021-03-08 00:00:05 | ポエム

まあ いいってことよ

みんな急いでいるんだろう?

円筒の箸立てから無造作に引き抜いて

ぱちんとオイラを二つにするわけさ

 

中にはオイラの片身を口にくわえ

無理やり引き離す横着者もいる

オイラだって多少は抵抗するもんだから

割られたとたんに唇を蹴飛ばすこともある

 

おッ痛てえ こいつ根性ワルイわ

二つになったオイラに文句を言う輩もいる

均等に割れずに片方だけがナイフのよう

それでも背丈の長短を気にせずソバに突っ込む

 

駅のホームの立ち食いそば屋は

なりふり構わぬ通勤客でそこそこ込み合う

入り口の自動販売機で買った食券をポンと置くと

ニ十秒後には へいお持ちどうと注文の品

 

かき揚げソバでも月見そばでも

薬味の葱を申し訳程度のっけた上に

七味をパパッと振りかけ あとはオイラの出番

ふわんと匂いたつ汁の中からざばっと掬う

 

うーん けっこう旨いわ・・・・と舌がつぶやく

オイラ割り箸の分際だが 同感だな

なぜ お前に味がわかるかって?

数分過ぎれば箸の真皮まで味が染み入るからさ

 

どのみち上品とは言えない日常だよ ご同輩

オイラだって日陰の杉の間伐材なれば

ぎりぎり世に出ることだけで御の字さ

立ち食い常連のあなたとは持ちつ持たれつ

 

さあ すすってすすって立ち食いソバ

割り箸に嫌われたら今日一日は台無しさ

多少イスカニハシと食い違っても

しっかり運を挟んで口まで運ぼうじゃないか

 

 

 

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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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乗り換え駅ホームの立ち食いで (知恵熱おやじ)
2021-03-13 23:24:00
なぜかこの詩が投稿されていたことに気付きませんでした。
若いころ私にはとても身近な場面です。
長野県や岐阜県などの山奥の村などへの取材では、新幹線から地方鉄道に乗り換えることが少なくなかったのですが、わずかな接続の合間にホームの立ち食いそばを時間を気にしながら掻き込むスリルがたまらなく好きでした。
土地土地独特の味わいもたまらなくて、5分でも余裕があればかならず食べました。
不思議にその土地の空気と一緒によく覚えていて、たまらなく懐かしく思い出す。
日本独特の風情ですね。
今となればちょっと贅沢な時間だ
返信する
ほんと、贅沢な時間 (tadaox)
2021-03-14 00:37:06
そうか、知恵熱おやじさんには馴染みの光景でしたか。
地方の取材、感慨深いことでしょう。
思えば、贅沢な時間でしたね。
返信する

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