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論文)グルコシルトランスフェラーゼによる花成制御

2012-05-25 20:51:34 | 読んだ論文備忘録

UGT87A2, an Arabidopsis glycosyltransferase, regulates flowering time via FLOWERING LOCUS C
Wang et al.  New Phytologist (2012) 194:666-675.
doi: 10.1111/j.1469-8137.2012.04107.x

グルコシルトランスフェラーゼ(GT)は糖供与体から受容体へ糖残基を転移する反応を触媒す酵素で、スーパーファミリーを構成している。ファミリー1に属するGTは低分子量二次代謝産物を基質とする植物二次代謝産物GT(PSPG)であり、UDP-糖を糖供与体としていることからUDP-糖GT(UGT)とも呼ばれている。中国 山東大学Hou らは、GTの生理作用解析を目的に、シロイヌナズナの複数のgt 機能喪失変異体について成長解析を行ない、ファミリー1 GTのUGT87A2 (At2g30140)の変異体が花成遅延(抽だいするまでの日数が長くロゼット葉が多い)を示すことを見出した。ugt87a2 変異体の葉や花は野生型よりも大きく、草丈が高く、長角果は長く、種子の大きさや千粒重も増加していた。シロイヌナズナのファミリー1に属する107のGTで作成した系統樹を見ると、UGT87A2は他に5つのUGTを含んだクレイドに位置付けられ、これら6つのUGTは4つの異なるグループに分かれていた。これらのUGTにおいて機能や酵素活性が確認さているものはなかった。ugt87a2 変異体で35S プロモーター制御下でUGT87A2 を発現させると、花成時期、葉数、草丈、花の大きさが野生型と同等になったが、種子の大きさと千粒重については完全には回復しなかった。ugt87a2 変異体は短日条件でも長日条件でも花成遅延とロゼット葉数の増加を起こすことから、UGT87A2 は光周期経路による花成制御には関与していないと考えられ、自律的な花成経路に関与している可能性がある。また、ugt87a2 変異体は春化処理に応答して、野生型と比較すると完全な回復とは言えないが、花成が促進され、ジベレリンによる花成促進は野生型と同等であった。ugt87a2 変異体ではFLC の発現量が増加し、FTSOC1AP1LFY の発現量が減少していた。また、ugt87a2 変異体でUGT87A2 を過剰発現させると、FLC の発現量が野生型と同等にまで減少し、その下流に位置する花成関連遺伝子の発現量も野生型と同等になった。しかしながら、自律的花成促進に関与している遺伝子(FVEFCAFPA )の発現量に変化は見られないことから、UGT87A2は通常の自律的花成促進経路とは独立して、何らかの分子をグルコシル化することでFLC の発現を制御し、花成時期の制御を行なっていると考えられる。UGT87A2 は、発芽種子、子葉、一次根において強く発現しており、1-2週目の個体では根、葉先や葉縁、茎頂で発現が見られ、4週目になると発現は非常に低くなった。生殖器官では、がく片、花糸、柱頭、長角果とその柄の部分において発現が見られた。UGT87A2タンパク質は細胞質と核の両方に局在していた。

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