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Rechtsphilosophie des als ob

かのようにの法哲学

2016年度刑法Ⅰ(第12週)共犯の諸問題(1)(基本レジュメ)

2016-06-23 | 日記
 第12週 共犯の諸問題(1)
(1)共犯と違法性阻却事由
1構成要件該当性の判断→違法性阻却事由の有無
 正犯 犯罪の構成要件該当行為の実行→その違法性の推定→違法性阻却事由の存在→違法性阻却
 共同正犯も同じ

 XとYが散歩していると、AがYに突然襲いかかった。Yは「助けて!」と叫んだ。
 XはY守るためにAの頭部をカバンでたたいた。Aがしゃがみこんだところ、YはAの背中を抑え込んだ。
 Aは加療1週間の傷を負った。

 XとYの行為 傷害罪の構成要件該当性
 Aの侵襲   X・Y対する急迫不正の侵害
 XとYの行為 Yの身体を防衛するための防衛の意思に基づく行為
        正当防衛ゆえに、傷害罪の違法性阻却


2違法の相対性
 判例88 X Aの侵襲を予期し、その実行に乗じてAに積極的に害を加える意思があった場合
 AのYに対する侵襲 Yにとっては急迫不正の侵害。ただし、Xにとっては急迫性なし(判例)
 Yの行為は傷害罪の構成要件に該当しても、正当防衛ゆえに違法性阻却。Xの行為の違法性は阻却されない。
 →侵害の急迫性の有無 被侵害法益との関係ではなく、防衛者の積極的加害意思の有無によって決まる

 X AのYへの侵襲を予期し、YによるAへの防衛行為と侵害を意図して、YをAの元に行かせた
 正犯Yは傷害罪の構成要件該当行為。ただし違法性は阻却。Xは傷害罪の教唆類型該当行為。違法性阻却なし。


3制限従属形式?理
 共犯は、正犯の構成要件該当の違法な行為の実行に従属して成立する→制限従属形式+違法の相対性
 正犯の違法性が阻却されても、共犯から見て違法である場合には、制限従属形式が妥当する
 →それは「共犯は正犯の構成要件該当性に従属するだけで、違法性を要しない」とする最小従属形式と同趣旨


4共同正犯における質的過剰防衛と量的過剰防衛
 XとYがYを侵襲するAに反撃して、死亡させた→傷害致死罪の共同正犯。ただし(質的)過剰防衛(36②)。

 判例96 XとYがYを侵襲するAに共同して反撃し負傷。Aが逃走。XがAを追跡し、さらに追撃。A死亡。
 X・Yの反撃→傷害罪の構成要件該当(共同正犯)。ただし正当防衛ゆえに違法性阻却。
 Xの追撃  →傷害致死罪(単独正犯)。ただし、(量的)過剰防衛。

 なぜXの追撃は単独正犯か? XとYの間に追撃の共同実行の事実なし。その意思もなし。Yは反撃に無関係。

 →部分的犯罪共同説 Xは傷害致死罪で過剰防衛。Yは傷害罪で正当防衛。XとYは傷害罪の範囲で共同正犯。
  行為共同説    Xの傷害致死罪とYの傷害罪の共同正犯。Xは過剰防衛。Yは正当防衛。


(2)共犯と錯誤論
1事実の錯誤
 事実の錯誤(具体的事実の錯誤と抽象的事実の錯誤)→法定的符合説から故意の成否を判断


2共犯における具体的事実・抽象的事実の錯誤
 Xが教唆した犯罪と正犯が実行した犯罪との間に錯誤がある場合
 具体的事実の錯誤 XはA殺害の教唆。Yは隣のBの殺害を実行。
          Xは窃盗を教唆。Yは強盗を実行(判例89)。
 抽象的事実の錯誤 Xは覚せい剤輸入を教唆。Yは麻薬(コカイン)輸入を実行。


3共同正犯者間の錯誤
 判例90 X、Yら7人はAに暴行。A死亡。ただし、Yにのみ殺意あり。
      Xら6人 傷害致死罪の共同正犯
      Y    Xら6人と傷害致死罪の共同正犯と殺人既遂罪の単独正犯の観念的競合

 →部分的犯罪共同説からの説明

  行為共同説からは、どのような説明が可能か?


