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論文)アブシジン酸とオーキシンのクロストークによる胚軸伸長制御

2009-10-19 23:10:49 | 読んだ論文備忘録

Abscisic Acid Represses Growth of the Arabidopsis Embryonic Axis after Germination by Enhancing Auxin Signaling
Belin et al.  Plant Cell (2009) 21:2253-2268.
doi:10.1105/tpc.109.067702

スイス ジュネーブ大学のLopez-Molina らのグループは、アブシジン酸シグナル伝達に関与する新規遺伝子座の探索を目的に、ABA存在下で正常に発芽成長するシロイヌナズナ突然変異体のスクリーニングを行ない、long rootlrt )変異体を得た。この変異体の根は重力屈性に対しても異常を示し、lrt 遺伝子座はオーキシン取込みキャリアAUX1 の近くにマッピングされた。そこで、lrt 変異体のAUX1 遺伝子の塩基配列を読んだところ、第4エクソン内の塩基にG → Aの置換が見られ、Trpコドンがストップコドンとなっていた。さらに、幾つかのaux1 変異体(aux1-7aux1-22aux1-21 )についてABAに対する応答を見たところ、lrt 変異体と同様にABA耐性となっていることがわかった。種皮や内乳の破裂に関してのABAに対する応答はaux1 変異体と野生型で変わりはないので、aux1 変異体は発芽時の胚軸の伸長がABA耐性となっており、ABAによる胚軸伸長の抑制にAUX1が関与してると考えられる。AUX1タンパク質は内乳破裂からその後の胚軸伸長の期間には主に根冠に局在し、ABAはAUX1の局在には影響していなかった。ABAによる胚軸伸長抑制はオーキシン取込みキャリアの阻害剤1-ナフトキシ酢酸(NOA)により緩和され、オーキシンは胚軸伸長に対して抑制的に作用した。また、オーキシン排出キャリアpin2 変異体の胚軸の伸長もABA耐性を示すことから、胚軸の伸長領域の表皮や皮層への求基的なオーキシン輸送がABAによる胚軸伸長抑制に関与していると考えられる。いくつかの実験から、オーキシンによる胚軸伸長の抑制はTIR1/AFB F-boxタンパク質によるAux/IAAの分解を介しており、ABAは、内生オーキシン量に影響しているのではなく、胚軸伸長領域においてオーキシンシグナルの負の制御因子であるAXR2/IAA7 およびAXR3/IAA17 の発現を抑制してオーキシンシグナルを高めることで胚軸伸長抑制を引き起こしていることがわかった。AXR2/IAA7 (およびAXR3/IAA17 )は胚軸伸長を負に制御するABAとオーキシンのクロストークの接点として機能している。

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