(新)緑陰漫筆

ゆらぎの読書日記
 ーリタイアーした熟年ビジネスマンの日々
  旅と読書と、ニコン手に。

気まぐれ日記/世界規模での石炭需給の悪化をどう見るか

2008-03-22 | 時評
気まぐれ日記/世界は、石炭を食い尽くす

3月20日のワシントンポスト紙(電子版)は、次のようなタイトルで石炭の消費に関する長文の記事を報じた。(同サイトにアクセスし、上の方にあるSEARCH欄に、”coal can't" という文字を入れて検索すると、記事が出てきます)

 ”Coal Can't Fill World's Burning Appetite”


長い間、安価で信頼できるエネルギーー源としてみられていた石炭が突如供給不足となり、需要も世界的に高まっていると報じている。資源インフレの問題は、2年近く前から指摘されだしている。2006年6月15日のの「資源ウオーズ」と題する日経新聞の記事、同年8月に出版された『資源インフレ』(柴田明夫丸紅経済研究所長,日本経済新聞社)、などでも天然資源をめぐる争いが過熱していると指摘している。中東・アフリカ・中央アジアでの地政学的なリスクも報じられている。しかしこれらは、資源価格の上昇とどのように資源を確保するかという視点で述べられている。今回のワシントンポストの記事を読んでいると、この石炭資源の問題はもっと深刻なような気がする。要はぼう大な石炭需要と石炭価格の上昇、温暖化問題がグローバルに絡み合って、単なる資源の取り合いというレベルの話を越えている。世界的な視点での経済成長と温暖化問題を考える必要がある。難問である。

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(東京)/上海)/ベルリン/南ア・ヨハネスブルグ/ロンドン/インド・ニューデリーからの特派員のレポートが報ずるところでは)この5ヶ月で石炭価格は50%上昇した。悪天候、拙劣なエネルギー政策、備蓄不足、アジア地域の猛烈な需要などが主な原因としている。

オーストラリアの石炭積出港では、豪雨による影響で45隻の船舶が船積み待ち。中国とベトナムは、突如石炭の輸出を禁止、インドでは石炭の輸入量が増大。中国では、石炭不足のため、工場の稼働時間が低下、南アとインド、インドネシア・ジャヴァでは停電が頻発している。鉱山会社は、たなぼたの利益をあげている。日本では,古い石炭鉱山の採掘を再開した。ヨーロッパと日本のバイヤーは、高い価格での長期契約に走っている。そのおかげで、鉄鋼とコンクリートの価格は上昇し、インフレに火を注いでいる。世界の石炭消費量は過去6年で30%増えた。アメリカでは、発電の半分は石炭によっているが、その発電コストは上がらざるを得ない。そのうえ、CO2発生の問題もある。

中国の石炭消費は、世界最大、そのうえ毎年10%も消費量が増えている。石炭の埋蔵量は膨大であるが、いずれも内陸にあり、輸送が問題。そのため2007年は輸入量が輸出量を超えた。また南の方の地域では、石炭不足のため、発電制限がおきている。停電もひんぱんである。しかも政府は石炭と石油の価格を凍結しているので、このプライス・ポリシーでは、エネルギーの効率使用というようなことにはつながらない。

インドは、年率8~9%の経済成長で電力需要は増えるばかり。しかし石炭鉱山の大半は政府の管理下にあって、石炭価格は国際レベルの40%に抑えられている。石炭埋蔵量は多いが、深い地下にあり、それを掘削するインフラに欠ける。したがって2012年までは、むしろ5100万トンを輸入する予定だ。2022年までには1億3600万トンを輸入することになろう。


英国でも石炭消費量が増えている。2005年から2006年で石炭消費は9%アップ。今や、ロシア・豪州・コロンビア・南アそしてインドネシアから石炭を輸入している。

豪州は、前述したように天候不良に悩まされ、いまだに排水と汚泥の掻き出しに苦労している。おかげで、原料炭(コークス用炭)のスポット価格は3倍アップとなり、98$(トンあたり)と急騰した。南アも豪雨などで、石炭の燃焼にも問題があり、出炭できない。ベトナムも国内需要を優先し、輸出を絞っている。2015年までには、輸出禁止も検討されている。

