Nо.083 逮捕・監禁罪(1)
監禁の罪に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し、正しい場合には1を、誤っている場合には2を選びなさい。
ア 深夜逃げ出すために岸まで泳ぐほか方法がない沖合に停泊中の漁船内において女子を強姦した後、その発覚をおそれて、強姦による恐怖がいまだ継続している女子を漁船内に閉じ込めたときは、脱出を著しく困難にしたものとして監禁罪が成立する。
イ 女子を姦淫する企図のもとに、自己の運転する第2種原動機付自転車の荷台に同人を乗車させて1000メートル余を疾走する行為は、逮捕罪にあたる。
ウ 人を逮捕し、引き続き監禁したときは、逮捕罪と監禁罪の2罪が成立するのであり、単純一罪となることはない。
エ 被害者を自動車のトランクに監禁して駐車中に、後続車両の運転手の著しい過失による追突事故で被害者死亡にいたったときは、監禁の手段たる暴行・脅迫から致死の結果が生じたとはいえないから、監禁致死罪が成立することはない。
オ 暴行・脅迫が不法監禁中になされたものであれば、それが不法監禁の状態を維持・存続させるための手段としてなされたものではなく、被害者の言動に対する憤激など個別の動機・原因からなされた場合であっても、この暴行・脅迫は監禁罪に吸収され、別罪を構成することはない。
Nо.084 逮捕・監禁罪(2)
逮捕・監禁罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合、誤っているものはどれか
(1)甲はAをアパートの1室に閉じ込め、「逃げたら殺すぞ、外で見張っているからな」と脅して、そのまま立ち去った。Aは見張られているものと誤信して部屋から出なかった。甲には監禁罪が成立する。
(2)甲は、その気がないにもかかわらず、A女を母親のところに連れて行くと騙して車に乗せた。A女は途中で甲の真意に気づき停車を要求したが、甲はこれを聞き入れずそのまま車を走らせ、数分後にA女は車から脱出して逃走した。甲には、A女を乗せた時点から監禁罪が成立する。
(3)甲と乙は、共謀して散歩途中のAを逮捕しようとし、甲があの前に立ちふさがり、乙が背後から飛びついた。その瞬間、パトロール中の警察官がやってくるのが見えたので、すぐに手を放して甲と乙は逃げた。甲らには逮捕罪は成立しない。
(4)甲は、情を知らない警察官を利用してAを留置させた。監禁罪は自手犯であり情を知らない第三者を利用して犯すことができないため、甲には監禁罪は成立しない。
(5)甲らは、労働争議に際して、約3時間40分にわたって円陣を作ってAを取り囲み、脱出を不可能にした。監禁罪が成立するためのは閉鎖された空間に監禁する必要はないため、甲らには監禁罪が成立する。
Nо.085 未成年者拐取罪
学生AからDは、未成年者略取および誘拐罪(以下「本罪」という)の保護法益に関して、次のⅠからⅣまでのいずれかの異なる【見解】に立ち、①から③までの【論点】について、後記のように【発言】している。学生と見解の組合として正しいものは、後記1から5までのうちどれか。
【見解】
Ⅰ 本罪の保護法益を未成年者の自由とする。
Ⅱ 本罪の保護法益を監護権者の監護権とする。
Ⅲ 本罪の保護法益を未成年者の自由と監護権者の監護権とする。
Ⅳ 本罪の保護法益を未成年者の自由と安全とする。
【論点】
(1)監護権者の同意がある場合に本罪は成立しううるか。
(2)未成年者の同意がある場合にも本罪は成立しうるか。
(3)本罪は継続犯か状態犯か。
【発言】
学生A ( )君の見解によれば、(1)にちては、監護権者の同意があるかぎり未成年者の意思に反しても本罪は成立しないことになるね。他方、( )君は、監護権者の同意があってもその同意は監護権の濫用であること、あるいは未成年者の自由が主たる法益であることを理由に本罪の違法性は阻却されないと解するのだね。
学生B ( )君や( )君の見解によれば、(2)については、十分な判断能力をもった本人の同意があれば、本罪は成立しないね。
学生C ( )君の見解によれば、(3)については、自由の侵害が回復するまでは、本罪は終了しないから、継続犯と解することになるね。
