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Rechtsphilosophie des als ob

かのようにの法哲学

2016年度刑法Ⅰ(第11週)共同正犯と共犯(練習問題)

2016-06-18 | 日記
 第11週 共同正犯と共犯(練習問題)
(1)練習問題
1共謀共同正犯
 共謀共同正犯が成立するためには、共謀した者の全員が、それぞれ少なくとも実行行為の一部を行うことが必要である。(    )



2共同正犯と具体的事実の錯誤(方法の錯誤)
 AとBはCを殺害することを共謀し、それぞれがCに向けて弾丸を発射したが、Cに命中したのはBの弾丸であり、その際、予期せぬDにも命中し、C・D両名を死亡させた。このような場合、AはC・D両名に対する殺人罪の共同正犯が成立する。



3過失犯の共同正犯
 過失は本質的に「無意識」に基づくので、過失犯の場合、行為者間の意思の連絡を想定することはできないので、判例は、過失犯の共同正犯の成立を否定している。(   )



4結果的加重犯の共同正犯
 AとBが強盗を共謀して実行したところ、そのうちAの暴行によって被害者が死亡した場合、Bに強盗致死罪の罪責が問われることはない。(    )



5共同正犯の離脱と中止
AとBが強盗を共謀して実行したところ、その途中でAが自己の意思による犯行の継続を中止しても、Bが継続して結果を発生させた場合には、Aに中止未遂の規定を適用することはできない。(    )



(2)基本問題1
 次の事例について、部分的犯罪共同説と行為共同説によると、A・Bは、それぞれどのような罪責を負うことになるか(内海朋子『Stepu Up 刑法』〔北樹出版〕から)。

A Xの奴をやっつけようぜ。
B いいぜ。それなら、せーので、一緒に引き金を引こう。

A・Bは、殺意をもってXをめがけて1発ずる弾丸を発射した。そのうちの1発がXに命中し、Xは死亡したが、それがA・Bいずれの拳銃から発射された弾丸であるかは明らかではなかった。


 部分的犯罪共同説→ Aは(      )罪 Bは(      )罪の共同正犯


 行為共同説   → Aは(      )罪 Bは(      )罪の共同正犯



A Xの奴をやっつけようぜ。
B いいぜ。それなら、せーので、殴りかかろうぜ。

Aは殺意をもって、Bは傷害を負わせるつもりで、Xに殴りかかった。Xは死亡したが、それがA・Bいずれの暴行が致命傷になったのかは明らかではなかった。


 部分的犯罪共同説→ Aは(      )罪 Bは(      )罪の共同正犯
           Aは(      )罪の単独正犯


 行為共同説   → Aは(      )罪 Bは(      )罪の共同正犯






(3)基本問題2
1犯罪の共同か、それとも行為の共同か?

・犯罪共同説の意味を説明しなさい。
 共同実行の意思 故意の意思連絡
 共同正犯    故意犯の共同正犯
 共同正犯の罪名 同一



・行為共同説を説明しなさい。
 共同実行の意思 事実行為と故意の意思連絡
 共同正犯    故意犯と過失犯のの共同正犯
 共同正犯の罪名 故意犯と過失犯



2犯罪共同説と行為共同説において、共同正犯の成立に違いが出てくるか?
 過失犯、結果的加重犯、異なる犯罪を例に述べると、

・過失犯
 A・Bの共同作業(階下へ資材の搬送・投げ落とし)
 業務上過失致死傷罪


 C・Dの共同作業(溶接作業と周辺の油漏れのチェック)
 業務上失火罪


 犯罪共同説からは
 A

 B

 C

 D



 行為共同説からは
 A

 B

 C

 D



・結果的加重犯
 E・FによるXへの暴行
 Xは死亡。ただし、死亡の原因がA暴行かBの暴行か不明。

 行為共同説からは
 E

 F


 犯罪共同説からは
 E

 F




 部分的犯罪共同説からは
 E

 F


・Gは殺人の故意、Hは暴行の故意で行なった場合
 Gに殺人の故意、Hに暴行の故意
 G・HによるXへの暴行
 Xは死亡。ただし、死亡の原因がG暴行かHの暴行か不明。

 行為共同説からは
 G

 H


 犯罪共同説からは
 G

 H


 部分的犯罪共同説からは
 G

 H



(4)応用問題1
1「共同実行の事実」の要件に関して
・共謀共同正犯
 A・B・Cの三人は、A宅でコンビニ強盗を実行することを共謀し、B・Cがその計画どおりコンビニ強盗を行なった。しかし、B・Cは通報を受けた警察官に逮捕された。A・B・Cの罪責を論じなさい。

1事実関係の成立と問題の所在
 A・B・Cがコンビニ強盗を共謀
 B・Cが共謀にかかる強盗を実行

 強盗を実行したB・Cの罪責は明らか。
 では、共謀のみに関わったAの罪責は?

