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Rechtsphilosophie des als ob

かのようにの法哲学

刑法Ⅱ(各論)(第14回 練習問題)

2017-01-11 | 日記
 刑法Ⅱ(各論) 第14週 練習問題
(1)基本問題
1犯人蔵匿罪・証拠隠滅罪・証人等威迫罪
・犯人蔵匿罪(103)とは、「罰金刑以上の刑に当たる罪」(拘留・科料の罪を除く)を「犯した者」(真犯人だけでなく被疑者も含む)または拘禁中に逃走した者(逃走罪と加重逃走罪の行為者)に対して隠れるための場所を提供し、官憲の発見・逮捕を免れさせる行為をいう。

 犯人隠避罪とは、その者に対して逃避行為を行なうことを容易にするための行為をいう。

 証拠隠滅罪(104)とは、「他人の刑事事件に関する証拠」を「隠滅」し、「偽造」し、もくは「変造」する行為であり、また偽造・変造された証拠を行使する行為をいう。

 共犯者の1人が他の共犯者の証拠を隠滅した場合、その証拠は自分の刑事事件の証拠でもあるが、それを自己の利益のために行なう意思がなかった場合には、本罪が成立する。

 犯人が他人を教唆して、自己の刑事事件の証拠を隠滅させた場合、その他人には証拠隠滅罪の正犯が成立し、犯人にはその教唆犯が成立する(防禦権の濫用)。

 親族が犯人蔵匿・隠避、証拠隠滅を行なった場合、その刑が免除される可能性がある(105)。犯罪の構成要件該当性と違法性が認めれるが、それ以外の適法行為を行なうことを期待することが難しいので、責任が阻却される場合があるからである。それは親族に限られ、懇意にしている友人には適用されない。


・証人等威迫罪(105の2)とは、自己もしくは他人の刑事事件の捜査・審判に必要な知識を有すると認められる者またはその親族に対して、その事件に関して、正当な理由がないのに面会を強請(ごうせい)し、強談威迫の行為を行なうことをいう。


・いずれも捜査や審判などを妨害し、司法の作用が適正に執行されるのを危険にさらす行為である(危険犯)。


2偽証罪・虚偽告訴罪
・偽証罪(169)とは、法律に基づいて宣誓した証人が、虚偽の陳述をする行為である。偽証により裁判の判断が誤り、司法作用の適正を害するおそれがある。

 虚偽の陳述とは、証人がその記憶に反する陳述を行なうことをいうのか(主観説)、それとも客観的な事実に合致しない陳述を行なうことをいうのか(客観説)。判例は主観説の立場に立つ。客観的には真実に合致する陳述を行なっていても、記憶に反している認識がある場合には偽証罪にあたる。また、客観的に真実に反する陳述を行なっても、記憶に合致している認識による以上、偽証罪にあたらない。

 客観説の場合、客観的事実に合致していれば、記憶に反する陳述であっても客偽にあたらない。また、客観的事実に反する陳述であっても、記憶通りに陳述している認識があれば、その故意が否定される。

 偽証を行なった者が、裁判の確定または懲戒処分の執行の前に自首した場合、その刑が減軽または免除される場合がある(170)。刑の任意的減免によって司法作用や懲戒処分の適正の侵害を回避すためである。

 虚偽鑑定等罪(171)とは、法律により宣誓した鑑定人、通訳人または翻訳人が、虚偽の鑑定、通訳、翻訳をした行為である。偽証罪と同じく扱われる。


・虚偽告訴罪(172)とは、人に刑事または懲戒の処分を受けさせる目的から、虚偽の告訴、告発その他の申告をする行為である。

 虚偽告訴等を行なった者が、裁判の確定または懲戒処分の執行の前に自首した場合、その刑が減軽または免除される場合がある。刑の任意的減免による司法作用や懲戒処分の適正の侵害回避が目的である(173)。


3職権濫用罪
・公務員職権濫用罪(193)
 公務員が、その職権を濫用して、人に義務のない行為を行なわせ、または権利の行使を妨害する行為である。


・特別公務員職権濫用罪(194)
 裁判、検察もしくは警察の職務を行なう者またはそれらの職務を補助する者が、その職権を濫用して、人を逮捕し、または監禁する行為である。


・特別公務員暴行・陵辱・加虐罪(195)
 裁判、検察もしくは警察の職務を行なう者またはそれらの職務を補助する者が、その職務を行なうにあたり、被告人、被疑者その他の者に対して、暴行、陵辱もしくは加虐の行為を行なうことである。


・194条・195条の致死傷罪(196)
 194条・195条の罪を行ない、よって人を死傷させる行為である。結果的加重犯である。


4汚職の罪
・単純収賄罪・受託収賄罪・事前収賄罪(197)
 単純収賄罪とは、公務員が、その職務に関し、賄賂を収受・要求・約束する行為である。職務関連性については、公務員に職務の一般的・抽象的な権限があれば足り、当該公務員がその職務を担当していることまで要しない。賄賂とは、有形・無形を問わず、人の需要・欲望を満たす一切の利益をいう。