学生D その点について、( )君は、未成年者の身体の安全に重点をおいて、未成年者を自己の支配下において時点で犯罪は終了し、以後は違法状態が続く状態犯と考えているようだね。僕は、本罪は一般に継続犯であると解するけれど、被拐取者が、嬰児や高度の精神病者のように、まったく行動の自由を欠く者である場合には、その犯罪性は、もっぱら監護権の侵害に認められるから、状態犯と解するよ。
(1)AⅠ―BⅣ (2)AⅣ―CⅡ (3)BⅠ―CⅣ
(4)BⅡ―DⅠ (5)CⅣ―DⅢ
Nо.086 住居侵入等に関する罪(1)
住居侵入等の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合、誤っているものはどれか。
(1)甲は、長期間の家出中に生活資金が底をついたため、両親の家に強盗目的で立ち入った。この場合、甲には住居侵入罪が成立する。
(2)甲は、自衛隊のイラク派兵に反対する旨のビラを自衛隊の宿舎の各号棟の各居室の玄関ドアの新聞受付に投函する目的で、同宿舎の敷地内に立ち入ったうえ、各棟の各階段1階出入口から4階の各居室玄関前までの建物共用部分に立ち入った。この場合、敷地・建物共用部分は居室と一体をなすから、甲には住居侵入罪が成立する。
(3)甲は、強盗の目的を隠して隣人のAに「こんばんは」とあいさつし、Aが「おはいり」と答えたことに応じてAの家に立ち入った。この場合、甲には住居侵入罪が成立する。
(4)甲は、現金自動預払機利用客のカードの暗証番号を盗撮する目的dえ、現金自動預払機が設置され、銀行員が常駐しないA銀行支店出張所に一般の利用客のように装いながら立ち入った。この場合、甲には建造物侵入罪が成立する。
(5)甲は、交通違反などの取締りにあたる覆面パトカーの車種やナンバーを把握するため、A警察署を囲む塀をよじ登り、その上部に立って同署の中庭を確認していたところ、これを現認した警察官に現行犯逮捕された。この場合、甲には建造物侵入罪が成立する。
Nо.087 住居侵入等に関する罪(2)
学生AとBは、「甲は、強盗の目的で、凶器をコートの下に隠し持ち、乙の家の玄関前に立って『新聞代金の集金に参りました』と大声で言った。これを信じた乙は、玄関の鍵を開けて、甲を家の中に入れた」との事例における甲の住居侵入罪の成否について、議論している。会話中の( )内に【語句群】から適切な語句を入れた場合。( ① )から( ⑩ )までに入るものの組合せとして正しいものは、後記1から5までのうちどれか。
学生A 住居侵入罪は個人的法益に対する罪であるから、法益主体である居住者が同意すれば、その立入りは「侵入」にはあたらない。
学生B そのとおりだけど、本事例では、乙の同意に錯誤がある展が問題となるね。僕は、住居侵入罪の保護法益について、( ① )と考える。そして、同意については、( ② )と考えるけれど、本事例においては、( ③ )ので、甲の同意は( ④ )といえる。従って、( ⑤ )という結論になる。
学生A でも、住居侵入罪の保護法益についての君の見解は、( ⑥ )という問題があるね。僕は住居侵入罪の保護法益については、( ⑦ )と考えたうえで、問題の解決は、同意の有効性の局面において図られるべきだと思う。僕は、君と異なり、( ⑧ )と考えるから、本事例においては、行為の同意は( ⑨ )といえる。したがって、( ⑩ )という結論になる。
【語句群】
a 有効である
b 無効である
c 甲に住居侵入罪は成立しない
d 甲に住居侵入罪が成立する
e 住居の事実上の平穏である
f 居住者の自己の住居への立入りを認めるか否かの自由である
g 居住者がおよそ立入りそのものに同意している場合には、立入りの目的に関する錯誤があってもそれは動機の錯誤であって法的に重要ではなく、本罪は成立しない
h 居住者の真意に基づく同意がある場合には、本罪は成立しない
i 住居侵入罪の保護法益の主体が個人から離れたものと考えられ、本罪はむしろ社会的法益に対する罪と考えることになってしまう
j 強盗をしようとする者が立ち入るとは思わずに同意したものであり、この点の錯誤は住居の平穏にとって重大な影響を及ぼす
(1)①e④a⑨b (2)②h⑤c⑥i (3)③j⑥i⑨a
(4)④a⑤d⑧h (5)⑦f⑧g⑩d
