A functionally divergent SOC1 homolog improves soybean yield and latitudinal adaptation
Kou et al. Current Biology (2022) 32:1728-1742.
doi:10.1016/j.cub.2022.02.046
Dispatches
Flowering time: Soybean adapts to the tropics
Jared B. Fudge Current Biology (2022) 32:R360-R362.
doi:10.1016/j.cub.2022.03.030
ダイズは広範囲の緯度で栽培されているが、日長に非常に敏感な短日植物であるため、高緯度の長日条件に適応するためには早期の開花と光周期感受性の低下または喪失が必要であり、低緯度の短日条件に適応するには最大収量を得るために開花と成熟を遅らせることが必要となる。中国 広州大学のKong らは、異なる緯度で栽培されているダイズ品種の花成の遺伝的基盤を理解するために、349のダイズ系統種の全ゲノムシークエンスを行ない、獲得したSNPマーカーと中国ハルビンで収集した表現型データを用いて開花時期に関するゲノムワイド関連解析(GWAS)を行なった。その結果、第10と第18染色体上に有意な関連遺伝子座を同定した。第10染色体上の遺伝子座は以前のQTL解析で報告されているE2 遺伝子座(GIGANTEA ホモログが原因遺伝子と推定される)であったが、第18染色体上の遺伝子座は新規の遺伝子座であったことから、time of flowering 18(Tof18 )と命名し、詳細な解析を行なった。Tof18 上にはSUPPRESSOR OF OVEREXPRESSION OF CONSTANS1 (SOC1a 、Glyma.18G224500 )遺伝子があり、349系統種のSOC1a 遺伝子の多型調査からプロモーター領域に11のハプロタイプが見出された。3つの主要なハプロタイプについて花成時期を比較したところ、Tof18H2 はTof18H1 やTof18H3 よりも花成時期が早いことが判った。Tof18H2 はSOC1a 開始コドンの上流816 bpがAからGに置換しており、プロモーター活性がTof18H1 よりも高くなっていた。この変異に基づき349系統種を2つのグループ(Tof18A、Tof18G)に分けて農業形質を調査したところ、Tof18G はTof18A と比較して花成が早く、草丈、節の数、節間の長さ、分枝数、豆数が減少していた。また、SOC1a の機能喪失変異体と過剰発現個体の花成を調査したところ、soc1a 変異体は花成遅延し、過剰発現個体は節数が減少した。これらの結果かから、SOC1a がTof18 遺伝子座の原因遺伝子であることが示唆される。ダイズは全ゲノム重複(WGD)により2つのSOC1 ホモログ(SOC1a 、SOC1b )が存在する。CRISPR-Cas9で作出したsoc1a 変異体、soc1b 変異体、soc1a soc1b 二重変異体は、野生型と比較して花成が遅延し、節数、収量が増加していた。また、soc1a 変異はsoc1b 変異よりも作用力が強く、soc1a soc1b 二重変異体は単独変異体よりも強い効果を示した。SOC1b 過剰発現個体はSOC1a 過剰発現個体と花成時期が同等であった。よって、SOC1a とSOC1b はダイズの花成と成長を独立してまた一部冗長的に制御していると考えられる。SOC1a 、SOC1b は共に根、茎、葉、種子、茎頂分裂組織(SAM)で恒常的に発現していた。特にSAMと葉での発現が強く、葉での発現は日周変動していた。また、SOC1a はSOC1b よりもプロモーター活性が強く発現量が高くなっていた。SOC1a、SOC1bは二量体を形成し、ヘテロ二量体はホモ二量体よりも転写因子活性が高かった。変異体を用いた網羅的遺伝子発現解析から、SOC1a、SOC1bはSAMや葉で花成関連遺伝子の発現を制御していることが確認された。soc1 変異体ではFT ホモログ(FT5a 、FT2a )の発現量が減少しており、SOC1a、SOC1bがFT 遺伝子の発現調節領域に直接結合して発現量を高めることが判った。よって、葉で発現しているSOC1 はFT の発現を調節していると思われる。SOC1a、SOC1bは、ダイズの茎伸長を制御しているDETERMINATE STEM 2(Dt2)と複合体を形成し、この複合体はDt1 の発現を負に制御した。Tof18/SOC1a 遺伝子座について中国国内の系統種について調査したところ、野生ダイズの95%はTof18A であったが、在来種の35%、現代栽培品種の64%はTof18G であった。また、黄淮地域や北部で栽培されている品種では42%がTof18G であったのに対し、東北部高緯度地域で栽培されている品種では花成の早いTof18G の比率が増加(Tof18G:78%)し、南部低緯度地域では花成の遅いTof18A の比率が高く(Tof18A:67%)なっていた。以上の結果から、Tof18/SOC1a は花成や成長に関与する因子としてダイズ栽培品種の緯度に適応した収量向上に貢献していると考えられる。
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