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Rechtsphilosophie des als ob

かのようにの法哲学

19刑法Ⅱ(第08回)短答問題(113~119)

2019-11-11 | 日記
Nо.113 不法原因給付と横領罪
 次の【事例】について、学生AからCが後記【会話】のとおり議論している。【会話】中の①から③までの(  )内に入る学生の発言として正しいものを後記【発言】から選んだ場合、正しいものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。

【事例】
 Xは、公務員Yに賄賂として骨とう品のつぼを贈与しようと考え、甲に対してYのところにとどけるよういら依頼したが、甲はそのつぼを他人に売却し、その代金を遊興費として消費してしまった。

【学生】
学生A 民法第708条本文は、不法な原因に基づいて給付をなした場合は不当利得返還請求をできない旨規定している。しかし、民法第708条の適用があるとしても( ① )。したがって、僕は、甲に委託物横領罪は成立すると考える。

学生B しかし、A君の考えは民法上保護されない所有権を刑法において保護することになり、法秩序の統一性という見地からみて疑問である。僕は( ② )ので、不法原因給付物は、受給者にとって「他人の物」ではないことになる。したがって、甲には委託物横領罪は成立しないと考える。

学生C 基本的にB君に賛成だ。ただし、本事例のように( ③ )。不法な原因に基づくにせよ、不法原因寄託物について寄託者にその変換請求権を認めることは不法な目的の実現を未然に防止するだけでなく、受託者に不法な原因に基づく利益を与えないためにも必要だからである。したがって、本事例においては、結論としてA君に賛成だ。

学生B C君は不法原因給付を限定的に理解し、「給付」とは終局的な利益を移転することであり、不法な目的に基づいて物を寄託するのは給付にあたらないと考えているようだね。しかし、そのような解釈は民法において採られていないし、不法原因給付にあたらないとしても、不法な委託関係は保護に値しないから、委託物横領罪の成立を認めることはできないのではないかと疑問もある。

【発言」
ア 委託物横領罪の目的物は単に犯人の占有する他人の物であることを要件としているだけであって、必ずしも物の給付者において民法上その返還を請求しうべきものであることを要件としていない

イ 占有のみを移転する意思であった場合には民法第708条の適用を認めるべきではないと考える

ウ 不法原因給付においえてゃ、給付者が給付物の返還を請求できないことの反射的効果として、その所有権は受給者に帰属すると考える

(1)①ア②イ③ウ (2)①ア②ウ③イ (3)①イ②ア③ウ 
(4)①ウ②ア③イ (5)①ウ②イ③ア


Nо.114 不動産の二重売買
 次の【記述】中の①から⑤までの(  )内に後記【語句群】から適切な語句を入れた場合、(  )内に入るものの組合せとして正しいものは、後記1から5までのうちどれか。

【記述】
 「甲が不動産をいったんAに売却し、代金の支払がなされた後、所有権移転登記を経ない間に、これを奇貨として当該不動産に更に( ① )である乙に売却し、これを登記したという場合に関して、『自己の占有する』とは、物に対する事実上の支配だけでなく、法律上の支配をも含むこと、甲はAに不動産を譲渡したことを告知する義務があるのにこれに違反して不動産をさらに( ① )たる乙に売却した点において乙を欺いたといえることを根拠に甲に( ② )という見解がある。これに対して、後者の根拠については乙は所有権移転登記をすませればAに優先してその不動産の所有権を取得することができるのであるから財産上の損害を被ることはないので、甲には告知義務はないと批判して、甲には( ③ )との見解もある。
 また、甲が不動産をいったんAに売却し、代金の支払がなされた後、所有権移転登記を経ない間に、これを奇貨として当該不動産を更に( ④ )である乙に売却し、これを登記したという場合、乙について( ⑤ )とするのが一般的である。

【語句群】
a横領罪の共犯が成立する b横領罪と詐欺罪が成立する c横領罪のみ成立する
d背信的悪意者      e善意の第三者

(1)①e②b③d (2)①d②c③e (3)①e②d③c
(4)①e②b③d (5)①d②e③a


Nо.115 背任罪(1)
 背任罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合、正しいものはどれか。

(1)甲は、Aに対し自己の家屋につき根抵当権設定後、Aがいまだその登記を完了していないことを知りながら自己の営業資金を得るために同一家屋につきBに対して第1順位の根抵当権設定契約を締結してこれを登記した。この場合、Aに対する甲の抵当権設定の登記義務は設定者である甲固有の事務であって他人の事務ではないから、甲には背任罪は成立しない。