監禁の罪に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し、正しい場合には1を、誤っている場合には2を選びなさい。
ア 深夜逃げ出すために岸まで泳ぐほか方法がない沖合に停泊中の漁船内において女子を強姦した後、その発覚をおそれて、強姦による恐怖がいまだ継続している女子を漁船内に閉じ込めたときは、脱出を著しく困難にしたものとして監禁罪が成立する。
イ 女子を姦淫する企図のもとに、自己の運転する第2種原動機付自転車の荷台に同人を乗車させて1000メートル余を疾走する行為は、逮捕罪にあたる。
ウ 人を逮捕し、引き続き監禁したときは、逮捕罪と監禁罪の2罪が成立するのであり、単純一罪となることはない。
エ 被害者を自動車のトランクに監禁して駐車中に、後続車両の運転手の著しい過失による追突事故で被害者死亡にいたったときは、監禁の手段たる暴行・脅迫から致死の結果が生じたとはいえないから、監禁致死罪が成立することはない。
オ 暴行・脅迫が不法監禁中になされたものであれば、それが不法監禁の状態を維持・存続させるための手段としてなされたものではなく、被害者の言動に対する憤激など個別の動機・原因からなされた場合であっても、この暴行・脅迫は監禁罪に吸収され、別罪を構成することはない。
Nо.084 逮捕・監禁罪(2)
逮捕・監禁罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合、誤っているものはどれか
(1)甲はAをアパートの1室に閉じ込め、「逃げたら殺すぞ、外で見張っているからな」と脅して、そのまま立ち去った。Aは見張られているものと誤信して部屋から出なかった。甲には監禁罪が成立する。
(2)甲は、その気がないにもかかわらず、A女を母親のところに連れて行くと騙して車に乗せた。A女は途中で甲の真意に気づき停車を要求したが、甲はこれを聞き入れずそのまま車を走らせ、数分後にA女は車から脱出して逃走した。甲には、A女を乗せた時点から監禁罪が成立する。
(3)甲と乙は、共謀して散歩途中のAを逮捕しようとし、甲があの前に立ちふさがり、乙が背後から飛びついた。その瞬間、パトロール中の警察官がやってくるのが見えたので、すぐに手を放して甲と乙は逃げた。甲らには逮捕罪は成立しない。
(4)甲は、情を知らない警察官を利用してAを留置させた。監禁罪は自手犯であり情を知らない第三者を利用して犯すことができないため、甲には監禁罪は成立しない。
(5)甲らは、労働争議に際して、約3時間40分にわたって円陣を作ってAを取り囲み、脱出を不可能にした。監禁罪が成立するためのは閉鎖された空間に監禁する必要はないため、甲らには監禁罪が成立する。
Nо.085 未成年者拐取罪
学生AからDは、未成年者略取および誘拐罪(以下「本罪」という)の保護法益に関して、次のⅠからⅣまでのいずれかの異なる【見解】に立ち、①から③までの【論点】について、後記のように【発言】している。学生と見解の組合として正しいものは、後記1から5までのうちどれか。
【見解】
Ⅰ 本罪の保護法益を未成年者の自由とする。
Ⅱ 本罪の保護法益を監護権者の監護権とする。
Ⅲ 本罪の保護法益を未成年者の自由と監護権者の監護権とする。
Ⅳ 本罪の保護法益を未成年者の自由と安全とする。
【論点】
(1)監護権者の同意がある場合に本罪は成立しううるか。
(2)未成年者の同意がある場合にも本罪は成立しうるか。
(3)本罪は継続犯か状態犯か。
【発言】
学生A ( )君の見解によれば、(1)にちては、監護権者の同意があるかぎり未成年者の意思に反しても本罪は成立しないことになるね。他方、( )君は、監護権者の同意があってもその同意は監護権の濫用であること、あるいは未成年者の自由が主たる法益であることを理由に本罪の違法性は阻却されないと解するのだね。
学生B ( )君や( )君の見解によれば、(2)については、十分な判断能力をもった本人の同意があれば、本罪は成立しないね。
学生C ( )君の見解によれば、(3)については、自由の侵害が回復するまでは、本罪は終了しないから、継続犯と解することになるね。