2共同正犯の成立要件に関する前提的議論
 刑法60条 共同正犯 2人以上の者が共同して犯罪を実行した場合、その全員が正犯となる、
 一部実行の全部責任の原則
 一部実行 共同実行の事実と共同実行の意思
 「共同実行の事実」は「犯罪の構成要件的行為の一部実行の事実」
 共謀は「犯罪の構成要件的行為の一部」に入らないので、共同正犯は不成立。しかも、共謀が教唆・幇助にあたらない場合には、無罪。それは妥当ではない。共謀にのみ関わった者を共同正犯とすることはできないか。これが「共謀共同正犯」の問題である。

3展開
 学説には「共謀共同正犯」に対して反対が強いが、判例は伝統的にそれを認めている。ただし無条件ではない。共謀が「特定の犯罪に関するもの」であり、「事前」に、かつ「具体的な行為」によって行われていなければならないし、さらに共謀者間に「明確な意思連絡」が必要(練馬事件)。さらには、最近では事前の共謀を「現場共謀」に緩和し、「具体的な行為」を要せず、さらに「暗黙の意思連絡」で足りるとの判断も現れている(スワット事件)。

4結論
 刑法60条 実行共同正犯に限定 共謀共同正犯は原則否定

 しかし、判例は肯定。判例で示された要件を厳格に運用することが最低限必要。

 拡大傾向を抑制するために、「練馬事件」の判断を踏まえるべき。

 結論的には、AはB・Cと強盗という特定の犯罪を実行することについて具体的に共謀し、かつB・Cはその共謀にかかる強盗を実行しているので、共謀飲みに関わったAにも、強盗罪の共同正犯の成立を認めることができる。


・承継的共同正犯
B・Cはコンビニ店員Xを脅し商品を盗ろうとしたところ、見知らぬ客Dが「協力するぜ」と言って、レジの現金を盗って、B・Cと一緒に逃亡した。B・C・Dの罪責を論じなさい。

1時事関係の成立と問題の所在





2共同正犯の成立要件に関する前提的議論





3先行行為者の行為の承継の可否





4結論




2「共同実行の意思」の要件に関して
・過失犯の共同正犯
 AとBは、建築現場の屋上から廃材を階下に投げ落とす作業をしていた。通行人がいないことを確認して、Aはコンクリート片を、Bは鉄材を落としたが、Xが歩いていることに気づかなかった。Xはケガを負ったが、ケガがコンクリートによるものなのか、それとも鉄材によるものかが不明確であった。

1事実関係の成立と問題の所在
 事実関係

 問題の所在 業務上過失致傷罪の共同正犯?


2共同正犯の成立要件に関する前提的議論
 共同正犯の成立要件 「共同実行の事実」と「共同実行の意思」

 共同実行の意思の内容をめぐって
 犯罪共同説
 行為共同説

3展開
 そもそも共同正犯とは?


 犯罪共同説のあてはめと結論
 妥当性への疑問


 行為共同説のあてはめと結論



4結論








・結果的加重犯の共同正犯
 AとBは共同してXに暴行を加えて、死亡させた。その際、Aは殺人の故意で、Bは暴行の故意で行なった。Xの死因がA・Bいずれの暴行なのかは不明であった。

1事実関係の成立と問題の所在




2共同正犯の成立要件に関する前提的議論




3展開




4結論




・片面的共同正犯
 AはBにX狙撃を依頼した。しかし、Bが失敗した場合に備えて、Cにも同じことを依頼した。ただし、CにはBに気づかれないように実行するよう注意した。BがXを狙って発砲した瞬間に、Cはその背後から同じようにXに銃を向けて発砲した。XはBの弾丸を受けて死亡した。

1事実関係の成立と問題の所在






2共同正犯の成立要件に関する前提的議論






3展開






4結論

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