 公務員が「請託」、すなわち職務に関し一定の行為を行なうよう依頼を受けた場合には、受託収賄罪が成立し、加重処罰される。

 事前収賄罪とは、公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受・要求・約束する行為を行ない、その後、公務員になった場合に成立する。この「公務員になった場合」を客観的処罰条件という。


・第三者供賄罪(197の2)
 請託を受けた公務員が、贈賄側に第三者に賄賂を供与させ、それを要求し、または約束させる行為である。その第三者が事情を知っていた場合、その幇助が成立する。

 請託を受けなかった公務員が、贈賄側に賄賂を第三者に供与させるなどした場合、第三者供賄罪は成立しない。また自ら収受していないので、単純託収賄罪も成立しない。ただし、第三者が事情を知らなかった場合には、公務員には単純収賄罪の間接正犯が成立する。事情を知っていた場合、公務員には単純収賄罪の正犯が、第三者にはその幇助が成立すると解される。


・加重収賄罪・事後収賄罪(197の3)
 197条、197条の2の罪を行なった公務員が、不正な行為をし、または相当の行為をしなかった場合に加重処罰される(1項)。

 公務員が、その職務上不正な行為をし、または相当の行為をしなかったことに関して、賄賂を収受・要求・約束し、または賄賂を第三者に供与させ、その要求・約束をした場合も1項と同様とする(2項)。

 公務員が在職中に請託を受けて職務上不正な行為をし、または相当の行為をしなかったことに関して、退職後に賄賂を収受・要求・約束する行為である(3項)


・あっせん収賄罪(197の4)
 ある公務員が請託を受け、他の公務員に職務上不正な行為をさせるよう、または相当の行為をさせないように「あっせんすること」または「あっせんしたこと」の報酬として賄賂を収受し、またはその要求・約束をする行為である。


・没収・追徴(197の5)
 収賄罪の犯人または情を知った第三者が収受した賄賂は、没収する。それができないときは、その価額を追徴する。


・贈賄罪(198)
 197条から197条の4までに規定する賄賂を供与し、または申込み・約束する行為である。


・対向犯
 賄賂の供与(贈賄)と収受(収賄)、賄賂の供与の約束と収受の約束は、客観的に対向関係にある。ただし、賄賂の供与の申込みとその収受の要求は対向関係にはない。賄賂の供与を申し込んでも、断られることがあり、また賄賂の収受を要求しても、断られることがあるからである。


(1)犯人蔵匿罪・犯人隠避罪について
1犯人蔵匿罪における蔵匿について説明しなさい。







2犯人隠避罪における隠避について説明しなさい。







3犯人蔵匿罪。隠避罪における犯人の意義について説明しなさい。







4窃盗犯だと思って匿ったところ、収賄罪を行なった政治家であった場合の犯人の蔵匿の故意について論じなさい。







5犯人Aが他人Bに教唆して蔵匿行為を行わせた場合の罪責を論じなさい。







6証拠隠滅罪における証拠の意義について論じなさい。







7証拠隠滅罪における隠滅の意義について論じなさい。






(2)偽証罪について
1偽証罪の保護法益について論じなさい。







2偽証罪の行為主体の特徴について論じなさい。また、事後に宣誓した場合についても論じなさい。







3被告人の偽証は偽証罪にあたるでしょうか。







4陳述の虚偽性は何によって根拠づけられるでしょうか。学説の対立を論じなさい。







5被告人Aが証人Bを教唆して偽証させた場合の罪責を論じなさい。







6虚偽鑑定罪の意義について論じなさい。








(3)職権濫用罪について
1職権濫用罪の保護法益について論じなさい。








2職権の濫用とはどのような意味であるかについて論じなさい。






3特別公務員暴行陵虐罪の意義について論じなさい。






4特別公務員暴行陵虐罪の行為主体について論じなさい。また、本罪は構成的身分犯か、それとも加重的身分犯かについても論じなさい。







(4)賄賂罪について
1賄賂罪の保護法益について論じなさい。







2収賄罪の行為主体について論じなさい。






3収賄罪の行為について論じなさい。収受、要求、約束の関係についても論じなさい。






4収賄罪における職務の意義、そしてその関連性について論じなさい。






5過去の職務と関連がある場合の罪責を論じなさい。






6収賄罪における賄賂の意義について論じなさい。







7受託収賄罪における「請託を受けた」の意義について論じなさい。







8事前収賄罪における「公務員になった場合において」の意義について論じなさい。







9事後収賄罪の意義について論じなさい。







10いわゆる第三者供賄罪の意義について論じなさい。







11いわゆる「あっせん収賄罪」の意義について論じなさい。







12贈賄罪とは何か。論じなさい。また、それが必要的共犯(対抗犯)と呼ばれる意味を述べなさい。








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