(3)承継的共同正犯
1承継的共同正犯
 犯罪を実行中の者に対して、途中から関与して、結果を発生させた場合の共同正犯の成否、その罪名

・継続犯 XがAを監禁し、その後、Yが監禁に関与→XとY 監禁罪の共同正犯
 状態犯 XがAに暴行し、その後、Yが暴行に関与し、Aは傷害に至らなかった→XとY 暴行罪の共同正犯


・結果的加重犯 XがAを監禁して負傷させ、その後、Yが監禁に関与→XとY 監禁致傷罪の共同正犯?
 負傷者を監禁しても、監禁致傷罪にはなりえない→Xは監禁致傷罪、Yは監禁罪
  →部分的犯罪共同説 XとYは監禁罪の共同正犯。Xは監禁致傷罪の単独正犯(監禁罪とは観念的競合)

 Xが財物奪取の目的からAに暴行。その後、Yも財物奪取のために関与→YはX単独の暴行を承継するか?


2承継の可否
 承継全面肯定説 共同正犯は故意犯の共同正犯で、同一罪名の共同正犯に限る→Yは関与後Xと共同実行
         →同一罪名の共同正犯が成立するためには→YはX単独の暴行を承継→強盗罪の共同正犯


 承継全面否定説 Xが単独で行なった過去の暴行をYが承継することはありえない
         Y窃盗罪。X強盗罪。両者は共同正犯→異なる罪名の共同正犯は、行為共同説から説明可能。


 中間説 Yの関与態様と関与目的に着目
 →YがX単独の暴行を利用し、それに便乗して財物を奪取したか否か
  YがX単独の暴行を利用・便乗する意思があり、財物の奪取を自己の行為として行なう意思があったか否か

 判例82 傷害罪をめぐる承継的共同正犯


(4)共犯からの離脱と共犯関係の解消
1犯罪の生成過程
 A強盗罪の意思決定→ABCD共謀→→→→→ABCDが準備→→→→→→→開始→→→→→→→→結果発生
           強盗陰謀は不処罰   強盗予備          強盗未遂      強盗既遂

 B・Cは強盗罪の(実行)共同正犯
 共謀のみに関与したAにも強盗罪の(共謀)共同正犯が成立

 A強盗罪の意思決定→ABCD共謀→→→→→ABCDが準備→ADが離脱→開始→→Bが離脱→→結果発生
           強盗陰謀は不処罰   強盗予備          強盗未遂      強盗既遂


2離脱・解消の可否
 離脱が可能→離脱前に行なった行為に責任を負うだけ A・D強盗予備、B強盗未遂、Cは離脱なし強盗既遂

 判例94 着手前の離脱  離脱希望者の意思表示と他の共犯者による了承
              ただし、リーダー的存在のAの場合、他の共犯者の犯行を防止する必要あり


 判例95 着手後の離脱  離脱者の意思表示と他の共犯者による了承+離脱者による共犯者の犯行を防止

3離脱の理由
 離脱した理由が、反省、悔悟、後悔の念などの自己の意思に基づいていた場合

 強盗の着手後に離脱したBの強盗未遂罪に中止未遂の規定を適用することができる

 強盗の着手前に離脱したDの強盗予備罪に中止未遂の規定を「準用」すべきである→予備罪と中止未遂

4Bの強盗未遂罪に中止未遂の規定が適用された場合、Bの強盗予備罪は?
 Bに中止未遂の規定が適用され、刑が免除された場合、それでも強盗予備罪は成立し、処罰されるのか?

 予備罪と未遂罪の関係、未遂罪と既遂罪の関係→前者が後者に吸収されて、単独では成立しない
 Bの強盗未遂が成立することにより、予備はそれに吸収。刑が免除されたのは、強盗予備を吸収した強盗未遂

 第13週は 共犯と身分、不作為による幇助、間接教唆と間接幇助、片面的幇助 keiho1honda@yahoo.co.jp