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論文)ジャスモン酸シグナルによるクロロフィルの分解

2016-01-08 23:37:41 | 読んだ論文備忘録

Jasmonic acid promotes degreening via MYC2/3/4- and ANAC019/055/072-mediated regulation of major chlorophyll catabolic genes
Zhu et al. Plant Journal (2015) 84:597-610.
DOI:10.1111/tpj.13030

急速なクロロフィルの分解による脱緑は、緑色器官の老化や成熟において特徴的に見られる現象である。Phosphorbide a oxygenase 遺伝子(PAO )はクロロフィル分解の鍵酵素をコードしているが、この遺伝子の転写制御機構については明らかとなっていない。中国 復旦大学Kuai らは、酵母one-hybrid(Y1H)スクリーニングによって、シロイヌナズナPAO 遺伝子プロモーター領域とMYC2、MYC3、MYC4が強く相互作用をすることを見出した。MYC2/3/4はジャスモン酸(JA)シグナル伝達に際してG-boxと呼ばれる6-merのコアモチーフからなるDNA配列に結合することが知られているが、PAO 遺伝子のプロモーター領域にもG-boxモチーフが存在し、MYC2/3/4が相互作用を示すことが確認された。JAは成熟したシロイヌナズナの葉の脱緑を促進することが知られている。MYCs 遺伝子の機能喪失変異体はJA処理をしても野生型よりも葉の緑色が維持されることから、MYCsはJAによるクロロフィル分解に関与していると考えられる。PAO 転写産物量はJA処理によって増加するが、myc2 myc3 myc4 三重変異体ではそのような変化は見られず、MYC2/3/4 過剰発現系統ではJA処理によるPAO 転写産物量の増加とクロロフィル含量の減少が高まった。したがって、MYC2/3/4はJAが誘導るするクロロフィル分解においてPAO の発現を正に制御していることが示唆される。PAO以外のクロロフィル異化遺伝子(CCG )のNYE1NYE2NYC1PPH はJA処理によって転写産物量が増加し、myc2 myc3 myc4 三重変異体やcoi1-1 変異体ではそのような変化は見られなかった。よって、MYCsはPAO 以外のCCGs の発現も正に制御していることが示唆される。NYE1NYC1 のプロモーター領域にはG-boxが存在し、MYC2が両遺伝子のプロモーター領域と相互作用をすることが確認された。したがって、MYC2/3/4は、PAO 以外にもNYE1NYC1 の発現も活性化することでJAの誘導するクロロフィル分解に関与していることが示唆される。NACファミリー転写因子をコードするANAC019ANAC055ANAC072 はJA処理によって転写が誘導されるが、myc2 myc3 myc4 三重変異体ではそのような誘導は見られず、ANAC019 はMYC2の直接のターゲットとなっていた。anac019 anac055 anac072 三重変異体は、JA処理をしても葉の緑色が維持され、NYE1NYE2NYC1PPHPAO の発現誘導も見られなかった。NYE1NYE2NYC1 のプロモーター領域にはANAC019/055/072が結合する配列が見られ、実際に相互作用をすることが確認された。MYCsとANACsは、NYE1 およびNYC1 のプロモーター領域のほぼ同じ領域に対して相互作用を示し、MYC2とANAC019は生体内において相互作用をすることが確認された。一過的供発現アッセイから、MYC2とANAC019はNYE1 の発現を相乗的に増幅させることが確認された。以上の結果から、MYC2/3/4はANAC019/055/072と相乗的に作用してジャスモン酸によるクロロフィル分解酵素遺伝子の発現誘導を直接に制御していると考えられる。

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