ゆっくり読書

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ウイグルの母 ラビア・カーディル自伝

2010-03-16 20:41:28 | Weblog
中国に一番憎まれている女性
ラビア・カーディル著、アレクサンドラ・カヴェーリウス著、水谷尚子監修、熊河浩訳、ランダムハウス講談社刊

中国は広い。万里の長城の西の果て、まだ中国の国土は続いている。

1993年にはじめて西安に行った時、トルコ系の顔をした人がたくさんいて驚いた。
なんといっても西安はかつての長安。中華文明の中心地だ。
その土地に、こんなにも漢民族とは違う顔をした人たちがたくさんいるなんて、
実際に自分で訪れるまでは想像しなかった。
シルクロードの終着点として栄えてきた西安の歴史を、
東西文化交流の軌跡を、住む人たちの顔が物語っていると思った。

その後、西へ行くにつれて、ますますトルコ系の人が増え、
言葉も服装も習慣も漢民族のそれとは大きく違って行った。

ウイグルでも頻繁に独立運動があるけれど、チベットほどは知られていないだろう。
それは、ダライ・ラマのような存在がウイグルにはいないからだとも言われている。

この本の主人公であり、語り手であるラビア・カーディルさんは、
ウイグル人がウイグル人らしく生きるためにずっと戦ってきた人で、
ウイグルの民族活動の象徴的人物だ。
卓越した商才から一代で巨万の富を築き、
全財産を中国人民政府に没収され、監獄にも入り、
現在はアメリカに亡命して、民族活動を続けている。
不屈の精神と民族への愛情で、ウイグル人の尊敬を集めている。

この本には、中国人民政府の不公平さが語られているけれど、
決して恨みがましくはない。
地道に少しずつ問題を解決していこう、という理性があふれている。
本人はかなり情熱的な人なのだろうと思うが、
ライターのカヴェーリウスさんがうまくまとめたのだろう。
500ページというボリュームだが、全般的にたいへん読みやすい。

最近は新疆にも漢民族の移住が進み、都市部では、ウイグル人の人口に占める割合が、
どんどん低くなっていると聞く。
そして、同時多発テロの影響もあって、
イスラム教を信じる人たちへの弾圧も厳しくなっていると聞く。

以前は、北京にもウイグル人が暮らす一角があった。
私がそこに入り浸っていたとき、あまり言葉が通じないなか、
ウイグル人の男性に大きくて黒い瞳でジッと見つめられると、
少しこわく思えた時はあったけど、
私は彼らが喧嘩するところを見たことがない。
一方、漢民族はよく路上で夫婦喧嘩をしていた。

私は、ウイグル人は、ウイグルの言葉を話し、
ウイグルの歴史を子どもに語り継ぎ、ウイグルの歌をうたって暮らせたらいいと思う。
そして他の少数民族にも、自分たちの文化を守る自由があればいいと思う。


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