今年7月、ホセ・クーラが出演したクロアチア・ザグレブでのコンサートの際に、その前後1週間、クーラの写真展(クーラが撮影者)が開催されました。
その様子を紹介したいと思います。
実は2年前の2016年にも、同じクロアチアのドゥブロヴニク・サマーフェスティバル2016で写真展が開催されたことがあります。クロアチアの芸術関係者による、多面的なアーティストとしてのクーラに対するリスペクトが感じられます。
→ ドゥブロヴニク・サマーフェスティバル2016での写真展についてのブログ記事
今回の写真展の会場は、クロアチアの首都ザグレブの中心にあるアートパビリオン。今年で120年の歴史をもち、現在も様々な企画展が開かれている美術館で、市のシンボルでもある建物だそうです。そしてコンサートは、このアートパビリオン前のトミスラフ広場で開催されました。
→アートパビリオンHPのクーラの写真展案内ページ
→ザグレブでのコンサートの様子は、「ホセ・クーラ 2018 夏のコンサート――ヴィンタートゥール、ザグレブ、ヴェスプレーム」で紹介しています。
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少年時代から写真が趣味のクーラ。公演のため世界中を旅行する時も、いつもカメラと一緒のようです。1998年に初来日した時に撮りためた写真も多数あり、今回の写真展でも展示されたようです。
インタビューで語っていますが、編集者に説得されて2008年に写真集を出版(『Espontáneas』――スペイン語で、“自発的な”、“自発性”のような意味か?)、時には、このように写真展の開催要請も受けています。クーラのインタビューをもとにした記事から、抜粋して紹介します。
≪ホセ・クーラのインタビューを紹介した記事より≫
JOSÉCURA ―― アルゼンチンのテノール、ホセ・クーラ、ザグレブ・クラシカとアートパビリオンで
「この展覧会では28枚の写真を展示している。日々の人通りの風景、普通の人・・そこには、レッド・カーペットも、スパークリング・ワインもない。これらは、普通の日常的な状況や出来事であり、私たちが無関心ではいられないもの。
これらの写真がどれほど示唆に富み、どれほど私たちがその中に引きつけられるか、それは驚くほどだ」
パビリオンのアートディレクターは言った。
展覧会のオープニングに出席したクーラは、写真は彼にとって45年以上にわたる趣味であると言った。彼は12歳の少年の時から写真を撮り始め、これまで数百万の写真を撮っている。
「私は専門家ではないので、技術的完成度を達成することは私の目標ではない。私はただ、まわりの世界を見せたいテノールだ。
黄金の檻に住むスターの魅惑的な生活の危険の1つは、現実世界とのつながりを簡単に失い、人々と結びつく糸を失い、現実が自分の生きている世界のようなものだと考え始めることだ。しかしそれは違う。
私は確固として信じている。アーティストは、物語を持っている人であり、その物語を伝えなければならない。もし自分が現実を生きていなければ、そこに物語はない。
人間の真実を伝えるためには、それらに触れる必要がある。そしてそうすることなしに、人生が本当にどういうものであるかを感じることはできない。」
とアーティスト(クーラ)は語った。
すべての写真の背後には物語があり、それは「個人的な要素」というべきもので、それらはすべて彼にとって重要なことなのだ。例えば彼は、イエスの像の足をさする人々の写真と、道で眠っているホームレスの写真を隣り合わせに置いている。
「私は疑問に思った。本当に必要な人に触れる方がはるかに意味があるとしたら、像の足をさする意味は何だろうか?」
とクーラは明かす。
・・
(「Nacional.hr」)
●別の記事より、クーラの発言抜粋
「ほとんどの人にとって、音楽は趣味だが、プロのミュージシャンとして私は何か他の趣味を見つけなければならなかった」
「私の写真は世界を変えることはないだろうが、私がステージでやっていることが好きなら、あなたはそれらを好きになるだろう」
(「promise.hr」)
≪SNSなどより、写真展の様子≫
●クーラのFB投稿 写真展入口の看板
●写真展のオープニングに展示されたケーキ。マジパンでできたクーラのミニチュアが飾られている。
実際に切って振る舞われたようですね。
●クーラのFBより、写真展の様子
左壁面
右壁面
●挨拶するクーラ
●パビリオンのFBに掲載されたニュース動画。日本で撮影されたと思われる写真も見えます。
≪主催者によるクーラの写真展紹介文より≫
JOSÉCURA ―― 著名なテノールのレンズを通過した人生
2018年のアートパビリオン創立120周年を記念して、世界的に有名なアルゼンチン人のテノール、ホセ・クーラが、ザグレブのトミスラフ広場でコンサートを行う。このコンサートは、パビリオン120周年を記念して行われる。
マエストロ・クーラが、長年写真を撮影してきた芸術的写真の愛好者であることを知り、パビリオンのディレクターは、写真の個展に招待した。この展覧会は、クーラのコンサートの開始2日前に開会し、7日間展示される。
写真家としてクーラは、「普通の」人々の日常生活に関心を持ち、明日には過去の一瞬となる、生きた瞬間を捉える優れた能力のために、写真という媒体を使用する。
写真のなかにおいてのみ、私たちはいつまでも若く、永遠に幸せ、または永遠に悲しく、そして永遠に愛することができる。写真は時間と感情の両方を止めることができ、時を経て、その感情が消滅した後でも、まだそこにあるかのように、画像のなかにそれらを焼き付けることができる。
写真撮影のこの魔法のような、非現実的な能力は、非常に魅力的だ。1回のシャッターで時間を保持する。数分の1秒で、錬金術師が何世紀もの間、求めたてきたこと、その実現を可能にする。寿命を伸ばす人生の妙薬を見つけることができる。写真家は錬金術師のようなもの。幸福、悲しみ、愛の妙薬を持っている。
写真家は目と手に力を持つ。写真はどのように見えるのかは、彼らがその能力をどう使うかによる。写真はその撮影者を反映する。作成者が過去に経験してきたことを反映したものが、今、蘇る。
カメラのレンズを通して、ホセ・クーラは、彼がそれを見る方法で、人生を写真を作成する。
そして彼は、確かにそれを憂鬱な光の中で見ている。
(アートパビリオンHPより)
コンサートの様子
*画像は主催者や関係者、クーラのFBなどからお借りしました。