ロンドン(ダウ・ジョーンズ)英中銀イングランド銀行のキング総裁は3日、英国経済が今年緩やかながら着実な
回復を遂げるとの見方を示した。
キング総裁は公共放送局BBCラジオとのインタビューで、1-3月期国内総生産(GDP)はリセッション(景気後退
)入りを裏付けた悲観的な内容だったが、楽観すべき理由もあると述べた。
「情勢はまだら模様だが、回復の兆しは確かにある」とし、雇用統計や企業景況感が改善していることに触れた
。「年末にかけての着実で緩やかな景気回復が始まる、とみるのが妥当だろう」とも述べた。
英中銀は来週の金融政策委員会(MPC)で、債券買い入れ枠を3250億ポンドへと広げる可能性を検討する。
英中銀高官によるインフレ警戒発言や、公式指標が示すよりも実体経済は強いとの主張を受け、追加刺激策が実
施されるという投資家の期待はここ数週間で後退している。
キング総裁は3日、ポンド相場は最近高騰しているが、2007~08年の大幅なポンド安の恩恵を国内企業はまだ受
けていると指摘した。ポンドの大幅下落は英国経済の再均衡を促し、成長の軸足が重債務を抱えた消費者や政府
の支出から輸出と投資に移ることが期待されている。
「ポンド安の恩恵として私が考えるのは、以前に比べ輸出がしやすくなり、これまで輸入していた製品の代替品
を生産するのが容易になったと実感した国内企業があちこちにある、ということだ」とキング総裁は述べた。
2日遅くの講演でキング総裁は、金融危機の前段階で中銀高官らは金融システムに蓄積しているリスクを十分に
警告しなかったと認めた。英国では金融危機のさなかに住宅金融大手ノーザン・ロックが破綻し国有化され、そ
のほか複数の金融大手も破綻寸前に追い込まれた。
キング総裁は3日、当局の対応の再検証が今後行われる場合には、英中銀は快くそれに参加すると述べた。英国
の主要議員らはしきりに、イングランド銀行は危機で自らが果たした役割の徹底検証を怠ってきた、と批判して
いる。
オズボーン英財務相に批判的な向きは、英国経済の低迷は財務相が進めている財政緊縮策のせいだと主張してい
る。ただキング総裁は、過去1年半の不況は主に商品(コモディティー)・食品価格が予想以上に高騰したためだ
と述べた。こうした価格高騰の個人消費圧迫効果はようやく緩和し始めたにすぎないという。3月の消費者物価指
数(CPI)は前年同月比で3.5%上昇した。上昇率は昨年9月に記録した5.2%の頂点から大きく低下したものの、
中銀目標の2%を引き続き上回った。
「5年にわたり財政赤字削減に向けた緩やかな前進があり、ポンド相場が25%安と大幅下落し、経済の再均衡が
達成される、というのが戦略だった。事態を受けた、まさに理想的な対応策だった。手取り給与の締め付け圧力
がエネルギーおよび食品価格の高騰で悪化していなければ、現時点で経済は成長していたはずだ」と語った。
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