Rechtsphilosophie des als ob

かのようにの法哲学

現代の人権(第04回)再犯予防の現状

2019-10-20 | 日記
 2019年度 現代の人権
 第04回(1023)再犯予防の現状
(1)再犯・再非行の防止に向けた取り組み
 犯罪白書平成30年版 第5編 再犯・再非行
 再犯防止推進法
 平成8~14 犯罪対策閣僚会議
 「犯罪に強い社会の実現のための行動計画――世界1安全な国、日本」
 平成24年 「再犯防止に向けた総合対策」(「総合対策」)
 平成26年 出所者のための仕事と居場所の確保
 平成28年 「薬物依存者・高齢犯罪者等の再犯防止緊急対策」
       再犯防止推進法の制定 再犯防止推進計画の策定

 犯防止推進計画
 再犯防止推進法に基づき、政府は,再犯の防止等に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、平成29年12月、30年度からの5年間に関係府省庁が取り組む「再犯防止推進計画」を閣議決定した。同計画は、5つの基本方針の下、7つの重点課題について,115の具体的な再犯防止施策を盛り込んでいる。
〔5つの基本方針〕
1「誰一人取り残さない」社会の実現に向け,国・地方公共団体・民間の緊密な連携協力を確保して再犯防止施策を総合的に推進
2刑事司法手続のあらゆる段階で切れ目のない指導及び支援を実施
3犯罪被害者等の存在を十分に認識し,犯罪をした者等に犯罪の責任や犯罪被害者の心情等を理解させ,社会復帰のために自ら努力させることの重要性を踏まえて実施
4犯罪等の実態,効果検証・調査研究の成果等を踏まえ,社会情勢等に応じた効果的な施策を実施
5再犯防止の取組を広報するなどにより,広く国民の関心と理解を醸成

〔7つの重点課題〕
1就労・住居の確保等
2保健医療・福祉サービスの利用の促進等
3学校等と連携した修学支援の実施等
4犯罪をした者等の特性に応じた効果的な指導の実施等
5民間協力者の活動の促進等,広報・啓発活動の推進等
6地方公共団体との連携強化等
7関係機関の人的・物的体制の整備等

(2)再犯・再非行の現状
1刑法犯により検挙された再犯者(未成年者を含む)(5-2-1-1図)
 平成29年 215,003人 初犯者110,299人 再犯者104,774人
 平成10年以降 検挙者人員の減少 初犯者の減少と再犯者の微減
 検挙者に占める再犯者の比率(再犯率)は上昇傾向にある(48.7%)

2成人の有前科者(5-2-1-2図)
 平成29年 検挙者54,088人(前科1犯の再犯者の増加傾向)
 成人の有前科者率28.9%   同一罪名有前科者率 15.0%
 3割前科者 7割無前科。しかし、詐欺・強姦・恐喝は前科者多い。

3覚せい剤事犯の前科率(同一罪名有前科者率)(5-2-1-4図)
 平成29年 10,022人が覚せい剤で検挙 そのうち6,768人が同一再犯
 初犯者の微減傾向 再犯率66,2% 他の犯罪に比べ再犯率が高い
 刑務所の内外での脱ドラッグ策の必要性

(3)裁判の状況
1起訴人員中に占める有前科者(5-2-2-1図)
 平成29年 起訴者113,640 人(有前科者53,078人 46,7%)
 犯罪名別 刑法犯(有前科者48,5%)と特別法犯(43,8%)
 覚せい剤事犯 毒劇物事犯の再犯率の高さ(同一犯罪での再犯)

2再犯による刑の全部または一部の執行猶予の取り消し(5-2-2-3図)
 犯罪→有罪→懲役・禁錮3年以下の場合、執行猶予が付されることがある
 再犯→懲役・禁錮〇年+前の犯罪の執行猶予の取り消しとその刑の加算
 平成29年 執行猶予32,266人 取消4,135人 理由・再犯3,399人+695

(4)矯正
1再入者・再入者率(5-2-3-1図、2図)
 平成29年入所者全体19,336人 再入者11,476人(59.4%)
 女性 1,892人中928人(49.0%) 女性の再入者率の上昇傾向
 入所回数の比較 初回 2回目 3回目 4回目 5回以上
 全体19,336人  40.6  16.9  11.8  837   22.4
 男性14,444人  3953  16.6  11.7  8.3   23.9
 女性 1,892人  51.8   19.5  12.4  8.3    8.9

2入所者に占める保護処分歴(少年時の非行・犯罪)5-2-3-3図()
 初入者の過去の処分歴に比べ、再入者の処分歴がやや高い(20-39才)

3入所者の就労状況(平29)(5-2-3-4図)
 再入者の無職率の高さ 特に女性の再入者

4入所者の居住状況(5-2-3-5図)
 住居不定と住居不定外

5出所受刑者の再入所状況(平成29年)(5-2-3-6図)
 一定期間、刑務所に収容され、出所後、再入所する傾向
 再入所率は、満期釈放と仮釈放とで異なる傾向を示している。

6出所受刑者が再入所した回数(有前科数の比較)(5-2-3-6図)
 全体傾向としては、出所直後に再入所する傾向よりは、
 5年、10年経過するにつれて再入所する傾向が見られる


(5)少年の再非行・再犯
1刑法犯による検挙された少年の再非行・再犯(5-2-5-1図)
 平成28年の少年検挙者数 26,797人 うち再犯者9,510人(35.5%)
 再犯者数の減少と再非行少年率の上昇

2保護観察歴・少年入院歴(5-2-5-2図)
 再非行・再犯により検挙された少年
 過去の保護観察・少年院入院の経歴の有無
 少年院装置・保護観察歴のある少年の再非行・再犯の割合が大きい

3少年院出院者の再入院・再入所の割合(5年以内)(5-2-5-3図)
 犯罪を行い少年院に入院し、出院後、再び少年院または刑務所へ収容
 出院年と2年以内 少年院再入院と刑務所入所の割合はほぼ同じ
 3年以内以降から刑務所へ入所する少年の割合が増加傾向にある
 少年院出院者の再非行・再犯に対しては、刑事施設・刑務所が増加傾向

(6)再犯・再非行の対策
 犯罪統計と再犯状況をマクロ的に見れば。
 犯罪の認知件数・検挙者の多くは窃盗、交通事故
 これを減らせば、再犯率は減少し、対策としては成功
 しかし、ミクロの視点で見ると、
 再犯の傾向の高い犯罪(窃盗や薬物事犯)への対策が急がれる。
 年齢・性別についても一定の傾向がみられる。
 再犯は就労状況・居住条件などによって左右される。
 従って、再犯対策は複合的な視点から検討すべき課題。
 受刑者や出所者の「意識改革」も必要。しかし、それだけでは不十分。
 社会における居場所、仕事、住居、仲間、支援の手と輪
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