そういう状況が、日本や韓国の鉄鋼メーカーに大きな影響を与えている。日鉄とJFE、ポスコ(韓国)は、先月ブラジルの鉱山会社ヴェイルと石炭価格の65%アップで合意した。($47.81→$78.90) 鉄鋼メーカーは、製品の価格に転嫁しようとしつつあり、日鉄は10~20%アップに予定しているい。そのため鉄鋼を多量に使用するメーカも、価格引き上げを考えている、カタピラー三菱やコベルコなどの建設機械メーカーもすでに製品価格を引き上げた。

 このよなうな石炭クライシス(危機)により、日本では石炭の生産量を増やしたり、アメリカでも増産の動きが出ている。中国では、石炭液化や石炭から化学原料をつくる動きが出始めている。その結果、石炭の価格が、石油や天然ガスの価格にリンクするということにもつながって行くかも知れない。そういう事が、石炭価格上昇につながれば、アメリカだけでなく世界経済のスタグフレーションにもつながることになりかねない。

さらに気候温暖化問題もある。ドイツでは原子力発電を廃止しようとして、電力業界は24基もの石炭火力発電計画を申請してきたが、それをどうするかというクリティカルな状況にきている。石炭火力を止めて、どうするのか、ということである。

発展途上国では、(経済)発展は至上の課題であり、石炭を使わないと言うことにはならない。中国やインドでは、(いまのところ)人口一人あたり温室ガスの発生量はまだ少ない。したがって多少の大気汚染は許すのか、それとも経済発展を抑えて貧困のままでおれ、というのかという難しい選択肢の問題になる。


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 しかし、私はこう考える。ある意味、日本にとってはこういうピンチはチャンスでもある。石炭の採掘・搬送・燃焼では、効率的で省エネルギーの優れた技術がある。CO2を膜で分離できる回収・貯留技術(CCS)がある。代替エネルギー技術開発でも進んでいる。これらをさらに推し進め、海外に提供して外交面でも有利な立場に立つこともできる。原子力発電でも、海外が取りやめているときに、営々絵と技術を磨き、経験を蓄積し、世界のトップレベルにある。

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2 コメント

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石炭 (九分九厘)
2008-03-23 17:13:48
どうやら、このブログは火、土曜日の週2回のペースなのでしょうね。
原油がバレル100ドルを越すようになると、熱カロリー原単位に比例して石炭も価格が当然上がってくるのも当然でしょう。長期契約や輸送の絡みで値上げの時期がずれて出てくるのでしょうね。オイルマネーの次はコールマネーですか。お金の流れが地政学的にも変わってきますね。原油の高騰が何時ごろまで続くか知れませんが、アメリカがかつての日本のように公的資金を大々的に投入しない限り、資金の流れが原油買いに動いて、しばらくはこの調子が続くのでしょうね。中国、インドでのエネルギー消費量が増大するにしても、原油価格はどこかでバランスすることになるのでしょうが、その価格はいかなる水準なのか、どこかの研究所あたりで研究しているのかな? 60~70ドルという説もあるようですが、ここあたりになると、石炭の利用も莫大な投資に合わなくなって、石炭利用度も落ちてくるのかも知れません。南アフリカの話ですがここ近年鉱物資源確保のための外国資本が異常に増えた経過がありますが、国の計画がずさんなことから現在電力不足に陥って、急きょ発電所の建設に取り掛かっているものの、5年ほどかかる予定だそうです。もちろん石炭利用の火力が中心になるようです。
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お礼 (ゆらぎ)
2008-03-24 20:39:01
九分九厘様
 お読み頂き、感謝です。おっっしゃるようにコール・マネーなどという言葉が出てきて、投機資金が石炭にも流入して行くと、価格が高騰するだけでなく、不安定にもなります。それは、ひいてはグローバルな経済の不安定にもつながりかねないので、困った問題です。その上インド・中国だけでなく東欧や南米、アフリカなども経済規模を拡大してゆくと、一体地球はどうなるのでしょうか?資源の取り合いから、地政学的な不安もでてきますね。
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