(2)甲は、保険会社A社の外交員として勤務していたところ、被被験者BについてBが健康体であるとA社を欺いて保険契約を締結させ保険証書を交付させた。この場合、甲のA社に対する背任行為はA社を欺くことを手段として行われている以上、背任罪のみならず詐欺罪も成立し、両者は観念的競合となる。

(3)甲は、質権者Aの委託を受けて、AがBに金員を貸し付けて質物として交付を受けたB所有の高級腕時計を保管していたが、Bから返還を求められたため、Aに無断で同時計をBに交付した。この場合、甲には背任罪が成立する。

(4)甲は、信用保証協会の支店長であったところ、Aが、B銀行から1000万円の融資を受けるにあたり、その資産状態が不良で弁済期に返済することができる可能性が著しく低いことを知りながら、無担保で保証書を交付し、同協会に保証債務を負担させた。この場合、Aの債務がいまだ不履行の段階にいたらない段階では、同協会の財産に、代位弁済による現実の損失はいまだ生じていないのであるから、甲に背任罪が成立する余地はない。

(5)甲は、銀行の支店長であったところ、顧客Aの当座預金口座に決済資金が不足した場合には、当該不足分をどう銀行において立替払するいわゆる過振りの便宜を図っていたが、Aの資金状態が改善される見通しのないことが明らかとなった場合も、その任務に違背し、Aを利し同銀行を害することを熟知しながら、あえて回収不能のおそれのある過振りを長期間連続的に行い、同銀行に財産上の損害を与えた。この場合、甲の目的が、同銀行の利益を図るためではなく、従前安易に行っていた上記過振りの実態が本店に発覚して自己の面目信用が失墜するのを防止するためであったにすぎないときには、甲には加害の点につき意欲ないし積極的認容が認められず、背任罪は成立しない。


Nо.116 背任罪(2)
 次の文章は、質権の目的物である株券を質権者に交付した質権設定者が除権判決を得てその株券を失効させる行為が背任罪を構成するか否かに関する記述であるが、(  )内には【語句群】からそれぞれもっとも適切な語句が入る。( ① )から( ④ )までのいずれかに入る語句の組合せとして正しいものは、後記1から5までのうちどれか。

「株式質権の設定者は、質権の目的である株券を(  )に交付し、(  )に(  )に対する対抗要件を具備させた後であっても、当該株券を(  )のために保全すべき任務、すなわち、株券について除権判決を得て失効させて、(  )の質権を消滅させてはならない任務を負うのであり、かつ、この任務は(  )のためのものではなく、もっぱら(  )である(  )のためのものであるから、株式の( ① )は、『(  )のためにその事務を処理する者』に該当するといわなければならない。所論引用の二重抵当について(  )の成立を認めた最高裁判例が、『(  )はその登記に関し、これを完了するまでは
(  )に協力する任務を有することはいうまでもない』と判示しているのは(  )が当該登記に必要な書類を(  )に交付した後でも、(  )においていまだ登記を完了していない場合には、登記に関して(  )に協力する任務があるという趣旨であり、本件のように、(  )に当該株券を交付した後の( ② )の保全任務について直接判示するものではない。したがってこの判例を根拠に、所論のごとく質権を含め担保物件者に(  )に対する対抗要件を具備させた後は、担保物件設定者には(  )に問われるべき任務は存在しないと解すべきではない。むしろ、この判例の事案では、(  )に(  )に対する対抗要件を具備させるのを妨げた(  )の行為を( ③ )に問うているところ、本件の株式質権の場合には、株券の交付は質権設定の有効要件であり、その株券を失効させ、いわば単なる紙切れにしてしまうことは、(  )に対する対抗力どころか、質権自体を消滅させてしまうのであるから、登記協力任務を(  )の前記任務に該当すると解する以上、その理は、本件のような保全任務についてより一層妥当するというべきなのである。言い換えれば、担保権設定者は、担保権者のために広い意味で担保権を保全すべき任務を負い、その1つが(  )に対する対抗要件の具備に協力すべき任務であって、前記判例は、この任務違背行為の(  )該当性を( ④ )したものとみることができるのであり、担保権自体を維持すべき保全義務もまた広い意味での(  )の1つとしてその登記協力と同様に扱うべき必然性があるのである。」

