第一の問題はスペイン問題です。
スペインのデギンドス財務相は「スペインは金融支援についてどことも打ち合わせはしていない」と発言、ドイツの財務大臣もFRBも同様の発言をしています。つまり、スペインはまだ健全であり、金融支援を受ける段階には至っていないのだということを訴え、世界のスペインに対する評価を打ち消すのに躍起になっています。
それほどスペインの状況は悪くなっているとも言えます。最近数週間の経済統計のほとんど全てが、スペインの経済が広範に縮小していることを示しています。30日にはスペインの16銀行が格付け引き下げをされ、国債格付けも2段階引き下げられています。ある専門家は「既にスペイン経済はリセッションに入っている」とし、今後の情勢は「一段と悪化する公算が大だ」としています。
つまり、フランスの大統領が代わって緊縮財政を進めることに壁が生まれたこと、ギリシャの選挙で与党が過半数を取れるかどうかが懸念され、過半数割れの場合には6カ月以内に総選挙が実施される状況にあり、欧州が進めている財政再建も株式市場にとっては悪材料になりますが、スペインでリセッションが起こり、国債が暴落し、デフォルト懸念が生まれれば、その影響は小国のギリシャとは比べ物になりませんので、株式市場に与える影響も大きい可能性があります。
フランス大統領選挙は予想通りサルコジ大統領が敗れてオランド氏が新大統領になりましたので、今後は世界中が「オランド氏の就任演説に注目」することになります。彼は緊縮財政よりも経済成長を優先すべきだと言って、ドイツとECBとIMFが進めている緊縮財政を批判しています。問題はオランド新大統領がどんな経済成長を描いているかです。
もし、財政出動を伴う経済成長を描いているとすれば「株式市場からノーと言われる」ことになりますので、欧州発の世界同時株安が起こるリスクがあります。これまで世界中で景気悪化を景気成長に変える努力がされてきましたが、その手法は「財政出動」と「金融緩和」がメインであり、この方法で成功した国はありません。
1996年にクリントン大統領が行った「スーパーハイウェイネットワーク構想⇒ITによる経済成長」というような、イノベーションによる経済成長や、日本が行おうとして失敗し、オーストラリアが成功した「規制緩和による起業」であれば、世界の株式市場は評価すると思います。
財政出動による経済対策は「真水が経済に注入されますので、GDPがアップします」から、通常は株式市場にとってプラス材料となりますが、今回は財政破綻が起こっているところに財政出動するわけですから、財政出動による経済対策は株式市場にとっても格付け機関にとってもマイナス評価になる可能性の方が高いのではないかと思います。
1)連休中の海外市場の株安でNYダウは3日続落、下げ幅は241ドルとなる。
2)日経平均は調整色が強まり、2月14日の「日銀の追加金融緩和」前の水準まで戻る。
3)為替市場も円高に振れ、円はドルで2月下旬以来の79円台に入ってきている。
連休明けの株式市場は海外株安を受けて、全面安のスタートとなりました。値下がり銘柄数は1500銘柄を超え、日経平均の261円の下落と、今年最大の下げ幅となりました。
連休後半の期間中のNYダウは3日続落し、その下げ幅は241ドルとなったため、本日の株式市場で一気に織り込むかたちとなりました。加えて6日(日)に判明した欧州の選挙結果を受けて、米株価指数先物が大幅下落していたことも本日の大幅下落につながりました。
米国をはじめとした海外の株式市場が大きく下落した要因としては、4日(金)に発表された米国の4月雇用統計の結果や6日(日)に行われたフランス大統領選挙やギリシャ総選挙を警戒しての欧州の政局不安が上げられます。
まず、米国雇用統計の結果は、非農業部門の雇用者数が11.5万人の増加となり、市場予想(16万人の増加)を大きく下回る結果となりました。欧州の選挙結果は、フランスで現職のサルコジ氏が敗北し、ギリシャ総選挙では反緊縮を掲げた急進左派連合が躍進する結果となりました。
リスク回避の動きは商品市場にも波及し、原油先物価格も1バレル98ドル台に大幅下落となり2月10日以来の100ドル割れとなりました。
■ 欧米の株式市場のチャートをチェック
欧米の主要市場の株価指数のチャートの「押し目率」をチェックしますと...
このように、NYダウやナスダックなどの米国の調整はまだ浅く、移動平均線から見ても75日移動平均線水準を維持しています。
一方、欧州市場では大統領選挙による政局不安の渦中にあったフランスの下落率が大きくなっています。また欧米主要指数は概ね昨年11月前後の安値を起点とした下値抵抗線のトレンドを割り込んではなく、中期的な上昇トレンドはまだ崩れてはいないと考えられます。
■ 日経平均と円ドルチャートをチェック
次に日経平均と円ドルチャートの「押し目率」をチェックしますと...
日経平均は半値押し水準を越える調整幅となり、欧米の主要株価指数に比べ、押しが深くなっています。今回の日経平均の上昇は、円安傾向が一番の要因と考えられ、今回の下落は欧米市場の下落より円高の影響が強いと考えられます。よって円高傾向の一服が、株式市場の反発のタイミングを捉える上でのポイントとなってくるのではないでしょうか。
週明けの日経平均は、連休中の悪材料をまとめて織り込んだ格好となっています。背景を考えましても、いよいよ「将来が不安で怖くて買えない」という転換点らしい相場展開なってきたと思われます。
今週は、レポートだけではなく、「森田の四路五動」「つぶやき」「3分市況」などのケンミレからの情報をぜひ注意してチェックしてください。
産経新聞によると、EUの経済・通貨政策を統括するレーン欧州委員会副委員長は5日、ブリュッセルで講演し、景気後退に陥った欧州経済に成長をもたらす景気刺激策を提案した。また、各国経済を圧迫しているEU財政規律を弾力的に運用する考えも表明した、と同紙は伝えている。
08:10(ダウ・ジョーンズ)フランス大統領選におけるオランド候補の勝利は必ずしも予想外ではないが、これに
よって欧州連合(EU)の求める緊縮財政を実施しようとする現職大統領が引き続き選出されることは難しいとい
うことが明らかとなったと、ナショナル・オーストラリア銀行(NAB)の通貨ストラテジスト、エマ・ローソン氏
は言う。緊縮策の行方についての疑問がユーロを圧迫しているとしたうえで、同氏は、現時点の状況はユーロに
とって難しいものとなるだろうと以前からみていたと指摘する。また、フランス、ギリシャおよびドイツの間で
対立が明らかになるだろうという。ドイツのショイブレ財務相は4日、確約を順守しない加盟国は結果責任を負う
ことになるだろうと指摘した。ユーロは現在、1.2988ドル付近をつけている。
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