ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

本物

2013-03-02 02:19:53 | Weblog
無性に父と会いたくなる時がある。

トリガーはわかっている。

3月は、私の誕生日があり、祖父の命日があり、
そして父の命日がある。
日本だったら、ついでにお彼岸がある。

そして、私が5歳のとき、
父はすごく無理をして、ピアノを誕生日にプレゼントしてくれた。
あれも3月だった。

両親が離婚して20年。
ほとんど父とは会話をしなかったけど、
私の準備が整って、父に歩み寄る覚悟ができ、
ある日、一緒にご飯を食べた。
そして、父があの日言ったのは「おまえ、まだピアノ弾くのか」だった。
この会話があってからも、もうすでに10年が経つ。

私が、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を弾きたいと言って
ピアノをおねだりしたのは4歳のとき。
小学生の頃、忘れられなかったのは、
テレビCMで使われていたパガニーニの主題による狂詩曲。

母がくも膜下で倒れて植物状態になったとき、
贖罪の気持ちをこめて練習したのが、ラフマニノフの前奏曲嬰ハ短調作品3の2。
そして私が大学の卒論に選んだのは、モンゴルによる中国の支配。
ラフマニノフの前奏曲嬰ハ短調作品3の2はモスクワの鐘の音で、
モンゴルによる侵攻は、重大な意味をもっていた。

そんなことを考えながら過ごした大学時代からも
すでに20年の時が経った。

ピアノを選びに行ったとき、父が言った言葉は、
「この中のピアノから、一番好きな音を選べ」だった。
だから私は一番好きな音が出るピアノを選んだ。
そして、父に対して言った言葉は、「私はこれでラフが弾きたい」だった。

当時幼稚園生だったので、ラフマニノフは舌が回らず、
私はいつもラフと呼んでいた。
あれはもう35年も前のことだ。

自分のなかで本物をつくる努力をすること。
その価値観を私にくれた両親に本当に感謝する。
本物は、他人から与えられるものではなくて、
自分の中から見いだすもの。

そんなことをラフマニノフの交響曲第2番第3楽章を聞きながら書く。

私はここのホルンがスゴく好きだ。


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