【語句群】
a質権者 b質権設定者 c抵当権者 d抵当権設定者 e第三者 f自己 g他人
h背任罪 i横領罪 j肯定 k否定 l担保権保全義務

(1)abhj (2)ahk (3)bdik (4)bhj (5)dhk


Nо.117 二重抵当と背任罪
 次の【事例】に関する後記1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合、正しいものはどれか。

【事例】
 甲がAに対して抵当権を設定した後、その登記前に、乙に対して第1順位の抵当権を設定してその登記を完了させた。

(1)甲がAに対して負う抵当権設定登記に協力する任務は抵当権設定者たる甲自身の事務であり「他人の事務」とはいえないため、甲に背任罪が成立することはない。

(2)甲がAに対して負う抵当権設定登記に協力する任務は「他人の事務」に該当するものの、抵当権者に登記書類を交付したことにより当該任務は完了しているといえるため、その後に乙に対して抵当権を設定し、その登記を完了させたところで甲に背任罪が成立する余地はない。

(3)甲は、登記書類を交付した後も、Aが登記を完了するまではAの抵当権設定登記に協力するという任務を負っており、この任務は「他人の事務」に該当するため、甲の行為につきAに対する背任罪が成立する。

(4)背任罪は財産犯であり、その成立には「財産上の損害」の発生が必要であるところ、かりに本件で第2順位の抵当権でも十分にAの被担保債権を弁済することができるならば「損害」が発生したとはいえず、甲のは背任罪の未遂が成立するにとどまる。

(5)乙は、民法上は有効に第1順位の抵当権を取得するものの、民法上の違法性と刑法上の違法性とは別個独立に判断すべきものであるから、かりに甲に背任罪が成立するならば、甲の犯行に関与した乙は常に背任罪の共同正犯となる。


Nо.118 背任罪と共同正犯
 背任罪の共同正犯に関する次の1から5までの各記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)背任罪は、「他人のためにその事務を処理する者」を主体とする身分犯であり、その特別規定である特別背任罪も株式会社の取締役等を主体とする身分犯である。

(2)融資の相手方に(特別)背任罪の共同正犯の成立範囲を限定し、融資の相手方が事務処理者の任務違背についての高度の認識を有している場合にかぎり、同罪が成立すると考えると、なぜ通常の共同正犯における認識の程度を超えて、(特別)背任罪の場合にだけ、相手方に高度な認識を要求するのかという根拠が、必ずしも明確でなくなる。

(3)経済的危機に陥った者が、倒産を回避するというみずからの利益のために金融機関に対して融資を求める行為いついては、原則として(特別)背任罪の共同正犯の成立を認めて、自由な経済活動を保護する必要がある。

(4)非身分者たる融資の相手方の「図利加害目的」については、単に自己の利益を図る目的を有していたというだけでは足りず、身分者の有していた目的についても認識していたことを要すると考え得る。

(5)背任行為による利益が融資の借り手に帰属したことは、共同正犯を認める根拠になりうる。


Nо.119 横領罪と背任罪の区別
 横領罪と背任罪の区別に関する判例の見解を前提とした場合、次のアからオまでの記述のうち、甲に横領罪(業務上横領罪を含む)が成立するものには1を、背任罪が成立するものには2を選びなさい。

ア 信用組合の支店長甲は預金成績の向上を図るため、一部預金者に対して正規の利息以外にも組合の金で多額の預金謝礼金を勝手に支払、この謝礼金を補填すべき正規の融資を受ける資格のない者に対して、組合名義において高利で貸し付けた。

イ 社団法人森林組合の組合長甲らは組合員に造林資金として転貸交付すべきであるその他の用途に支出してはならないものとして、旧農林漁業資金融通法の定めに基づき政府から組合に貸与された金を保管していたが、諸経費の支出に窮していた町から要請されて、使途について規制や組合役員会の決議に反して組合名義で第三者たる町に貸与した。

ウ 農業協同組合の組合長甲は、知人から満期までに必ず回収して返還するから融通手形を振出交付してほしい旨の依頼を受け、組合名義の約束手形を振り出し同人に交付したが、同人が約束に反して回収返還しなかったため、所持人から手形金の支払請求がなされ、甲はやむなくこれを組合の金で支払った。

エ 甲は、Aに対して農地を売り渡しその代金を受領したが、当該農地売買につき県知事の許可前に自己の債務のために抵当権を設定し、その登記を完了した。

オ 甲は、Aに対して有していた債権をBに譲渡したが、Aに対してその債権譲渡の通知をしないうちに、債務の弁済としてAより受領した金銭を、Bに引き渡さないで勝手に消費した。
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