学生D その点について、( )君は、未成年者の身体の安全に重点をおいて、未成年者を自己の支配下において時点で犯罪は終了し、以後は違法状態が続く状態犯と考えているようだね。僕は、本罪は一般に継続犯であると解するけれど、被拐取者が、嬰児や高度の精神病者のように、まったく行動の自由を欠く者である場合には、その犯罪性は、もっぱら監護権の侵害に認められるから、状態犯と解するよ。
(1)AⅠ―BⅣ (2)AⅣ―CⅡ (3)BⅠ―CⅣ
(4)BⅡ―DⅠ (5)CⅣ―DⅢ
Nо.086 住居侵入等に関する罪(1)
住居侵入等の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合、誤っているものはどれか。
(1)甲は、長期間の家出中に生活資金が底をついたため、両親の家に強盗目的で立ち入った。この場合、甲には住居侵入罪が成立する。
(2)甲は、自衛隊のイラク派兵に反対する旨のビラを自衛隊の宿舎の各号棟の各居室の玄関ドアの新聞受付に投函する目的で、同宿舎の敷地内に立ち入ったうえ、各棟の各階段1階出入口から4階の各居室玄関前までの建物共用部分に立ち入った。この場合、敷地・建物共用部分は居室と一体をなすから、甲には住居侵入罪が成立する。
(3)甲は、強盗の目的を隠して隣人のAに「こんばんは」とあいさつし、Aが「おはいり」と答えたことに応じてAの家に立ち入った。この場合、甲には住居侵入罪が成立する。
(4)甲は、現金自動預払機利用客のカードの暗証番号を盗撮する目的dえ、現金自動預払機が設置され、銀行員が常駐しないA銀行支店出張所に一般の利用客のように装いながら立ち入った。この場合、甲には建造物侵入罪が成立する。
(5)甲は、交通違反などの取締りにあたる覆面パトカーの車種やナンバーを把握するため、A警察署を囲む塀をよじ登り、その上部に立って同署の中庭を確認していたところ、これを現認した警察官に現行犯逮捕された。この場合、甲には建造物侵入罪が成立する。
Nо.087 住居侵入等に関する罪(2)
学生AとBは、「甲は、強盗の目的で、凶器をコートの下に隠し持ち、乙の家の玄関前に立って『新聞代金の集金に参りました』と大声で言った。これを信じた乙は、玄関の鍵を開けて、甲を家の中に入れた」との事例における甲の住居侵入罪の成否について、議論している。会話中の( )内に【語句群】から適切な語句を入れた場合。( ① )から( ⑩ )までに入るものの組合せとして正しいものは、後記1から5までのうちどれか。
学生A 住居侵入罪は個人的法益に対する罪であるから、法益主体である居住者が同意すれば、その立入りは「侵入」にはあたらない。
学生B そのとおりだけど、本事例では、乙の同意に錯誤がある展が問題となるね。僕は、住居侵入罪の保護法益について、( ① )と考える。そして、同意については、( ② )と考えるけれど、本事例においては、( ③ )ので、甲の同意は( ④ )といえる。従って、( ⑤ )という結論になる。
学生A でも、住居侵入罪の保護法益についての君の見解は、( ⑥ )という問題があるね。僕は住居侵入罪の保護法益については、( ⑦ )と考えたうえで、問題の解決は、同意の有効性の局面において図られるべきだと思う。僕は、君と異なり、( ⑧ )と考えるから、本事例においては、行為の同意は( ⑨ )といえる。したがって、( ⑩ )という結論になる。
【語句群】
a 有効である
b 無効である
c 甲に住居侵入罪は成立しない
d 甲に住居侵入罪が成立する
e 住居の事実上の平穏である
f 居住者の自己の住居への立入りを認めるか否かの自由である
g 居住者がおよそ立入りそのものに同意している場合には、立入りの目的に関する錯誤があってもそれは動機の錯誤であって法的に重要ではなく、本罪は成立しない
h 居住者の真意に基づく同意がある場合には、本罪は成立しない
i 住居侵入罪の保護法益の主体が個人から離れたものと考えられ、本罪はむしろ社会的法益に対する罪と考えることになってしまう
j 強盗をしようとする者が立ち入るとは思わずに同意したものであり、この点の錯誤は住居の平穏にとって重大な影響を及ぼす
(1)①e④a⑨b (2)②h⑤c⑥i (3)③j⑥i⑨a
(4)④a⑤d⑧h (5)⑦f⑧g⑩d